2020年08月20日(木曜日) 21:11 地域・まち

【特集】夫として、父として 家族への道と絵本に込めた願い

体と心の性に違和感を抱え、性別を変更した男性の半生を描いた絵本が完成しました。

夫として、父として、生きていく―

男性の決意です。

『ある日ぼくは、あやちゃんにであった。

「ぼくは女の子として生まれたけど、いまは男の子として生きているよ」って言ったら

「そんなあなたは、とってもすてきね」って言ってくれたんだ』

これは、絵本に綴られた1人の男性の物語です。

絵本の作者は清水展人さん。

現在、徳島で暮らす清水さんは、仕事の合間にかつての自分と同じ悩みを抱える人が集う場所を作っています。

 

【清水展人さん】

「スーツのスラックスとか買いに行ったけどレディースは裾が広がってるのが嫌」

 

神戸市須磨区で長女の展子さんとして生まれた清水さん。幼いころから心と体の性に違和感を感じていました。

 

「まわりの友達からオトコ・オンナって言われ始めてたりオカマとかオナベとか言われてたけどこの時は誰にも相談してないし親にも言えていない時期」

 

18歳で性同一性障害という診断を受け、21歳のころに海外での手術を経て、戸籍を男性に変えました。

L=レズビアン G=ゲイ B=バイセクシュアル T=トランスジェンダー

LGBTと呼ばれる性的マイノリティーは10人に1人が該当するとされています。(LGBT総合研究所)

 

清水さんに転機が訪れたのは手術から2年後。同じ専門学校の後輩だった彩加さんとの出会いでした。

 

【展人さん】

「なんとなく話をしても前向きに受け取ってくれそうな雰囲気がして勇気を出して伝えた 最初は「えぇ、そうなん」みたいな感じ」

「男性戸籍に変わって婚姻関係にはなれるけど本当に幸せにできるのかなとかそこまでの自信が自分にまだなかった」

【妻 彩加さん】

「一個人として魅力はあったので、お付き合いをするようになった」

 

結婚という道を選んだ2人。

夫として彩加さんを幸せにしようと日々を重ねる中で新しい家族が欲しいという夢が芽生えました。

 

【彩加さん】

「お互いの中では子供はいつかどういう形であれほしいなという話はしてたので」

 

無精子症のように男性側に不妊の要因がある場合には、提供精子を用いた人工授精=AIDという方法を選択することができます。

しかし、清水さんの場合「元女性」ということで無精子症にあたらないと考える医師が多く、対応すらしてもらえませんでした。

 

【彩加さん】

「第三者から精子をいただいて子どもを授かることは倫理的におかしいと言われた。こういうカップルは病院に直接事実を伝えても協力してもらえないとその時はかなり泣いた」

【展人さん】

「戸籍上男性になっている。無精子症の人と何ら変わらないと自分は思ってる。でも病院に尋ねると『違う』と」

協力してくれる病院を見つけ、新たな命を授かったのは結婚から7年目のことでした。

 

そして生まれた元気な女の子。

たくさんの人に囲まれながら笑える日々を送れるように「和笑」(なごみ)と名付けられました。

わが子が生まれた喜びをかみしめる日々。

それでもいつかは娘に伝えなければならない日がやってきます。

血がつながっていないということを。

 

【展人さん】

「もし、お父さんを知りたいといったときにどうするの?きちんと説明して育てるということと2人で話し合ってそういう生き方もあるとわかってもらいたい。エゴと言われるかもしれないけど」

 

ことし6月、清水さんは久しぶりに地元・神戸に帰ってきました。

妹・万里さんの協力のもと、自分の半生を描いた絵本の出版の準備を進めていました。

いつか、この絵本を通して自分が生まれたわけを和笑ちゃんに伝えたいと考えています。

 

【彩加さん】

「生まれてからはすごいスピードで日が過ぎていく。大変なんですけどあの時頑張っていろいろ調べたりしてここまでこられてよかった。この子に出会えてよかった」

【展人さん】

「血はつながっていなくても親子であり父親であり、あなたのことはすごい大切で愛していて、ずっとこれからも一生そばにいるということを伝え続けたいし、それをわかってもらえたらうれしい」

 

3人で歩き始めた家族としての道。

この選択が正しかったと信じて。

 

―2020年8月20日放送「情報スタジアム 4時!キャッチ」特集より

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