19杯目「立ち呑み家ライオン堂」

店主は元パティシエ、料理も酒も豊富で安い

ほろ酔いと言うより、すっかり酔っ払って榊山商店を出て次の店に向かう。駅前に行くつもりが逆の方に歩いていて途中で気がついた。やっぱり酔っている。向かうべきは駅前の立ち呑み家ライオン堂である。

神戸市内で今でもブレイクしている立ち飲みスタイルの店を挙げるとすれば、阪神御影駅前の立ち呑み家ライオン堂をおいて他にはないだろう。創業は平成18(2006)年5月。おしゃれ立ち飲みの元祖的存在で、早いもので12年目になる。店主の山口誠さんがイタリアン、パティシエ、バーテンダーを経て、この店を開いたのがつい昨日のように思われる。

ある日、寄ってみるとアイリッシュパブ風な佇まいのカウンターを三重に取り巻くお客さんで沸き返っていた。幸い少し早めに着いていた友人が席を確保してくれていたおかげで事なきを得た。何年ぶりかの午後5時半ころに寄ったこの日も、すでに満席状態であった。
左手の奥、女性2人連れの手前に席を取り、まずはワンコインセットを注文した。好きな飲み物にアテがつく。迷わず生ビールを選んだ。アテはにぎり寿しと串揚げ、うまい。

かつて、山口さんに立ち飲み屋を出した理由を聞いたことがある。「もともと、こういう店を出したかったんです。お客さんとの距離が近いのが一番です」ということだった。だが今は、その近い距離感なのに、オープンキッチンで忙しい山口さんと話をすることはほとんど不可能になってしまった。

このようにライオン堂は、和気あいあいと酒を楽しむお客さんでダーク状態(*)に陥っている。
メディアに頻繁に出ているが、最近は全国誌で紹介されることも増えた。また飲食業を営む店主さんらが様子伺いで、こっそりのぞきに来るなど話題は尽きない。

ワンコインセットが空になったのでトマトチューハイとハマチ造り(190円)を追加した。カメラの福田さんはハイボールだ。

ライオン名物のキングサイズビフテキ(390円)ももらった。柔らかくておいしいステーキである。300円台でステーキが食べられることに幸せを感じざるを得ない。

その後、福田さんが飲んでいたハイボールを注文した。一口飲んでみると他のハイボールと違って濃くてうまい。その理由を聞くと「ウィスキーをガッツリ楽しんでもらいたいから」と山口さん。ああ、よく飲んだなあ。たまにはいいか(笑)。

これだけの集客力のあるライオン堂の魅力は何なのだろう。午後6時までのワンコインサービス、加えて100円台からある安くておいしい肴の数々、蔵元が近くにある立地条件からくる日本酒、焼酎、ワインの品揃えの良さ、洒落れた雰囲気。こういったものが相乗効果を生んで、老いも若きも、さらには女性客をも虜にするのだろうか。社会学の研究対象にすると面白いかも。

この日は若干男性客が多かったが、女性スタッフが迎えてくれるしゃれた立ち飲みなので、女性客も安心して入れて、立ち飲みデビューに最適の店である。前述のように立ち飲み処が多い場所柄「あら、先ほどは・・・」という場面に遭遇することも少なくない阪神御影界隈である。筆者の近所にも欲しい店の数々だ。

※筆者注「ダーク状態」
並んだ客がカウンターに対して身体を斜めにして立つこと。客のその形が一世を風靡した男性コーラスグループ「ダーク・ダックス」に似ていることから言う。

「立ち呑み家ライオン堂」
神戸市東灘区御影中町1-6-3
TEL:078-842-3229
営業時間 17:00~23:30
定休日 日曜

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