26杯目「かこも」

皆で囲んで楽しく飲む

かつて、「神戸ぶらり下町グルメ決定版」にて、「JR住吉駅前界隈、ラーメン店、カレー屋や魅惑的な立ち飲みが急増中で、平成21(2009)年6月8日に開店した”かこも”もそんな立ち飲み屋のひとつで、お洒落な店構えである。」と紹介してから10年ぶりに店の前に立つ。目の前にバス停があるのでバスを待つ人で行列ができているのはわかる。ところが、午後5時前にかこもの前にも人が並び始めたのには正直驚いた。人気の証と言えようか。

さて、店名の「かこも」の由来を店長の中嶋基晴さんに聞くと「皆で囲んでわいわいがやがやと楽しく」ということだそうだ。午後5時ちょうど、店のスタッフがワンコインサービスの看板を置くのを合図に、行列の常連さんが店に入る。入った順番で奥から詰めるのがルールのようだ。開店から10分経過したところでお客さんの人数を数えてみると若い男女や高齢者らが10人。その数分後には少し高めのカウンター席が満席となる繁盛振りである。

珍しい日本酒や焼酎の取り揃えに加えて、アテが充実している。例えば焼酎では天の刻印、龍宮、泰明、中々、銀の水、久保、兼八と言った具合。アテも、くみあげ豆腐や小芋のポテトサラダからクリームチーズとマグロの酒盗などが100円台から300円台と値段も創業時とあまり変わっていないようだ。

驚きは開店から午後6時半までのワンコインサービスだ。好きな飲み物、しかも銘柄は店に置いてあるものほとんどからチョイスでき、これにアテ三種が付く。原価を割ることもあるのではと心配してしまうが、これも店長中嶋さん流、客の心のつかみ方なのだろう。まずワンコインサービスから始めることにした。酒は生ビール。アテ三種もなかなかの内容だ。

カメラの福田さんが思案の末、日本酒発祥の地といわれる奈良にある今西家の”春鹿純米超辛口”の熱燗に”手羽元と大根の煮物”、”太刀魚と野菜の天ぷら”を追加した。するとスタッフの方が「天ぷらは少し時間がかかります」と丁寧に説明をしてくれた。安心して料理の到着を待つことができる心配りがいい。このスタッフの方、注文を順番に聞いてくれたり、席が空くと詰めてもらうようにしたりと動きがテキパキとして気持ちがいい。

手羽元と大根の煮物はよく煮込んであり、柔らかくて美味しい。天ぷらもうまい。福田さんは「レベルが高い」と唸った。

うまい料理に酒が進む。燗酒が”かんすけ”で提供されたことにいたく感動したのである。木枠の温かみが和やかな雰囲気を醸し出し、錫製のちろりで猪口に注いで飲むのは至福の極みである。さらに新潟県の真野鶴も味わった。

女性客の一人は「酒も料理も安くておいしい」と人気の秘密を明かしてくれた。また「日替わりメニューに当たるといいよ。ハモと松茸の土瓶蒸しは最高でした」と付け加えた。
その隣の男性客も「刺し身がおいしい。たとえ他の店と値段は同じでも鮮度がまったく違う」と絶賛した。いいものを安く提供したいと考える中嶋さんの思いが、見事にお客さんのハートを捉えているのだろう。

最後にいただいた料理はアンコウの肝で、酒は福田さんが黒木本店の芋焼酎”きろく”、筆者はレモンチューハイで〆たのだった。
ほろ酔い気分で周囲を見渡すと、女性客が随分と多いことに気が付く。どの顔にも笑顔があふれ、今宵も住吉の夜は更けてゆく。

大阪の北浜で5年前に”かこも北浜店”が開業していることを付記しておく。

「かこも」
神戸市東灘区住吉宮町4-4-1 KiLaLa住吉南側1階
TEL078-841-5576
営業時間 17:00~24:00(月曜~金曜)16:00~23:00(土曜)
定休日 日曜
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