第28回 2021年サンテレビボックス席の裏側② ~4月1日 広島vs阪神~

阪神 1 0 3 0 0 2 0 0 0 6
広島 0 0 0 0 0 0 2 0 1 3

4月1日はエイプリルフール。この日の『サンテレビボックス席』のテレビ欄には「今年は優勝や!4月1日やけど嘘ちゃうで!」と書かせていただきました。嘘ではなく本当にタイガースの優勝を願っていますし、今年は優勝できるやろ!という勝手な自信もあります。

この日の中継で注目したのは近本選手でした。近本選手はこの試合までの5試合で1安打と思うような結果が出ていませんでした。昨年も開幕直後は苦しんだものの、最後には3割近くまで打率を上げる活躍を見せただけに、私自身の勝手な意見としては「去年と同じように心配しなくてもそのうちまた打ってくれる」と思っているのは事実です。また、この5試合の結果だけを見て、それを騒ぎ立てるようなことはしたくないと思っていました。
ただし、どうしてもタイガースファンの皆さんは気になってしまいますよね。いつでも応援している選手には良い結果を残してもらいたいものです。この日の実況、湯浅アナウンサーとも、「近本選手をフィーチャーした中継にするけど、打てないという事実だけを見せるのではなく、1本ヒットが出てほしい!打とうと頑張っている選手の姿や、それを応援するファンの姿を見せることができれば」という話で同じ方向を向いて中継に臨むことができました。映像だけでは真意が伝わりづらいものも、実況アナウンサーの言葉で視聴者の皆さまに我々の意図をお伝えすることができると思っています。このように、アナウンサーさんとの意思の統一も中継には欠かせません。
近本選手は1打席目にヒットが出ると、その試合に複数安打を打つことの多い選手です。1打席目は大事なので、いつもは早めにする相手の投手紹介もちょっと待ってから行おう、という打合せもしていました。相手投手の紹介をしたのは、糸原選手の打席のときでした。マニアックな見方をされている方は気づいていただいたかもしれません!
5回表、この日の3打席目、2ボール1ストライクで迎えた4球目を力強くライト前へ運びました。1塁ベース上では笑顔の近本選手の姿が。VTRでもただのヒットではない、ということを強調したかったので、リアクションを重ねたVTRを出しました。近本選手の笑顔を見ると、当たり前のことですが「結果が出ると嬉しいんだな」と思います。中継では選手に変な責任を負ってもらうのではなく、前向きに応援できるような撮り方などができればと思います。

この日は解説が福本豊さんだったということもあり、湯浅アナウンサーとの話し合いで近本選手の守備にも注目していました。近本選手だけではなく、ルーキーでライトの守備に就く佐藤輝明選手へ、どのような声をかけるのか、をフィーチャーできればいいなと思っていました。
外野手はそれぞれの打者の打球の傾向や、風向き、そのときのカウント、など様々な要素から1球ごとに声をかけあいながらポジショニングを変えています。その様子をどこかでとらえられれば、というのが一つのテーマでした。
中継では湯浅アナウンサーから福本さんへ外野手の声かけやポジショニングの話が始まりました。②カメさんの広い映像で映る両選手、そして③カメさんで近本選手、④カメさんで佐藤輝明選手のアップを撮りました。それだけでも十分成り立ってはいるのですが、ふと中継車の中にあるモニターを見ると、画面の真ん中を縦のワイプで2分割したモニターが見えました。「これだ!」ということで、2選手のアップを分割して同時に映すことができました。それまで何も言ってなかったのに、とっさの要望に応えてくれたスイッチャーさんとカメラマンさんは素晴らしかったです。
分割画面のときにちょうど近本選手が佐藤輝明選手にジェスチャーでポジショニングを伝えていました。放送席の話と撮る映像がリンクした見やすい映像になったのでは、と思います。今後も工夫したそういう映像が撮れるように頑張ります。

この試合前の打ち合わせでは「佐藤輝明選手がホームランを打ったらどういう風に撮ろうか」という話もカメラマンさんとは話しました。というのも、すでにプロ第1号ホームランは打っていますが、サンテレビの中継ではまだ放送していませんし、期待のルーキーの一発は視聴者の方々に特に大事にお伝えしたかったからです。
自分が考えていたのは、ホームランを打ったらそこからのカット割りは佐藤輝明選手のみでいこう、ということです。佐藤輝明選手がダイヤモンドを回っている間は、ベンチの選手や喜ぶお客さんに関しては生の映像では映さず、リプレイなどでいければ、と決めていました。もう一点は佐藤輝明選手がホームランを打ったときに、ベースをどういう感じで回るのかを見たかったです。ゆっくり走るのか?それとも割と速めに走るのか?も表現したいポイントでした。
ちゃんとこういう話はしておくものですね!6回に佐藤輝明選手はホームランを打ちました。想定通りのカット割りもできました。中継をご覧になっていただいた方はどういう感想を持たれたでしょうか。「素晴らしい」と感じていただいた方も「えー!そんなカット割りかいな!」と思われた方もいたかもしれません。みなさんの印象に残るホームランのカット割りをお届けしたいといつも思っています!
実はこの他の選手がホームランを打った想定のカット割りについても話していました。これは企業秘密にしておきます!(笑)

今後もお伝えできることがあれば随時更新したいと思います。よろしくお願いします!

This entry was posted in コラム. Bookmark the permalink.