7杯目「ピアさんばし」

企業城下町の角打ち

木下酒店を出て、もう一軒ということで、笠松通りに向かいます。ご存知のように地下鉄海岸線にある和田岬駅は、神戸を代表する大企業の城下町にあります。この大企業や関連会社の終業を告げる午後五時過ぎ、一軒の大箱の酒屋の立ち飲み屋が混みだします。

その酒屋とは、丸亀の三橋村出身の先々代が創業した「ピアさんばし」です。現在は三代目の店主である三橋敏弘さんが暖簾を守っています。三橋さんは、神戸の酒文化を発信しようと、平成20年11月に結成した山手倶楽部の代表も務めています。

創業年を問うと「1925(大正14)年です」と明快な答えが返ってきて驚きました。その後、単なる個人商店では限界があると平成2年に株式会社化しますが、界隈の店と同様に三菱とともに歩んできました。


店名のピアとは、船着場を意味し、店の入り口には巨大な灯台のモニュメントがあります。
横浜と神戸を運行したジャパニーズドリーム号の設計者に意匠してもらったと聞く店内は、船舶のキャビンのイメージが漂います。

場所柄、三菱重工、三菱電機のお客さんが9割を占め、ほぼ毎日常連が来店します。このため飽きられない工夫を随所に凝らしているようです。お客さんが店に入ってくると三橋さんは「お帰り」と声をかけます。家族の一員として迎えるわけです。「重工、電機のお客さんは、身元がはっきりしていて、安心。質が高いですね」と三橋さんは笑顔で話を続けます。

神戸でも一、二を争う大箱の立ち飲み店で、60~70人は収容でき、貸切のパーティにもうってつけです。ピアさんばしでも、ビールや焼酎がよく出るとのことで、焼酎は一升瓶で50本はキープになっています。


アテは陳列しているものを勝手に取るシステムで、まず生ビールと天麩羅をもらいました。次に注文したのが、「おさんぽジャパン」という番組で来店した国分太一さんが飲んだ白鹿山田錦です。すっきりした味わいの酒です。

更にあちこちの酒場で流行っているハイボール。おお、濃いなあと思ったらグラスにはウィスキー90ccが入っているとか。そらあキツイなあ。ちょっと飲みすぎました。

三橋店主にこの仕事をしていて嬉しかったことを聞くと「お客さんの美味しいという声。薦めた酒が旨かったと言ってもらえること。そして次の人を連れて来てくれると嬉しい」と相好を崩しました。
ピアさんばしの常連さんが、この店の初心者を、すぐ話の仲間に入れてくれたのは、さすがにお客さんのレベルが高く嬉しいものです。

立ち飲み屋の話からヴィッセル神戸、はたまたメディアの話と話題にはこと欠きませんでした。結局、同じテーブルを囲んだ若い二人づれに和田岬線に案内してもらって無事帰途につくことができました。ありがとうございました。

「ピアさんばし」
神戸市兵庫区笠松通7-3-4
TEL 078-671-2690
営業時間 16:30~20:30
定休日 日曜、祝日

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