第24回 2020年シーズンサンテレビボックス席の裏② ~7月2日 中日vs阪神~

阪神 0 0 2 0 0 0 0 0 0 2
中日 3 0 0 0 0 0 0 1 x 4

7月2日の中継車Dは私が務めさせていただきました。前回のコラムでも書きましたとおり、「It’s 勝笑 Time!」というチームスローガンを掲げるタイガースが、3連敗という苦しい状況の中どういう表情をベンチの監督・コーチや選手がしているのか、ということをフィーチャーしようと考えていました。

もう一点考えていたことは、サンテレビで無観客試合の中継をするということがそんなに無いため(※7月10日から5000名のお客様を入れて試合を行うことが決定していた)、無観客の中で良く聞こえる打球の音や、一球ごとにベンチから聞こえる選手たちの声を中継で聞くことができれば、と思っていました。ドーム球場ということもあり、一番音が響く環境の中、どういう音が聞こえるのかを視聴者の方々に伝えられれば…ということをスタッフの打ち合わせで話しました。

そうすると、音声さんがいつもとは違うところにマイクを置いてくれました。試合ではベンチの選手たちの自チームを励ます声がいつもより大きく聞こえました。打ち合わせではどうしても「こういう映像を撮りたい」とかカメラさんとの打ち合わせに終始しがちですが、こういう音声さんとのやりとりもあらためて重要だと感じましたし、本当に心強いと思っています。

試合は…タイガース目線で見ると残念な試合でした。1回ウラにビシエド選手に3ランを打たれ、結果としてはこの3点が効いたという試合になってしまいました。途中、ガルシア投手がマウンドから酸欠状態になり降りるアクシデントもありましたが、なんとか先発の役割を発揮してくれた、というシーンもありました。

ベンチの様子は…すごく暗い印象でした。点数の取られ方も正直いいものではなかったかもしれませんが、矢野監督やベンチの選手たちから笑顔は完全に消えていました。こういうときの表情を映すのは私の立場ではとても苦しいのですが、この辛い時期を何とか乗り越えてくれれば…頑張ってほしいと思ってタイガースベンチを映しました。

自分なんかにはわからないくらい苦しい状況であったと思います。最終回のタイガースの攻撃では、近本選手が凡退し、バットをたたきつけたり、最後のバッターとなった上本選手はベースを駆け抜けたあと、しばらく膝に手をついたままうつむいたり、いつまでもベンチの中に残って話をしていたマルテ選手とガルシア選手がいたり、笑顔を映すつもりが、悔しさにあふれた選手ばかりを映していました。正直選手たちの苦しさは私みたいな者にはわかりません。ただ、ああいった姿を見ることで、「選手たちはこんなに頑張っているんだ。悔しいんだ。」というものを私自身は強く感じました。ここを乗り越えた先にその選手たちの笑顔を見られればどれだけ自分たちも笑顔になれるだろうか、ということを考えています。1年間で50試合以上の中継ができるサンテレビならではのタイガースの選手たちのドラマを中継を通してお届けできればと思っています。

次回は雨天コールド、雨による試合開始遅延、など色々あった7月10日から12日に甲子園球場で行われた阪神vs中日の3連戦からあの試合を振り返ってみたいと思います。お楽しみに!

追伸:みなさんは『サンテレビボックス席』のラテ欄(テレビ欄)をご覧になったことはありますでしょうか?毎試合の見どころなどをその日のスポーツ部担当ディレクターが短くまとめて書いております。度々話題になることが多く『サンテレビボックス席』グッズにも商品化されています。ちなみに商品化されたラテ欄の原案者は現在そのグッズを企画する部署にいます!数々の名作を残されたラテ欄職人です!

7月2日のラテ欄の文字の意味はわかっていただけましたでしょうか?無観客試合で聞こえる音を表現してみました。「うぇーい」は選手たちが一球ごとに声掛けをするときのセリフです。「ゴンッ!」はホームランがスタンドの席に当たる音を表現しています!これからもみなさんが「なんやこれ?」と笑っていただけるような楽しいものを考えられるよう精進します!

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第23回 2020年シーズンサンテレビボックス席の裏側① ~7月1日 中日vs阪神~

阪神 0 0 1 0 0 1 0 0 1 3
中日 0 0 0 2 4 0 0 0 x 6

7月1日のナゴヤドームでの中継で幕を開けた今シーズンのサンテレビボックス席ですがこのときのタイガースは調子が悪く、2勝8敗で2連敗中。なんとか勝ってほしいという意気込みでの中継でした。1日の試合も5回を終わって1対6という展開で、守備のミスも出るなど、放送席でFDの業務をしながら観ていて「なんとかチームの雰囲気が明るくなるようなプレーが出ないかな」と思っていました。

この中継では2つポイントがあったと思っています。1つは大山選手がセンターの守備に就いたという場面です。それまで二軍の公式戦ではセンターを守った経験はありましたが、一軍の試合では初めてのセンターでの守備でした。代わった相手が近本選手だったというのも我々が驚いた要因の一つです。

ピッチャーの交代も同時にあった場面ですが、最初に大山選手がセンターへ向かったことに気づいたのはカメラマンさんでした。次に「センターに大山選手がいることをどう映像で表現するか」というのが大事になります。中継ではまず大山選手の顔が映りました。その次に①カメさんが広く球場を撮ってセンターの守備位置にいる大山選手へズームをしてくれました。これで大山選手の守備位置をわかっていただくことができました。

FDとしてもやらなければならないことがありました。それは「大山選手がセンターの守備位置に就くのは何度目か」です。実況アナウンサーも独自に資料をつけていて、データは頭に入っていますが、(湯浅アナウンサーの知識量はゆあペディアと『熱血!タイガース党』のコーナーにもなるほど豊富!)公式のデータをきちんと照らし合わせたうえでないと、間違った情報を伝えることになりかねません。一軍公式戦と二軍公式戦でのデータを即座に調べ、一軍では初めて、二軍では過去に2試合守ったことがある、ということが分かりました。これをアナウンサーに伝えて実況で視聴者の方々にお伝えすることができたわけです。やはり中継でもチームワークが必要ですね!

もう1つはボーア選手の来日第1号ホームランです。4点ビハインドで迎えた9回表の攻撃、ドラゴンズの左腕・岡田投手から初球をえげつないライナーでライトスタンドに運びました。突き刺したという表現が正しいかもしれません。
 
実はこの場面の前のCMの合間に「ボーア選手のホームラン出るかもよ」と湯浅アナウンサーが言っていました。なんの根拠で言ったのかはわかりませんが…(笑)結果としてホームランが出ました。過去にメッセンジャー投手やボーグルソン投手などの来日初ホームランを実況したことのある湯浅アナウンサーの、タイガース外国人選手来日初HR実況が一つ増えました。
 
来日初ホームランだけでなく、ボーア選手が公式戦でサウスポーから打った初ヒットということでもこのホームランは価値のあるものでした。点差のついた終盤のソロホームランだっただけに、自分が中継車Dなら岡田投手のことは忘れてボーア選手ばっかりを映してしまいそうでしたが、中継ではしっかりと岡田投手から打った、ということを印象付ける映像が撮られていました。ここは自分もあらためて認識しないといけないところです。

結果としてタイガースが敗れ3連敗、中継も負けるとあっさり終わります。私が一つ気になっていたことがこの中継ではありました。ボーア選手がホームランを打ってもタイガースベンチでは笑顔があまり見られませんでした…。スローガンは「It’s 勝笑 Time!」負けていても勝っていても常に笑顔で明るく前向きに、というチームコンセプトなのに…。

その翌日の中継車D担当だったので、次の試合ではどんな表情だったとしてもベンチにいる選手や監督の表情は映して、こういう苦しい時期でもスローガンを体現できているかを見たい、と思いました。まさかあんな展開になるとは…。
次回は7月2日の中日vs阪神でのサンテレビボックス席を振り返ります。お楽しみに!

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第22回 プロ野球が開幕しました ~サンテレビボックス席も始まりました~

6月19日、待ちに待ったプロ野球が開幕しました!我らがタイガースは東京ドームでの伝統の一戦に臨みました。結果はあらためてここで書くまでも無いですが…。実はサンテレビ取材班もこの3連戦には東京ドームへ伺いました。例年東京ドームで開幕カードが行われるときには、カメラ1台で取材へ伺っているのですが、今回厳戒態勢のなかでも取材を行うことができました。
 
私もその取材に帯同させていただいていましたので、そこで見たり、感じたりした内容を記させていただきます。ご存知のとおり入場にあたっては体温を測ったり、その日の行動記録を記入したり、などが必要となります。あらかじめ取材へ伺うメンバーも前日までに球団へ申請することも必要となりました。対策は万全にとられています。

東京ドームへ入ると、驚きの光景が広がっていました。無人の観客席が一面オレンジのジャイアンツカラーでした。そこには黒色の文字も作られています。「WITH FANS」や「TOKYO PRIDE」などジャイアンツの選手たちを鼓舞するような文言が。「お客さんがいなくてもこれだけアウェイ感を感じるのか!」と圧倒されました。他球場でもファンのパネルを座席に置くなどの試みがされていました。

試合中にも東京ドームの演出は随所に見られました。両ベンチ上付近の座席には台が作られ、そこでチアリーダーや、ジャビットくんなどのマスコットが踊ったり、ジャイアンツが得点圏にランナーを置けばスピーカーでチャンステーマの応援が流れたり、お客さんのいない中で苦心してホームの雰囲気を出そうという意図を感じました。球場に来られなくてもテレビやネットでの中継で楽しんでもらおうとするその取り組みから、やはりプロ野球はファンあってのものだ、というのを感じました。おそらく甲子園球場でも様々な取り組みが考えられているでしょう。お客さんがいないのは寂しいですが、その中でどういった工夫をしているのかに注目したいです。中継でも取り上げられればと思います。

6月26日と27日には『サンテレビボックス席』も放送されました。ご覧になっていただいた方はお分かりかと思いますが、アナウンサーやカメラマン・ディレクターなど放送はテレビ神奈川さんの制作で、その映像と音声をサンテレビで試合開始から終了までお届けする、というものでした。27日のサンズ選手の逆転3ランは本当にしびれましたね!21時半を過ぎてのホームラン、まさにサンテレビボックス席が本領を発揮する時間に打ってくれました。伊藤和雄投手の初勝利や、代走の植田選手の盗塁など、もし自分がディレクターを務めていたら取り上げたい選手がたくさんいる試合でした。

7月1日のナゴヤドームでのドラゴンズ戦からサンテレビ制作のサンテレビボックス席がスタートします。スポーツ部ディレクター数人でローテーションしながら中継車Dを務めます。私がどの試合を担当するか、とかは申し上げませんが、中継が終わったときにこのコラムで書けるようなことがあれば、またその試合については書かせていただきます。

野球を目の前で観たくても観られない方が多いこの状況で、その野球を現場から伝えるのが我々の仕事です。制作・技術スタッフが一同となって『サンテレビボックス席』を皆さまへお届けできるよう頑張りますので、7月1日の18時より、どうぞよろしくお願いします!

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第21回 もうすぐ開幕です! ~無観客試合の中継をどうするか~

6月19日の開幕が近づいてまいりました!「野球を観たい!」と思われていた皆さまにも、サンテレビスポーツ部の我々にとっても待ち遠しい気持ちがあるでしょう。もちろんまだまだ新型コロナウイルスの影響は終息しているわけではありませんので、しっかりと対策を練ったうえで、我々も取材や中継を行い、皆さまへ楽しい中継をお届けできるよう頑張ります。

先日の『熱血!タイガース党特別編~みんなでのりこえよう~』では、番組終盤のVTRで歴代のタイガースの選手たちの活躍をまとめたものをご覧いただきました。最後のカットにはラッキー7の風船あげの様子がありましたが、しばらくはこの光景は見られません…。無観客の中で行われる試合になります。

開局以来何千試合も中継を行ってきた我々も無観客試合の中継というのは初めてになります。既にインターネットや他局の中継などで、無観客で行われる練習試合を観ましたが、「いざ自分たちが中継するとどういうかたちになるだろう?」と考えを巡らせています。

昨年の9月22日に甲子園球場で行われたタイガース対ベイスターズの中継を最近あらためて見直しました。“奇跡の6連勝”のうちの1試合です。勝つしかない状況のタイガースが、5回ウラに勝負をかけた矢野監督が鳥谷選手を代打に送った場面でのことです。私がその試合の中継車Dを務めていました。ご存知のとおり、この時点では鳥谷選手がタイガースを退団することが発表されていましたので、甲子園球場のお客さんは「代打・鳥谷」がコールされるとひときわ大きな歓声を上げます。

その試合までに何試合か中継があったときにも、鳥谷選手の打席では雰囲気を盛り上げるカットが多く撮られていました。もう色々なパターンをやり尽くした感じもありましたが、この日は甲子園球場に詰めかけたお客さんが鳥谷選手に声援を送ることにフィーチャーしたカットを多く映しました。もちろん鳥谷選手もいつもよりアップして映します。

鳥谷選手が打席に入るだけで涙を流す方もおられます。お客さん一人ひとりに鳥谷選手に対しての想い・ドラマがあるのです。もちろん鳥谷選手自身にも強い想いはあるでしょう。球場で鳥谷選手を応援する方に、テレビをご覧になって下さっている方々にも自身の想いをそこにのせて下されば、鳥谷選手へ気持ちが届くはずだ、と思いました。

そういう思いは現場のカメラマンたちにも伝わります。様々な場所のカメラが多くの良い表情をした方を撮ってくれました。気持ちは届きました。鳥谷選手の先制タイムリーです!この打席で球場のムードは最高潮!試合にも勝利することができました。

もちろんヒーローインタビューのお立ち台には鳥谷選手の姿が。今思うとタイガースのユニフォームを着た鳥谷選手が直接ファンへ声を届ける、というのはこれが最後でした。ここでも多くのファンが鳥谷選手の声に瞳を潤ませながら聞き入る姿が多く見られました。

この試合からでも分かるように、ファンの方々というのは中継にとって欠かすことができません。映像だけでなく声援などの音に関してもです。今盛り上がっているところなのか、じっくりと観るところなのか、タイガースが打ったときに選手以外はどういうリアクションをとっているのか、などです。例えばリクエストの結果を待っているときの何とも言えない雰囲気もまた違ったものになるはずです。

メインキャストの一つであるお客さんというものが無い中継をどう盛り上げるのか、選手たちの表情がより多くなることが予想されますが、現在鋭意検討中です!ぜひどうなるのか、ご覧いただければと思います。

今年の『サンテレビボックス席』のスケジュールも序盤のカードが発表となりました。今後のコラムですが、他の中継や番組のことについても随時書かせていただくのはもちろん、今シーズンの『サンテレビボックス席』の裏話なども書ければと思います。更新のペースは若干落ちるかもしれませんが、今後もお楽しみに!

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第20回 私の記憶に残るあの試合⑥ ~2019年4月30日 平成最後のプロ野球中継~

広島 0 0 0 0 0 0 0 3 0 3
阪神 1 1 0 1 0 0 3 2 x 8

「平成最後の○○」という言葉は昨年みなさんもよく耳にしたことでしょう。いわゆる天皇退位特例法に基づき、天皇陛下が退位されたのは202年ぶりのことでした。それに伴いゴールデンウィークも長くなり、まるで年明けのカウントダウンを祝うような雰囲気だった昨年の4月30日の中継が今回のお話です。

その日行われたプロ野球の試合はセ・リーグの3試合でした。他の2試合はデーゲームで、甲子園球場でのタイガース対カープが唯一のナイターです。ということはこの試合が「平成最後のプロ野球の試合」となり、その試合をサンテレビが中継させていただいたわけです。

この日の中継車Dを務めさせていただくにあたり、何か演出できることはないかな、と考えました。ベタではありますが、「平成を振り返る演出を」ということを考えました。オープニングの30秒の途中までを、サンテレビが平成元年の4月に中継した甲子園球場の映像のVTRを流しました。そのVTRの最後のカットは⑤カメから見える球場全体が映る映像です。それと全く同じサイズでそのままVTRの映像から現在の⑤カメの映像へ、という演出を入れました。

平成元年当時のテレビ画面の画角は「4:3」。現在の「16:9」とは違うので何のフリも無しにいきなりこの映像が中継で映ると、視聴者の方の何人かは「虎辞書なる」が始まったのではないかと勘違いされた方もいたかもしれません(笑)。ちょっとそんな遊び心も入れたくなる試合でした。

5回ウラが終わるとグラウンド整備に入り、イニング間はだいぶ長くなります。その間も時間があるので、そこで解説の福本豊さんと掛布雅之さん、実況の谷口英明アナウンサーに平成のタイガースを振り返っていただこう、と思い、冒頭には村山実監督に始まり金本知憲監督までの歴代の監督を10秒ずつVTRで映し、ご覧いただくということも行いました。懐かしい気持ちになった方々もいたでしょう。
 
昨年の5月1日は、サンテレビの開局50周年の日でした。改元の日とも重なり、この週の中継は「レジェンドウィーク」と題し、いつもの福本豊さんはもちろんのこと、掛布雅之さんや田淵幸一さん、小山正明さんにご出演いただくなど豪華解説陣の方々のお話も聞伺えて大変興味深かったです。この試合でも福本さんと掛布さんに小道具をお持ちいただくなど協力いただきました。

そのお二人に谷口英明アナウンサーの実況。昭和63年から『サンテレビボックス席』で実況アナウンサーを務められた谷口さんは、平成最後のプロ野球を語るのにうってつけの方です!小学生のときからサンテレビの野球中継を観ていた私にとってはボックス席の実況は谷口さんの印象がとても強いです。昨シーズンをもって『サンテレビボックス席』の実況アナウンサー生活を終えられた谷口アナウンサーですが、普段から落ち着いた語り口、ダンディさ、ゴルフコンペをすればいつもベストグロス賞、男の憧れです。

この豪華な顔ぶれの試合の中継車Dをさせていただき感無量でした。試合もタイガースの快勝で言うことなし!本当に良い試合でした。節目の中継は緊張もしますが、やりがいもひとしおです。

この試合では、甲子園球場でも粋な演出がありました。中継最後のカットは何をしようか、と考えていましたがそのタイミングでバックスクリーンに大きく「ありがとう 平成」と映ったのです。その表示をラストカットとして、エンドVTRに移っていきました。こういう細かな演出ができる甲子園球場はやはり素晴らしい球場です。

ここまで6回にわたり書いてきました「私の記憶に残るあの試合」ですが、他のディレクターやアナウンサーの「私の記憶に残るあの試合」も聞きたい方が多くおられると思います。また可能であれば今後も取材して書かせていただくかもしれません。ぜひお楽しみに!そして、次回は『サンテレビボックス席の裏側』第1部の最終回です。まだまだ連載は続く予定ですがお楽しみに!

虎ギャル応援日記より
(当日の日記へのリンクはこちら)

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第19回 私の記憶に残るあの試合⑤ ~2019年8月10日 大山選手のサヨナラホームラン~

広島 0 1 4 0 0 0 0 0 0 5
阪神 0 2 0 0 0 1 0 0 3x 6

昨シーズンは20試合以上中継車Dを務めさせていただきましたが、個人的に2019年で一番衝撃的かつ記憶に残る試合はこの試合です。開幕戦からずっとタイガースの4番を務めた大山選手が106試合目にして4番を外れ、「6番・サード」での出場となりました。このシーズンは何があっても矢野監督は大山選手を4番で使い続けるだろう、と思っていたのは私だけではなかったと思います。やはり打線の顔である「4番」が変わることはチームにとって大きいことでしょう。

スタメンが発表されたのが試合開始のおよそ40分前です。試合開始2時間前の打ち合わせでは西勇輝投手をフィーチャーしつつ、期待の4番である大山選手についてこの日の解説の岡田彰布さんにお話いただこう、という話をしていました。もちろん西投手のピッチングに注目するのは変わらずですが、この試合は大山選手と、この日のオーダーの決断をした矢野監督をフィーチャーしようと思いました。

『サンテレビボックス席』のオープニングテーマが流れている30秒間の映像というのは、実はその日の中継車Dのメッセージが強く表れています。その日注目すべき選手や人を映しています。試合が始まると、プレーがどうなるのか予測不能なのですが基本的にはその時間はまだ試合前です。試合前だからこそ、注目の選手たちをじっくりと映すことができるのです。

大山選手が4番を外れた、というのが一目でわかるのは、スコアボードに載っているオーダーを映すことです。「大山」の表示からズームアウトすれば6番の位置に大山選手の名前があることはわかります。ただし、この30秒間にはテレビには『サンテレビボックス席』のタイトルや対戦カード、番組のスポンサー名の表示がありますので、文字に文字を重ねてしまっては見づらくなります。その30秒間にそれを映すのはやめようと思いました。

オープニングの最初のカットは大山選手の表情のアップからに決めました。これを撮れるカメラは③カメ・④カメ・⑤カメです。次に撮りたい矢野監督の表情が撮れるのは①カメ・③カメ・④カメ・⑥カメ(甲子園では⑦カメ)です。サードの守備位置にいる大山選手を正面から映せるのは⑤カメと③カメです。一番近いのは④カメです。このときに私が思ったのは、例えば「⑤カメで大山選手、④カメで矢野監督」と映しても普通だな、ということです。「1カットで二人を見せたい。」と思い、④カメの大山選手表情のアップ→ズームアウトして矢野監督へカメラを振る→ズームして矢野監督へ、の1カットだけで30秒にしようと思いました。

ただし、試合前には④カメの位置からは矢野監督の前に多くの選手やコーチたちが被っています。タイミングがよければ可能ですが、そうなった場合に京セラドーム大阪では③カメの位置からベンチの中が見えるので、③カメさんにフォローに回っていただきました。個人的には横顔のアップが見えるこのカメラ位置は好きです。監督を映せば、より選手を見守っているような感じに見えるからです。

18時になり中継が始まりました。④カメさんが大山選手から矢野監督へ向かい、ズームしていきます。やはり被る位置に色んな選手がいました。ということで、③カメさんの映像に切り替え、そこで30秒が経ちました。30秒が終わると、そのあとは球場のスーパーを載せるため、球場の広い映像になりますが、この試合では②カメさんに「大山」の文字が6番にあるスコアボードを映していただきました。そこからもしばらくは大山選手や矢野監督の表情を撮りました。視聴者の方々にもいかにこのことが大きいことかを印象付けていただいたと思います。

試合はとんでもない結末が待っていました。9回ウラ、二人ランナーを置いて打席には6番の大山選手。解説の岡田さん曰く「どの打順でもこういう場面で回ってくるんですよ。」と、やはり大山選手はそういう選手なんだなと思っていました。⑦カメさん(甲子園での⑥カメ)がレフトのポールからズームアウトして大山選手へ。これはホームランを期待したカットです。その次の球に反応した大山選手、打球は右中間へ!見事なサヨナラホームランとなりました!

喜ぶ矢野監督、笑顔でベースを駆け抜けてチームメイトに手荒い祝福を受ける大山選手、喜ぶファン、「こうなればいいな」と思っていたことがピタッとはまった中継でした。オープニングからのストーリーが全て良いフリになったわけです。一塁線上に並んでいる大山選手が映りました。チームメイトにかけられた水を手で拭いながら「やったー!」と言ったように見える大山選手の姿を見て中継車の中で泣きそうになりました。いや、涙を浮かべていました。このカットだけで今日の試合を表現できたはずです。

野球は筋書きのないドラマです。そうそう思ったとおりの試合になるはずがありません。だからこそ感動するのですが、思ったとおりに試合が動いたときにはゾクゾクします。いよいよ今シーズンも開幕日程が決まりましたが、このような選手の喜ぶ姿をもっとたくさん見たいですし、その姿を視聴者の方々にもたくさんお届けできればと思います。

次回も「私の記憶に残るあの試合」として、「平成最後の日の試合」を取り上げたいと思います。次回で「私の記憶に残るあの試合」はとりあえず最後となります。このコラムもいよいよ第20回!まだ他の競技の中継や、『熱血!タイガース党』などの番組の話もあるのにこんなに書いてしまっています…。引き続きお楽しみに!

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第18回 私の記憶に残るあの試合④ ~2019年4月25日 近本選手・9回に逆転3ランHR~

阪神 2 0 0 0 0 0 0 0 3 5
DeNA 0 0 0 1 0 1 1 0 0 3

9回表でタイガースが1点ビハインド、この状況でベイスターズはクローザーの山崎康晃投手がマウンドへ上がります。通常こういった展開ではCMが明けた最初の映像はタイガースの選手を映して巻き返しに期待、というような雰囲気にすることが多いです。

この日は横浜スタジアムの試合で、もちろん勝利を信じたベイスターズファンの「ヤスアキジャンプ」が見られました。あれは山崎投手のルーキーイヤーだったでしょうか。夏場の横浜スタジアムでの試合で山崎投手が出てくると、球場から地鳴りのような声援が起こり、ヤスアキジャンプが始まりました。放送席でFD業務をしていた私は「こんなすごい応援があるのか!」と驚いたと同時に感動した記憶があります。

名実ともに球界屈指のクローザーとなった山崎投手と、この応援を強調して見せることで、もしこの試合で山崎投手からタイガース打線が得点することができればそれはすごいことなんだ、というのを視聴者の方々にも分かっていただけるだろうと考えました。また、なかなかアウェイの球場まで応援へ行けない方々には「ヤスアキジャンプってすごいんだ。」というのを体感していただきたいという思いもありました。「主語はタイガース」であるサンテレビボックス席の中継からするとイレギュラーな映像ですが、CM明けしばらくは山﨑投手とベイスターズファンばかりを映し、そこからタイガースの選手を映しました。

そんな山崎投手からタイガース打線はチャンスを作ります。2アウト1・3塁で迎えるバッターはルーキーの近本選手、この日は2安打2四球と全打席出塁していました。「せめて同点に!」と思っていた2球目、近本選手のレフトへの打球はそのままスタンドイン!見事な逆転3ランとなりました!

ルーキーが試合をひっくり返す殊勲打を放ち、タイガースファンは狂喜乱舞です!ベンチの矢野監督もホームランの瞬間に拳を振り下ろし喜びを爆発させました。渾身の「矢野ガッツ」③カメさんが捉えてくれていたので、スタンドインの次の映像は矢野監督へ、その後は当然喜びながら2塁を駆け抜ける①カメさんの近本選手の映像、⑥カメさんの喜ぶタイガースファン、③カメさんのこの日好投した先発の岩田投手のガッツポーズ、④カメさんの3塁を駆け抜ける近本選手、そして②カメさんの撮ったホームインの瞬間、④カメさんと③カメさんで3塁ベンチにハイタッチへ向かう近本選手たちが映ります。そして⑤カメさんの打たれた山崎投手のリアクション、最後に④カメさんのチームメイトとハイタッチする近本選手、というカット割りになりました。

昨年「サンテレビボックス席展」へお越しいただいた方はご存知かもしれませんが、ホームランをタイガースの選手が打った時の基本的なカット割り、というパネル展示がありました。そこにはスタンドインしたら打った選手、その後打たれた投手、そして喜ぶお客さんやベンチ、そして打った選手のホームイン、という流れが展示されていたかと思います。

ホームランの瞬間、当然セオリーとして打たれた山崎投手のリアクションを⑤カメさんが抑えてくれています。場合によってはそれまで好投していたベンチのピッチャーなども④カメさんが撮ってくれます。このホームランに関しては私が連絡線で伝えたのは「ベイスターズの選手は撮らなくて大丈夫」ということでした。ルーキーの近本選手が試合をひっくり返すホームランを打ったことが非常に大きなことだと感じていたからです。とにかく近本選手のリアクションや、喜ぶタイガース側のリアクションを映すべきだと思ったのです。

近本選手のホームインまで打たれた山崎投手をはじめとするベイスターズ側の映像は一切映しませんでした。ベンチでハイタッチをしている間に数秒山崎投手を映しただけです。

この試合の後、色々な意見をいただきました。「あのカット割りでよかった。」と言ってくれる方もいましたが、「山崎投手を9回の冒頭にあれだけフィーチャーしたのだから、そのピッチャーから打ったんだよ、というのを強調するためにもっと早めに映すべきだった。」という意見や、「ずっと喜ぶ近本選手が見たかった。ハイタッチしている間も山崎投手のリアクションを挟まずにずっと近本選手の映像でよかったんじゃないか。」という意見もいただきました。

これまでのコラムに何度も記していますが中継に正解はありません。しかし、このカット割りに関していうと、「ベイスターズの選手は撮らなくて大丈夫」と言ったのなら、リプレイVTRを流すまでベイスターズの選手は撮らなくてよかったのではないかと思います。途中でこのケースのように山崎投手を映すのならもっと早めにリアクションを抑えるべきだったのではないかとも考えています。はっきりとどちらか極端でいいので、そういうカット割りが良かったのではないかと今では思っています。

こういう話し合いも普段スタッフの中では行われています。個人的にはものすごく勉強になりますし、楽しい時間です。誰もが100点の中継など無いとは思いますが、その100点を目指して今シーズンも議論を深めていきます。

どうでしたか?ちょっとマニアックすぎて話についていけない方がおられたら申し訳ございません…。次回も「私の記憶に残るあの試合」ということで、昨年初めて4番を外れた大山選手のあの試合について書かせていただきます。お楽しみに!

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第17回 私の記憶に残るあの試合③ ~2016年7月8日 藤浪投手が8回161球の投球~

広島 3 1 1 0 0 0 0 3 0 8
阪神 0 0 0 2 0 0 0 0 0 2

先日、福留選手のサイクルヒットの試合について書かせていただきましたが、その試合よりも前のことです。この時期もまだ中継車Dになったばかりの試合でした。よって、まだ私が試合を追うことに精一杯の時期です。

金本監督が就任し、「超変革」を掲げてスタートしたこのシーズン。もちろん優勝を目指すにあたって監督が投手陣を引っ張る選手と期待したのは、開幕投手のメッセンジャー投手と、前年に14勝を挙げた藤浪投手でした。2016年は6月の交流戦でのイーグルス戦で完封勝利、ということがありましたが、それ以来勝てていない中迎えたのがこの試合です。

好調のカープ打線に対し、藤浪投手がどのように抑え、再び勝ち星をつかめるのか?というところをテーマに中継を進めましょう、という話を打ち合わせでしていました。とにかく藤浪投手をフィーチャーし、映すということを行いました。

初回、先頭の田中選手にフォアボールを与えました。だいたいこういうときにはベンチの首脳陣とピッチャーを対比させる映像を撮ることが多いです。金本監督の映像になりましたが、特に表情は変わりありません。試合後の監督の談話で「先頭からフォアボールだと…」という話がありましたが、中継時では特に気がつきませんでした。その後ヒットやフォアボール、さらにはダブルスチールを許すなど3点を奪われます。2アウト1、3塁でダブルスチールを許した場面の直後の監督の表情は硬い表情でした。これに対しての怒りはあるのかなとは思っていました。

その後、2回と3回に追加点を許しますが4回と5回は三者凡退に抑えるなど徐々に藤浪投手は立ち直りました。7回までに奪三振は12個で、被安打は4、球数は131球でした。7回の裏の攻撃で藤浪投手に打席が回ってきます。原口選手の打席でネクストバッターズサークルを映すと、そこには藤浪投手がいます。「藤浪がそのまま打席へ入ります。」と実況アナウンサーは伝えてくれました。
それまでも藤浪投手は150球を超える投球があった試合も過去にありましたし、このシーズンも140球以上を投げた試合が既にありました。また、翌週にはオールスターもあり、この日の投球で藤浪投手の前半戦は終わりということでもう1イニングを投げるのも「そういうものなのかな。」と思っていました。

8回のマウンドに立った藤浪投手は先頭のルナ選手にヒットを許しますが、代走の赤松選手の三盗を許さず、2アウトランナー無し、しかしそこから鈴木誠也選手にデッドボールを安部選手にもヒットを打たれます。この時点で147球です。いつもならベンチから香田投手コーチが出てきてもおかしくない場面ですが、全く動きません。このことに気づいたカメラマンさんから「全然ベンチが動かへん。」と連絡線で話がありました。そのときにやっと「これはただ事ではない。」と思いました。結果その後ヒットなどで3点を失いましたが、この回を投げ切り161球で降板となりました。

「これはただ事ではない。」ということにいつ気づけるのかが中継をしてるときに必要な嗅覚だと思います。私はその瞬間まで気づかなかったわけです。実際に8回の金本監督の表情はすごく厳しいものでした。ただ、それに早くから気づいていたらどうしていたでしょうか?金本監督と藤浪投手ばかり映していてもパターンはありませんし、これでは金本監督がただの怖い人で、藤浪投手が怒られて投げてるようにしか見えません。そんなことではお二人の真意を伝えられないのでいけません。自分なら「とにかく頑張って投げ続ける藤浪投手」のみをフィーチャーしたでしょう。実際に中継でも結局はそのような形にしました。

仮にベンチで監督がものすごく怒っていたり、選手が怒られてしょぼんとしていたり、とします。監督や選手が試合中に感情をあらわにする、ということはほぼありませんので、「事実を伝える」という部分で映すことはある意味必要だとは思います。しかし、私の場合、笑顔などはいくらでも映すべきだと思っていますが、怒りの表情や悲しみの表情などは「怖い」とか「かわいそう」とか思ってしまいます。そうなるとあまり長く映したり、しつこく何度も映したり、ということができないのです。

このある意味私の「優しさ」が中継を邪魔しているのではないか、と思うことがあります。私がスポーツ部に異動し、色々なことを学んでいく中で、中継というのは「何を映すのか、何を映さないのか」という判断をしないといけない、ということを教わりました。私が監督の怒りの表情や悔しさをにじませた選手の表情を映すことがなければ、視聴者の方々は監督が怒っていたのか、選手が苦しんでいるのかどうかわかりません。

昨シーズンもミスに対して矢野監督が試合中に選手を注意した、という場面が二度ありました。二度とも私が中継車Dの試合でした。注意している場面を意図して映さない、というのは中継をするにあたり、してはいけないことだと思います。「こういう事象がありました」ということは伝えるべきです。ただし、注意を受けた後にその選手が悔し涙を流したシーンがあり、これを見ているとどうも「かわいそう。そりゃ悔しいよな。」と思ってしまい、無理に映すのをやめました。ちなみにカメラマンさんはその姿を撮り続けていました。

現在、喜怒哀楽の表情を出す選手は少なくなっていると思います。そういう選手の表情を見て、視聴者の方は感情移入をし、「もっと頑張ってほしい!」と応援してくれる方が多いと思います。そういう意味では、私がその姿を見せないことによって「もっとこの選手を応援したい!」という思いを奪ってしまっているのかもしれません。もちろん「いつまでも映したら気の毒やろ!」と思われる方もいると思います。

正直今もどうするべきか答えは見つかっていません。今年もそのような場面に遭遇するかもしれません。そのときに自分がどういう感情になるのか、そこはシミュレーションしたいとは思っています。ぜひこのコラムを読んで下さっている皆さまの意見をいただければと思います。

長くなってしまいました。次回も「私の記憶に残るあの試合」ということで、昨年の試合から1試合ご紹介したいと思います。「近本選手のあのホームランをどう映すべきか?」どのホームランの話でしょうか?お楽しみに!

虎ギャル応援日記より
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第16回 私の記憶に残るあの試合② ~2017年8月20日 タイガースでの初ヒットなのに…~

阪神 1 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 3
中日 0 1 0 0 1 0 0 0 0 0 0 2

節目の記録というのは選手も大事にされていますし、中継をする我々も大事にしたいものです。通算2000本目のヒット、通算300号ホームラン、通算100勝、プロ初ヒット、プロ初勝利、などの記録はしっかりとお伝えするのがセオリーです。あるルーキーがプロ初ヒットを打ったら、そのボールの行方は必ずどこかのカメラで追いかけ続けます。中継をご覧になっているみなさんも、相手チームからタイガースベンチにボールが回り、それが初ヒットを打った選手に渡されているところを目にしたことがあると思います。

それとは別に、例えばある選手の移籍後初ヒット・初勝利、というのはそのボールの行く末まで追うことはあまりありませんが、これも同様に中継では大事にして見せたい場面だと思っています。

ナゴヤドームで行われた2017年8月20日の試合は息詰まる熱戦となりました。先発の能見投手が5回2失点でマウンドを降りると、そのあとは石崎・高橋聡文・桑原・マテオ・岩崎の5投手がドラゴンズ打線を無安打に抑え続けます。一方のタイガース打線は、あと一歩が遠くなかなか点を奪えません。試合はそのまま延長戦へ突入します。

延長戦でもイニングの合間にはCMが当然入ります。ドリス投手が抑え、10回の裏が終わってCMとなり、「次のイニングはどういう風に中継を進めようかな。」と考えていました。ドラゴンズのピッチャーが岩瀬投手に交代するタイミングでもありましたし、「これまでの試合をここで一度振り返ろう」ということで、それまでのゲームのハイライトVTRを出すことに決めました。

CMが終わりました。中継に入り「それではこれまでのハイライトです。」という実況アナウンサーの声でハイライトVTRを出します。あらかじめ担当者にVTRの時間の長さ(尺)を聞いていて、この尺なら問題ないと思っていましたが、思ったより攻守交代がテンポよく行われていきます。岩瀬投手の投球練習が終わり、タイガースの攻撃は代打の森越選手から始まります。

森越選手が打席に入りました。VTRはちょうど山場の部分に差し掛かります。「1球だけなら投球を生で見せられないのは仕方ないかな。VTRを降りたらすぐに初球のVTRを見せれば、スコアブックを書くことはできるだろう。」と思っていました。するとその初球、森越選手が岩瀬投手の投球をとらえました。打球はレフトへ、森越選手のタイガース移籍後初ヒットとなりました。

中継では…まだハイライトVTRを流していました…。ハイライトVTRから生の映像に切り替わると、そこには④カメさんの撮った1塁上にいる森越選手の姿が。その直後にヒットの様子のリプレイVTRを出しましたが、記念すべき森越選手のタイガース初ヒットを生で中継することができませんでした。森越選手に大変申し訳ないと思った私は、中継スタッフのみんなが聞こえる連絡線で、本人に聞こえないのに「森越選手ごめん!」と叫んでしまっていました…。

先頭の森越選手がヒットを打ったことで大チャンスに!その後鳥谷選手の勝ち越しタイムリーで森越選手はホームを踏み見事勝ち越しました!ここでドラゴンズのピッチャーが交代したので、その模様のイニングリプレイVTRをその間に出したので、森越選手のヒットのVTRをもう一度映すことはできました。私のせめてもの罪滅ぼしの意識も若干ありました…。

ただ、やはりいくらVTRを流そうが、その瞬間を生で映すことのほうが、中継をする側も、ご覧になる方の側も意味があると思います。今思うとハイライトVTRを無理やりでも途中で終える、という判断もできるかもしれませんがこれはやはり結果論でしかありません。答えが無いのが中継の楽しさでもあり、恐ろしさでもあります。

この試合の2日前の中継で、代打の森越選手がショートへゴロを打って、走り出した瞬間に転んでしまった、という打席がありました。その後の森越選手と、ベンチで後ろにいた福留選手のリアクションを中継で映した、ということがありました。そのうえでの、その日の中継だったので、きちんとかっこいい森越選手の雄姿をもっとフィーチャーできれば、中継をずっとご覧になっている方々にもより森越選手の活躍を喜んでくれたはずです。

明るいキャラクターでベンチに入ればムードメーカーとしてチームを盛り上げた森越選手。ファン感謝デーでの姿でもタイガースファンの皆さんから愛された選手です。タイミングが合えば森越選手に謝りたいなと思っていました。おそらく急にそんなこと言われてもご本人は「はぁ…」となると思いますが(笑)。今シーズンからライオンズへ加入した森越選手を、私は陰ながら応援し続けたいと思っています!

次回も「私の記憶に残るあの試合」としてある試合を取り上げます。みなさんは、試合中にある選手がミスをしたり、思い通りにプレーすることができず苦しんでいたりする様子が中継で映ったときに、どのように思いますか?次回はそんなときに私の優しさ(?)が中継を邪魔してしまったのではないか、という試合をお伝えします。お楽しみに!

虎ギャル応援日記に後日談あります

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第15回 私の記憶に残るあの試合① ~2016年7月30日 福留選手サイクルヒット~

中日 0 0 0 0 0 1 1 0 0 2
阪神 0 1 0 1 3 3 0 0 X 8

中継車Dをはじめてまだ3、4試合目だったでしょうか。一応勝ちパターンや負けパターンの中継も経験し、番組の進行というのは指示できるようになってきたつもりでした。ただ、この場面でこのカメラにどうやって撮ってほしい、とか、この映像を撮りたい!とかいう指示を出すことはなかなか遠慮してしまい、スイッチャーさんやカメラマンさんは「どういう風に撮ればいいのだろう。」と迷っていたのではないでしょうか。

そんな中迎えたのがこの試合です。この日は4番の福留選手が絶好調!2回ウラ、第一打席に吉見投手からライトへホームラン。4回の第二打席はセンターへシングルヒット。5回の第三打席はライトへタイムリースリーベースヒット!そして6回ウラ、2アウト満塁で迎えた第四打席、球場のボルテージは最高潮です!

もちろんみなさんはなぜ盛り上がっているのかお分かりですよね?このチャンスの場面で福留選手がツーベースを打てば自身13年ぶり2度目のサイクルヒット達成となるわけです。

ただし、中継車Dの私はその事実に完全に気付いてはいませんでした…。今でこそメモをつけ、試合の流れを理解しようとしていますが、当時は目の前の1プレーずつをどのように中継を進めていくかに必死すぎて、福留選手が3安打を打っていることも、サイクルヒットがかかっていることもその打席につくまで考えもしませんでした。

打席に入るときに②カメさんが電光掲示板の「今日の成績」を映してくれました。そこで「サイクルヒットがかかった打席やん!」と気づいたわけです。お恥ずかしい限りです…。しかもそれを実際映したのは1球目を投げた後、実況アナウンサーはコメントしていましたが、映像で見せるのが遅れてしまいました。そして2球目、打球はレフトオーバー!3点が入り福留選手は2塁へ!見事サイクルヒット達成です!
⑦カメさんの喜ぶお客さん、③④カメさんの福留選手の表情、⑤カメさんの「祝 サイクル安打」の電光掲示板、視聴者の方々も盛り上がっていたと思います。

虎ギャル応援日記より(リンクはこちら)

しかし、私にとっては後悔だらけの映像となりました。ここにディレクターの指示は反映されていないから、というか、ほとんど何も指示できていなかったからです。「サイクルヒット打った!すごい!どうしよ!」という感じだったのです。

福留選手がタイムリーを打ったということは重要ですが、それがツーベースなのかどうかでサイクルヒットかどうかが決まるのです。映像では何が必要だと思いますか?福留選手が二塁ベース上にいるということを映像で見せないといけません。ですが、実際に映した映像は、福留選手のアップの映像です。そこが2塁ベースかどうかわかりません。あと、3点タイムリーだったので⑥カメでのホームインの様子を映していましたが、3点目のランナーがホームインするまで時間があったので、そのときに②カメなどで福留選手の位置を見せることができたはずです。そこの指示も全くできていませんでした。

あと、福留選手のアップを長く映しすぎた、というのもあります。バチバチ映像を切り替えまくるのが良いわけではないですが、例えばこの日の対戦相手・ドラゴンズの大島選手はこの試合の10日前にサイクルヒットを達成していました。そして福留選手の偉業に拍手を送っていたのです。「最近大島選手もサイクルヒットを打っていたな。」と自分が気付いていれば、どこかで大島選手と福留選手を対比した映像を撮れていたはずです。そのあたりも私の考えの甘いところでした。お客さんや、他の祝福するタイガースの選手や金本監督を絡めた映像ももっと撮れたはずです。

いかに試合を「線」ではなく、その場しのぎの「点」で見ていたか…。このときの自分に会ったら問い詰めてやりたい気持ちです。技術スタッフさんは、中継が終わった後に撤収を行い、最後に反省会を行っています。ディレクターはあまりその場にはいませんが、せっかく良い映像をたくさん撮って下さっていたスタッフに、さすがにその日は申し訳ないと思い、撤収後まで球場に残り、最後の反省会に出て色々なご意見を伺いました。

長年『サンテレビボックス席』に関わり続けているスタッフでも、サイクルヒットの中継は初めてだったそうです。「もっとこんなことやあんなことができたのに。」という思いをみんな持っていました。そのときに言われた言葉は今でも忘れていませんし、その気持ちを大切にして今後も中継に臨みたいと考えています。

昨年、サンテレビ開局50周年を記念して「サンテレビボックス席展」が行われていました。そのときに「名場面集」と題した映像に、この試合の映像が使われていました。それを見て恥ずかしさや悔しさが沸き上がりました。次にいつこのような大記録に立ち会うことができるのか、そのときには気持ちのこもった映像を映したいです。
次回も「私の記憶に残るあの試合」と題して、次は時間管理を誤った結果、ある選手の活躍を映すことができなかったという私の後悔を書かせていただきます。お楽しみに!と言っていいのかわかりませんがお楽しみに!

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