2023年09月27日(水曜日) 15:43 事件・事故地域・まち

内部告発【前編】洲本市元課長の不正行為~東京アンテナショップ元店員たちの証言と録音データ「現市長は知っていたはずだ…」~

基準を超える高額な返礼品を寄付者に送っていたとして、ふるさと納税の制度から2年間除外されている兵庫県洲本市についてです。市魅力創生課の元課長は、不適正な事務処理などがあったとして、2023年3月に停職6カ月の懲戒処分となり、その後、依願退職しています。この他にも不正行為があったとして、サンテレビに内部告発がありました。

サンテレビの取材に応じたのは、洲本市が出資する第三セクターの元嘱託職員で2019年1月から5月まで東京のアンテナショップ(市のふるさと納税に関連するシティプロモーション事業)の店長を務めた男性です。

Q(元課長が)会計前の品物を勝手に開ける、食べるという行為があった
元店長
「これはもう来る度にありましたので間違いないです。店舗で売っていたお弁当や陳列されているお菓子類は食べていましたね。一緒に連れてきている女性に渡したり、淡路島から連れてきた業者に渡したりしていました」

証言 アンテナショップ元店員たちは元課長の行動を見ていた

撮影された動画は、2019年、洲本市の特産品を販売し、ふるさと納税をPRする東京のアンテナショップの様子です。市の第三セクターが運営していました。店に頻繁に出入りしていたのが、市のふるさと納税業務を担当していた魅力創生課元課長です。

元店長
「東京に来てお弁当食べる時は、元課長以外のスタッフはお金をその場で払っているんですよね。元課長が『お前ら仕事で来ているんだから別に払わなくてええ。税金で食ったらええねん』って言っていましたけど、他のスタッフはお金払っていました」
動画には、元課長が「これ売掛(後払い)で」と元店長に話し、店内でサンドイッチを食べる様子が映っていました。当時の店員だった2人からも同様の証言が得られました。

元店員Aさん
「オレンジとか わしづかみにして開けてそのままバクバク食べていた。『これ売り物なのでお会計してください」』ということをお知らせしたらニヤニヤして『ええやないか』と」

元店員Bさん
「元課長が店内のお菓子やスープを勝手に手に取って、店内を食べ歩きしていました。在庫の数が全く合わず、そういった行為が(元課長が)東京に来られると頻繁にあったので。一言お声がけいただきたいと伝えたら『ケチケチするな ここは市のものや』って。『税金使って何が悪い』って」

サンテレビの取材に対して元課長は、「賞味期限が切れたもので、店長に許可をとって試食している。全てレジを通してお金を払っている」と主張しています。

元店員Bさん
「知らない女性が店を出入りしていまして。洲本市の法被を着られて、常に元課長と一緒に来られて『試食品です』って勝手に店内のものを客に渡していた」

この女性は市とふるさと納税のPR事業などを担っていた広告代理店の担当者でした。洲本市議会の一般質問でもこの女性に関する質問が。

【洲本市議会 9月19日】
濱野議員
「元課長が親しい女性をアンテナショップの店長として雇用するように強く要求していたそうですが、当時の社長はご存じだったでしょうか」
上崎市長
「当時の社長は私でございますが、存じ上げておりません」

元課長は、「店長にするように要望していない」と否定。主張は食い違っています。

約8倍の値段でレジ袋を買わされた

元店長
「何かしら広告代理店のお姉さんが間に入るんですよね。レジ袋用意できているのかと元課長から言われて。『いつもの会社に言いますけど』と言ったら、いやここからとれと。その女の人の東京の広告代理店。『広告代理店からレジ袋買うんですか?』という話はしたんですよね。8倍近い値段でそこから買わされました」

上崎市長は知っていたのか?

当時副市長だった上崎勝規市長。この東京のアンテナショップを運営する第三セクターの社長を2018年から市長就任後も務めていますが、この問題について当初、報告を受けていないと話していました。

【2023年6月30日単独インタビュー】
上崎市長
「いかなることがあってもあってはいけない」

Q報告はあった
「そこの部分で報告があったかというのは、特に今覚えているものはない。東京にいませんので、一挙手一投足を見ているわけではありませんから。ただ向こう(東京)にも管理する人間はいたはずです。もし問題があるんでしたら、管理する人間がきちんと言うべきだったと」

しかし、元店長は、2019年3月5日、東京から副市長室に出向いて報告したと主張します。

Q元課長の所業などはすべて(市長は)理解している
元店長「はい。しています。お昼休憩の時に『時間を取れるからお昼に帰って来い』って言われたんです」

その時の音声が記録されています。

副市長室での会話を録音した音声が…

【元店長】
「申し訳ないです。失礼します。すみません。お忙しいところ失礼します」
【市長(社長)】
「で?」
【元店長】
「店長、無理やと。言ってしまえば額は額ですけど、窃盗や横領じゃないですかと。お弁当ばっととって食べているし、並んでいる商品ばっとポケット入れてとか。ちょっとひどすぎます。もう店長や社員に言っても市に言っても話が通じなかったら、警察行きたいんですということで」
【市長(社長)】
「ちょっと整理しよう。1つは弁当をただで食った。それが1つな。それと?商品を盗んだ?」
【元店長】
「はい」

上崎市長が受け取ったのは、店員たちが問題を告発し、社長に改善を求めた6枚の要望書でした。

【市長(社長)】
「こんなことは普通に許されたらあかんわな。ちょっと話は分かった。ちょっと考えるわ。ちょっとコピー取らして。また原本返すから」
【元店長】
「はい。分かりました。すみません」

市長に音声データを聞いてもらうと… 報告があったと認める

報告を受けていないと話した上崎市長に、放送日前日の9月25日、この音声データを確認してもらいました。

【2023年9月25日単独インタビュー】
Q(音声を聞くと)このあと5~6分要望書を読み込まれていたが
市長「もうその件は記憶にあります」
Q以前伺った時には報告がないと聞いていたが
市長「じゃあそれは多分誤っていたんだと思います。間違っていたんだと思います」

アンテナショップの手違いで、この要望書がFAXで関連業者に流出してしまったことで、元課長の手に渡り、元店長に電話がかかってきました。その時のやりとりが録音されています。

【2019年3月 電話の録音内容】
元課長
「もしもし。〇〇です。今FAX見よるねんけど、全然やってないことも書いてあるけどな」
元店長
「ほんまですか」
元課長
「うん。マドレーヌも食べていない。せんべいも試食のやつやと思うねん。イチゴは悪いけど、傷んどったから試食にしとるねん。俺から社長(上崎市長)と話するわ1回。していないことまで書いてFAXで流してしまっていたら、その後責任とってくれるのかな。その子らもうクビ切って。悪いけど。クビやろ?」

元店長インタビュー
「(クビ切ってと)もともとそういう権限ないですよね。 いくら我々その当時の会社が、洲本市が筆頭株主といえ、元課長がいた魅力創生課っていうのは我々の会社の担当の課ではありませんので、そういう人事権まであるはずがない。なので私ははっきり断りました」

その後洲本市は契約解除 ふるさと納税まで…

しかし、この17日後、第三セクターは東京のアンテナショップの契約を市から解除され、さらにふるさと納税の事業者からも除外。店員の多くが雇い止めになりました。

元店長
「(上崎市長は)社長ですし、アンテナショップを閉めるにしても、ふるさと納税指定業者から外される時も何もしませんでしたし、外されたら会社の売り上げが何億円と下がるんですよ。普通社長であれば何かしますよね。言ってみれば背任行為じゃないのかというくらいに私は思っていますけど」

Q元課長の行動を見逃したということですか
市長(9月26日)
「見逃した?どういう状況でそれが起こってきたかというようなことを100%現場で見ていないので。だから片方の従業員の報告をもらった中では、元課長に『それはどうや?』というところまで突き詰めて報告を求めていませんでしたので。そこは第三セクターの社長としては責任があるかもしれない」

さらに元課長は、名誉棄損で訴えると主張したそうです。

元店長
「契約解除の文言の中に『名誉を棄損する行為』とあったんです。それは他の部長クラスの方は消しなさいと言ったけども、元課長が押し切ったと聞いていますね」

元店員Aさん
「『なめやがって』『目に物を見せてやるぞ』みたいなことを元課長が言っていたので。なるほどねって。その挙句に雇い止めでしょ。急に。解雇することは決まっているんだな」

元店員Bさん
「元店長が上崎市長に報告をしに行った後すぐだったので。好き放題に人の生活を壊してもいいっていうあまりにもひどい状況だったので。これはちょっと黙っておけないなって」

元店長
「全部悪者みたいにされているよと(業者から言われた)。元店長が『お店の売り上げを抜いたり、業者からキックバックを抜いていたんや』と元課長が言い回っている。絶対にしていないです」

一方、元課長は告発内容について「噂は流していない。全てが事実無根」と否定しています。

市のふるさと納税問題第三者調査委員会の最終報告書では、「東京の旧アンテナショップ(有楽町)で販売される産品や事業者の選考過程が不明瞭であったこと。また、委託契約の解除について、『業務の処理に関し適切な履行を求め改善を指示したが、期限までに適切な措置が実施されなかったため』とされているが、背景には運営事業者と洲本市、とりわけ元課長個人との間で多岐にわたる紛争が存在したようであること。さらに、ふるさと納税の参加事業者の取り消しについて、『理由は極めて不明確で合理性を欠いており、正当な理由もなく特定事業者を排除した可能性が高い』と考えられる」と指摘されています。

後編につづく

 

 

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