6杯目「木下酒店」

国宝級の哀愁漂う角打ち

この連載も今回で6杯目になります。ふと、まだご挨拶をしていないことに気がつきました。申し訳ございません。

「神戸立ち呑み巡礼」と「神戸立ち呑み八十八カ所巡礼」を出版したのがそれぞれ2006年と2008年。それから十数年が過ぎ、酒屋を取り巻く環境も大きく変わりました。
店主の高齢化や後継ぎ問題で閉店した店もあれば、立ち飲みができなくなった店もあります。若者向けのおしゃれな店に模様替えをした店もあります。また、若者がお酒を飲まなくなったということも耳にするようになりました。


そんな中、立ち飲みを愛し、最近は「神戸立ち呑み巡礼復刻版」を発行して愛好家から再び注目されている筆者が、かつて訪れた酒屋に赴き、店主のお話しを聞き、お客さんとの会話を楽しむ巡礼に出ることになりました。
懐かしい雰囲気の店に出会える機会を提供し、あるいは立ち飲みを知らない方、入ったことがない方には角打ちの楽しみを知ってもらいたい。そして他の誰かに、メッセージを伝えて欲しい。

文章は私が担当し、写真はサンテレビジョンの福田さんが務めます。名コンビを目指しますが、ややもすると迷コンビになる気もしますが、温かく見守ってください。そして角打ちで見かけましたら、気軽に声を掛けてください。


前置きが長くなりました。巡礼のルートは決まってはおらず、まずは神戸の中心からと、中央区の店から始めました。神戸駅界隈から三宮に戻ろうとして小さな角打ち山下酒店に伺いました。ご夫婦とも健康上の理由で店を安定して開けることに自信がないと、掲載には至りませんでした。残念ですが、このような情報もお伝えしていきます。


という訳で一気に和田岬に飛びました。和田岬へのアクセスは地下鉄海岸線、あるいはJR兵庫駅前から和田岬線(朝と夕方以降のみ運転)に乗る方法があります。健脚な方なら兵庫駅前から徒歩で行くことも考えられます。

今回、往きは地下鉄、帰りに和田岬線を利用することにしました。
和田岬駅に到着しました。近くに、その名も「みつびし」という飲み屋を発見。 さすがに神戸を代表する大企業の城下町です。


こちら日本の心を伝える「木下酒店」、昭和レトロか大正浪漫の角打ちに驚きます。店内は広くはありませんが一枚板の重厚な看板が目を引きます。しかも文字は右から左へと読むのですから、戦前の年代のものでしょう。天井を見れば電線が剥き出しで碍子も見えます。


三代目のご主人である木下正さんにお話を聞きました。大正10(1921)年の創業で今年98年を迎える老舗酒屋です。ちなみに神戸三菱造船所が発足したのが明治38(1905)年のことで、社名が三菱重工業株式会社と変更になったのが昭和9(1934)年ですから、ほぼ三菱さんと歩んできたことになります。

昔は、停電が多くこんなものを使ってましたとご主人に見せてもらったのは、ガス灯でした。今は使うこともないでしょうが、使用可能だそうです。棚も今は見ることもないような頑丈な造りです。こういう古いものが残っている木下酒店は国宝級の立ち飲みと呼んでもおかしくはありません。


場所柄、お客さんの殆んどは三菱重工の関係者です。このため店内に三菱重工の職人さんが作った造り酒屋のジオラマが置いてあります。出来具合もすばらしい。さすがは日本の技術を支える企業城下町のことはあります。午後4時過ぎ、ご近所の隠居さん達が集まり始めます。その後、午後5時を過ぎると三菱にお勤めの方が現れ、一層にぎやかになります。

国産コンピュータの草分け時の富士通に池田敏雄氏がいました。彼はコンピュータの巨人IBMに果敢に挑戦した天才技術者でした。その池田氏が部下を引き連れて作戦を練ったとんかつ屋が東京の大岡山にあった「あたりや」です。


業種は違えど、ここ木下酒店でも技術立国を支える技術者のコミュニケーションの場としての陰の役割を果たしてきたのではないかと思うと、感慨深いものがあります。ちょっと大袈裟すぎましたか。それも立ち飲み酒のせいかも知れません。


最後に店の将来のことをお聞きすると「子供達はそれぞれ仕事を持っているので角打ちは私で最後です」と。うーん、としか言いようがありません。皆様も気になる店がありましたら早めに足を運んで楽しんで欲しいですね。

「木下酒店」
神戸市兵庫区上庄通2丁目2-13
TEL 078-671-1269
営業時間 15:00~20:00(土曜日は15:00~18:00)
定休日 日曜、祝日

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5杯目「石井商店」

親子三人で仲良く切り盛り

菊地酒店から西に少し歩けば、同じく路地裏に石井商店があります。菊地酒店と同じ光景に出会いました。店内に入りきれないお客さんが店の外で立ち飲みされています。しかも、若者の酒離れが言われだして久しいのですが、雨の日にもかかわらず、若いお客さんのグループが楽しそうに飲んでおられて嬉しい。

石井商店の歴史は古く、米屋として大正13(1924)年に創業し、酒を扱うようになったのは昭和10年頃のこと。今は亡き二代目さんによれば立ち飲みは戦後の昭和35年頃になってから始めたそうです。

三代目の石井康裕さん夫婦を中心に店を切り盛りされており、二代目の奥様もまだまだお元気に仕事をされています。家族がひとつになって客をもてなしておられます。

カウンターの他にテーブルが三つあり、居酒屋のように座って利用することも出来ます。カウンターの上には美味しそうなアテがずらりと並んでいます。初めて訪れた時のこと、たこ焼きがあったのでこれと熱燗を貰いました。

たこ焼きをつつきながら、二代目さんから昔話を聞かせていただいたことが思い出されます。
「戦時中に米屋と酒屋のどちらかの看板を外せと言われましてね、昭和32年になって酒屋を復帰できました」
いわゆる二枚看板という問題である。
そうこうしていると中畑商店によく行くと言う常連さんがお見えになり、石井商店の良さを聞いて見ると「アテが安い、美味しい、早い」と三拍子揃っていると絶賛されました。

酒があれば、アテは乾き物や缶詰でよいとするのは今や昔のことのようで、時代は着実に変化しています。酒屋の立ち飲みにも居酒屋的要素が要る時代になっていることの現れでしょう。

というわけで、今回はコンビーフ炒り玉子というメニューに目が行きまして注文しました。すると三代目さんはフライパンにコンビーフその他の材料を入れて一から作ってくれました。まずいはずがありません。旨い。コンビーフに包丁を入れて、そのままで出される店が多い中、これは超お勧めです。

ふと横を見ると垂水の角打ちでよくお会いする方の姿があります。「なんでここに」と挨拶するも、神戸はコンパクトな街、狭いなあと実感します。
最後に、石井商店でもこの仕事をされていて良かったことをお聞きしました。石井さんは「いろいろな人と出会えます。そして教えていただく事が多く自分の糧になります」と菊地酒店さんと同じように仰いました。人との出会い、地域との出会い、これこそ角打ちの醍醐味です。

この近くで仕事をする人は、その日の気分によって菊地酒店と石井商店を行ったり来たりするのでしょうか。それもまた楽しいです。

「石井商店」
神戸市中央区東川崎町5丁目3-4
TEL 078-671-1172
営業時間 17:00~20:00
定休日 日曜、祝日

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4杯目「菊地酒店」

路上立ち飲みで賑わう

大企業の城下町には角打ちがあると相場が決まっている。川崎重工で言えば川崎本通のヤスダヤか稲荷市場の石田酒店が相当するとばかり思っていたら、東川崎町に2軒存在することが判明したのが一昔前のこと。ヤスダヤも石田酒店も、今はもうない。

まず菊地酒店を訪れてみた。すぐ近くには「横溝正史生誕の地記念碑」が立つが、幹線道路からは見えない路地裏に店はある。灘の樫本酒店が店を畳んだ今、神戸で一番の大箱ではないかと思われる規模である。

三代目店主の菊地芳弘さんによれば、東川崎町内で戦前から酒店をやっていたそうで、戦後すぐに現在地に移転して現在に至るという。震災の数年前に建て直した店内はL字と直線のカウンターがあり40人は十分立てるスペース。川重の終業とともに店はすぐいっぱいになり、軒先や路上にも長机があって路上立ち飲みの光景に出会ったこともあった。

時は過ぎ、神戸の会社や商店を取り巻く環境も様変わりした。菊地酒店でも近所からうるさいと言われたこともあり、店の西側の個人宅が売りに出た際に買い取って、客席を広げた。これで名実ともに神戸一広い角打ちは間違いない。
菊地酒店のお客さんも5時丁度から少し回ったころに来店となったが、菊地さんは「お帰り」と優しく家族のように迎える。

これだけの大箱の店ともなれば、飲んだ後の勘定も困難、というわけで関東の店によくある前金制(キャッシュオンデリバリー)となっているのが極めて合理的と言える。
店内のカウンター上には奥様手作りのアテが豊富に置いてあり、好きな酒と旨そうなアテを選んで都度支払を済ませてカウンターの空いている所で飲めばいい。店の西にできた別棟ならテーブルと椅子もある。

ちなみにビール大ビン440円、日本酒280円(半分150円、但し二杯目以降から)、焼酎250円~、ニッカ水割り(ビン入り)300円と毎日寄っても懐に優しい価格である。
壁に目をやれば、兵庫県の地図や日本地図が貼ってある。この地図を指してお客さんの故郷の話に繋がるのかも知れない。

今回はビール大ビンと立ち飲みの定番であるポテサラと卯の花をもらった。さらに「神戸角打ち巡礼」で初めて日本酒も注文した。播州姫路の銘酒龍力の純米酒である。

さて、お客さんのほとんどは川重やその取引先の方だと容易に想像できるが、さっと飲んで帰るのが正しい使い方のようで、店の営業は午後五時から八時までと比較的いや、かなり短い。
この仕事をやっていて良かったことを聞いてみると「お客さんとお話をすることができ、ボケ防止になります。また、わからないことも教えてもらえます」と。客の立場でも店主さんや偶然隣り合わせたお客さんとの会話が楽しい。地域の歴史なども勉強できる夜の図書館と言えないこともない。

菊地さんにとって角打ちとは、の質問に「小さいときから酒屋の風景を見ています。中学生くらいからコップを運んだりして店を手伝っていました。ごく当たり前の日常でした」。筆者らにとって慣れないうちは非日常だった酒屋の立ち飲み、それが日常だった菊地さん。奥が深い。
そして仕事場の近くに、酒が安く飲めて美味しいアテが充実している立ち飲みがあるとなれば、まっすぐ帰るわけには行かないなあ。

「菊地酒店」
神戸市中央区東川崎町5丁目8-4
TEL 078-671-3829
営業時間 17:00~20:00
定休日 土曜、日曜、祝日

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3杯目「渡辺酒店」

新開地もまだない明治36年創業の老舗

花隈のモダン寺前にあった為井酒店のご主人に教えてもらったのが、新開地にほど近い神戸市中央区相生町5丁目にある渡辺酒店である。

新開地本通のガスビル(現在はマンションに建替え)の手前で折れて、神戸駅方面に向かう途中で何度か出くわしていたことを思い出した。新開地本通やその界隈には居酒屋や立ち飲みがいくらでも目に付く。渡辺酒店は、なかなかいい風情で紺の暖簾が粋だ。

ある日の夕方に訪れてみた。酒屋の一角で酒を提供する角打ちと呼ばれるスタイルの店で、飲食系の立ち飲みとは一線を画する。歴史的に見れば戦後の昭和24年、大阪の西浦渉さんという人が、国税庁に陳情した結果「椅子を置かない。ツマミを出さない。紙コップなら」という条件で酒屋の立ち飲みを認める通達が出た。この通達は今も生きていると聞くが、紙コップで酒を出すところもなく、アテも充実しているのが現状である。

清酒離れが進み、酒屋を取り巻く環境は厳しい。酒を売るだけではやっていけない時代、と言われて久しい。酒屋として、じっとしているわけには行かないと店主の渡辺正明さんは、近隣の酒屋に呼びかけて「立ち呑みの会」を立ち上げた。一昔前の2006年のことだ。

お客さん同士で「立ち飲みの会」のようなものを結成するケースは聞いたことがあるが、酒を売る立場での会と聞いて驚いた。どうやら「神戸小売酒販組合生田支部・立呑部会」というらしい。おもしろい商品や話題の商品を提供したり、立ち飲みを充実させたりで、お客さんとのコミュニケーションがヒントになって次に繋がることもあるだろう。

渡辺酒店のような角打ちは酒屋がやっているから、酒は売るほどに多種多様なものが置いてある、しかも安い。仕事帰りに気の合った仲間と一杯やるのも、ひとり来て黙って飲むのもいい。店主や常連客と仲良く喋りながら飲むのもいい。 

とにかく気兼ねせずに安く飲み、酔うことができる。これほど気楽で自由な飲み方のできる酒はない。われわれ客も安く酒を飲ませてもらうお返しに、消費につながる話題を提供したいものだ。それが酒屋の存続につながればうれしい。

さて月日は流れ、この7月に訪問してみた。瓶ビールと季節柄冷奴をもらった。午後5時半を回ると急に混みだしたのだった。近くの重工業の会社に勤務される人達が仕事帰りに立ち寄る時間になったのである。一人二人と増え続け、気がついてみれば狭い店内が足の踏み場もないくらいの状態になった。

店主である渡辺さん一人では対応できないと見るや、常連さんが冷蔵庫から酒を取り出して別の常連さんに渡す。こんなシステムがすでに出来上がっていて、ことはスムーズに進むのである。店主やお客さん同士の連帯感がこれほどまでに極まっている角打ちも珍しい。なんと久しぶりの筆者に常連さんが角ハイボールを振舞ってくれたのである。かようにお客さんが店を愛し支え、渡辺さんを慕っている様子が伝わってくるのである。

そのような渡辺酒店が週間ポストの「男の聖地角打ちに酔う」(2012年1月発行)に出たときに80歳定年説が囁かれた。記事が掲載されたのち、80歳を越えた渡辺さんだが、お客さんの声に後押しされて今も午後5時には店を開けている。

だが、しかし今度は2回目の東京オリンピックが開催される2020年問題だ。その年、85歳になるはずの渡辺さんに再び定年問題が浮上することは必至である。如何様にして、この難問をクリアーされるのか目が離せない。その日は東京オリンピックのカウントダウン同様に日一日と迫っている。

「渡辺酒店」
神戸市中央区相生町5-14-10
TEL 078-575-5521
営業時間 17:00~21:00
定休日 日曜、祝祭日

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2杯目「山田酒販」

「店主は筋金入りの鉄ちゃんだったが」

元町商店街の4丁目、浜側の遥か先に神戸ポートタワーが見える場所に立つ。
ちょっと南に下れば、こんなところにという風情の酒屋の立ち飲みがある。山田酒類販売のこぢんまりした立ち飲みの空間だ。袖触れ合うも多生の縁という格言があるが、まさに袖が触れ合う。

創業は戦後間もなくのこと、現在は三代目の山田崇史さんが暖簾を守る。お昼なら空いているかと戸を開けると、足の踏み場もないくらい混んでいた。前方に目をやれば、月曜日「平城」、火曜日「次発ももとうめ」、水曜日「次次初吟生」と鉄道の発車時刻表を模したオススメの酒のメニューが見える。

壁にも阪神三宮駅から繋がった近鉄の路線図が描かれており、近鉄沿線で見つけた美味しい地酒のメニューになっている。どうやらご主人は筋金入りの鉄ちゃんであることが分かった(もっとも本人は鉄ちゃんを否定)。

感心していると「店の方へ行ったらもっと凄いで」と、常連さん。そこで酒売り場に回れば、足元の床一面に線路図が描かれていた。「もうちょっとしたら、ここまで伸びて完成や」と、山田さんは自慢げに言った。いやあ、趣味を商売に生かすとは、恐れ入りました。

ここまでの話はつい3年前までのことである。何年ぶりかで「神戸角打ち巡礼」の一環で訪れたところ、店が改装されて5、6人も立てば満席だった角打ちの空間が広々としたものに様変わりしていて吃驚仰天したのだった。

鉄ちゃんの面影はなくなり、きれいにリニューアルされた店内


スタッフの話によれば2016年5月から今の姿になり、テーブルも2席用意され20名以上収容できるようである。かつて何か名物ありますかと問えば「ゴキブリ」と答えた店主、「はよ止めたい」が口癖だったはず。三代目店主に何か心変わりでもあったのか、角打ちに本腰を入れた心意気が伝わってくる。

牛スジ煮込みは欠かせないアテ

さて、メニューの多さは以前のままである。生ビールにアテは枝豆と牛スジ煮込みを注文。更にTaKaRa焼酎ハイボールと懐かしいハムカツを注文した。

元町商店街の店仕舞いは早いが、ここ山田酒販は夜8時まで開いていて重宝できる。実際、浜で仕事をされる方、競馬ファンの方などが朝から一杯で、夕方からはサラリーマンの方がグループで通ってくる光景を目にする。

「山田酒販」
神戸市中央区元町通4-1-6
TEL 078-371-3737
営業時間
平日9:00~20:00
(12:30~14:30は店内清掃のため一時休店)
土曜、日曜9:00~18:00
定休日 祝日

元町商店街から山田酒販へ

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1杯目「赤松酒店」

神戸角打ちの原点

神戸の立ち飲み処を巡っていて、赤松酒店の名を挙げる店主や常連客が多いことに驚かされる。それだけ業界や酒徒に親われていることの証なのだろう。
その赤松酒店は、南京町の中華料理店「民生」のある通りの路地を、ひょいと入ればある。特別変わっているでもない普通の酒屋の佇まいである。

昭和10(1935)年の創業とのことで、もう84年の歴史を誇る老舗である。南京町界隈は今でもバーが残るが、かつては外人バーで賑わったところである。赤松酒店も外人バー10軒くらいに毎日配達していたと聞いた。また浜に近いところから、港湾の仕事に従事する人々が仕事帰りに酒場に繰り出していたのであろう。おそらく赤松酒店も、そのような労働者で賑わっていたに違いない。

ある日の昼下がり、昼間から常連さんで賑わっている、いつもの光景がある。
ご主人の赤松功一さんは、
「以前は早めにさっと来て、さっと帰ってました。そういう港湾関係のお客さんが減って、今は早い時間はリタイヤ組、夕方からはサラリーマンの方が多くて、閉店も夜十時になりました。大丸も遅出になりましたね」
と、酒屋を取り巻く環境が大きく変化していることを教えてくた。

「酒屋は後継ぎがいないし、今の時代に合わない。酒屋と立ち飲みを切り離した店づくりが必要ですが、そういう店が少ない」と嘆いた。実際のところ、赤松酒店も後継ぎがいないのである。

酒屋の経営について何もかも熟知している赤松酒店のカウンターには、所狭しと手作りのアテが並ぶ。後ろの棚にはコンビーフなどの缶詰も勿論ある。一人客は自然とカウンター席に着き、片足をひょいと足台にあてがう。グループの場合は、テーブル席を利用すればよい。


生ビールと神戸らしいアテ、ホワイトアスパラと焼き豚をもらった。生ビールを飲み干してニッカの水割りとジャコおろしを追加した。するとマスターがたっぷりと大根おろしをかけてくれた。それだけで、赤松酒店の良さがわかるというものである。

コンビニやディスカウントストアの出現や後継者難で酒屋の存続が難しい時代だからこそ、いつまでもあって欲しい憩いの場だ。一人客もグループ客も和気あいあいとして、南京町は今宵も更けてゆく。


「赤松酒店」
神戸市中央区栄町通1-2-25
TEL 078-331-6634
営業時間 9:00~22:00
日曜、祝祭日休

※「角打ち:かくうち」
広辞苑では「酒を枡で飲むこと。また、酒屋で買った酒をその店内で飲むこと」とある。四角い枡に注いだ酒を、その尖った角から飲むことが語源とされる。神戸で「立ち飲み」と呼ぶように、関東や北九州では「角打ち」と呼ぶ。
今回の巡礼は「角打ち」の文化を守り続ける地域への思いをはせながら、巡ってみたい。
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