12杯目「酒のシマダ」

湊川新開地の名角打ち

兵庫区東山に朝から賑わう角打ちがある。神戸地下鉄山手線の湊川駅を出て北に数分、酒のシマダと暖簾が呼んでいる。店内には日本盛や白鶴の古い看板があり、これを見るだけで歴史のある店とわかる。

二代目の嶋田諷さんによれば、現在地での営業は昭和29(1954)年からである。それ以前は荒田町に店があったが詳しいことはわからない。荒田町時代から通算すれば、嶋田さんは三代目や四代目ということになる。
かつて嶋田さんは「酒小売と立ち飲みは分離しています。保健所の営業許可も取ってアテを大事にしています」と言っておられた。

その嶋田さんが引退して大櫛隆司さんが店を引き継いだのが平成24(2012)年のことである。大櫛さんは学生時代、酒のシマダでアルバイトをしていた経歴もあって、嶋田さんから店を代わりにやってくれないかと相談された。そしてサラリーマン生活をやめて引き受けたとのことである。酒屋を取り巻く環境が悪化している状況での決断に拍手を送りたい。

まず、しまだ名物牛煮込み豆腐+ドリンク(生中)をもらった。これで500円はうれしい。なんとお代わりもOKらしいですよ。

お客さんは神戸市内はもちろん、名古屋以東から来ることもあるとか。また東京にお住まいで神戸に里帰りのついでに立ち寄る方もおられる。その方は東京で飲めなかった酒がシマダに来て偶然味わうことができたと喜んだそうだ。

大櫛さんは日本酒の品揃えとそれに合うアテに力を注いでおられ、「いろんなお酒が飲めると言ってもらえるのが励みになってうれしい」と話す。問屋を通して仕入れることが基本だが、一方、蔵元から直接仕入れることもある。そしてお客さんには「お酒を楽しんでもらいたい」と言う。

繰り返すが、酒屋を取り巻く環境は年々厳しさを増している。安く近所の常連さんが集うだけというのは時代に合わない。じっとしているだけでは人は集まらない。そこには仕掛けが必要である。土曜、日曜、祝日の酒の肴の持ち込みOKにしたのはお客さんとの会話の中から誕生した賜物だ。毎月第一土曜日とその次の日曜日の日本酒の飲み放題1時間1500円というのも驚きである。筆者ももう少し若ければ注文したいところである。

生ビールも無くなり、普通のハイボールと焼酎ハイボールを追加した。カメラの福田さんは播州壷坂酒造の雪彦山と酒屋の松前漬けだ。酒が進む。

店内でのライブを始めとするイベントの開催も、もう一つの仕掛けである。嶋田さんから引き継いだ大櫛さんは、先代にはなかった、このような攻めの営業を怠り無く行っている。これからの角打ちのあるべき姿かも知れない。
客の立場に立ったいい店主のいる良い店が、ますます繁盛することを願って止まない。

「酒のシマダ」
神戸市兵庫区東山町3丁目7-11
TEL 078-511-0278
営業時間
月曜~金曜
11:00~14:00
16:00~22:00
土曜 11:00~22:00
日曜・祝日 11:00~20:00
定休日 第3水曜

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