【調査報道】守られなかった内部告発者 問われる洲本市議会百条委員会の責任~ふるさと納税不正問題~

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  • すもと市議会だよりに記載された「1億円」の文字

  • 録音を聞いた上崎市長

  • 内部告発者 田村伸也元店長

  • すもと市議会だより

  • 旧東京アンテナショップで売られていた弁当

  • 元課長が指示した弁当価格

  • 市議会傍聴席で刑事告発の議決を聞く田村さん

■内部告発者を守るどころか… 前代未聞 市議会が刑事告発の議決

洲本市はふるさと納税の基準違反で2022年5月から2年間制度の対象から除外。2025年10月からの復帰を目指しています。

サンテレビは2023年9月、市の元課長の不正に関する内部告発を特集で放送しました。

しかし、洲本市議会は内部告発した男性を刑事告発すると議決。前代未聞の事態に発展しました。

根拠のない情報によって風評被害にさらされている内部告発者の悲痛の訴えを取材しました。

(洲本市ふるさと納税不正問題 サンテレビ調査報道チーム)

■2023年9月26日・27日 サンテレビが内部告発報道

 洲本市の元課長の男性が市のふるさと納税をPRする旧東京アンテナショップで代金を支払わずに飲食していたことや、広告代理店の女性や自分の家族などに公金で高級和牛を送っていたことを伝えました。この件について元課長は事実無根と否定しています。

内部告発した男性のインタビュー

「元課長が『お前ら仕事で来ているんだから別に払わなくてええ。税金で食ったらええねん』って言っていましたけど、他のスタッフはお金払っていました」

 内部告発したのは、市が出資する第三セクターの元嘱託職員で旧東京アンテナショップの店長を務めた田村伸也さんです。2019年3月、田村さんは元課長の不正を、店を運営する第三セクターの社長である上崎市長(当時副市長)に報告しました。田村さんが、従業員たちの訴えを記した6枚の要望書を上崎市長に手渡した当時の録音が残っています。

【2019年3月 副市長室での会話の録音】

田村元店長

「(従業員から)店長、無理やと。言ってしまえば額は額ですけど、窃盗や横領じゃないですかと」

上崎市長(当時副市長)

「こんなことは普通に許されたらあかんわな。ちょっと話は分かった。ちょっと考えるわ。ちょっとコピー取らして。また原本返すから」

 しかし、上崎市長は、この件を公表も処分もせず、逆に告発した従業員たちが雇い止めに。上崎市長は、サンテレビが録音の存在を明かすまで、元課長の不正を隠していました。

【2023年9月インタビュー】

記者

「以前(3カ月前に)伺った時には報告がないと聞いていたが」

録音を聞いた上崎市長

「じゃあそれは多分誤っていたんだと思います。間違っていたんだと思います」

■お店の売り上げを抜いている!根拠のない情報で内部告発者が風評被害

 その後田村さんは、根拠のない情報や風評被害と闘うことに。嘱託店長としてアンテナショップで働き、会社の経営者でもあった田村さんは、ある情報によって自身の会社が倒産の危機にさらされました。

上崎市長に不正を報告された元課長は、「田村さんがお店の売り上げを抜いたり、業者からキックバックを受けていた」と周りに言っていたそうです。

2023年9月、元課長は実際にサンテレビの取材でも同様の内容を語っていました。

【2023年9月 元課長電話インタビュー】

「お店の売り上げを仕入れで抜いていたと思います。8000万円から9000万円の仕入れをやっていた。ペーパーカンパニーですよ」

 サンテレビは内部告発報道の前、ショップを運営する第三セクターの決算書や田村さんの会社の決算書、請求書などを調査。田村さんの会社と第三セクターとの間には、実際に8000万円の取引が存在したことを確認しました。

しかし、そのほとんどがふるさと納税の返礼品の取引で、アンテナショップの仕入れとは全く関係のない取引だったことが分かりました。

しかし、5年後の2024年3月、この噂と同様の内容によって百条委員会設置へとつながっていきます。

■市議会が百条委設置 2度目の風評被害は家族にまで 「お前の息子1億円を持って逃げたらしいな」

 2024年3月26日、元職員の不正を調査する百条委員会に続いて、市議会はもう一つの百条委員会を設置。疑われたのは元課長ではなく内部告発した田村さんでした。

【2024年3月 記者の囲み取材】

記者

「議員は内部告発した人を守るべきではないか」

木戸隆一郎(当時)百条委員会委員長インタビュー

「その点については、内部告発が正しかったかどうかというところも非常に焦点になると思います」

 現在、実名、顔出しで取材に応じている田村さん。事前に1度も聞き取りがなく、百条委員会が設置されました。もし議員たちが事前に調査していれば、百条委員会を開く必要はなかったと訴えます。

田村さんインタビュー

「意味が分かりません。まず調べてから必要なら立ち上げてくださいということですよね」

 田村さんが経営する会社は休業に追い込まれたほか、家族にまで風評被害が及んでいます。

 

田村さんインタビュー

「(父が)お前の息子1億円持って逃げたらしいなと言われたと。それが1人ではなく複数人。弟も淡路島の地元の友だちから『兄ちゃんどないしたんや。なんかやらかしたんか』と。百条委員会が立ち上げられた時ちょっと病んでいましたね」

「1億円を持って逃げたらしい」という発言の根拠の1つに考えられるのが、市民に配られたすもと市議会だよりです。

■市民に配布された市議会だより 「1億円近い巨額の取引」

 2024年4月発行で、洲本市民約1万5000世帯の自宅に届けられた「すもと市議会だより」(1万8000部発行)です。旧東京アンテナショップで販売されていた弁当は、「仕入れ価格が販売価格を上回るなど不透明」。田村さんの会社と旧東京アンテナショップを運営する第三セクターに「1億円近い巨額の取引」など不審な点があると、百条委員会設置を求める議員の賛成討論の内容が記されています。実際に賛成討論と反対討論が行われ、賛成多数(賛成13人反対4人)で百条委員会が設置されました。

【2024年3月26日】

生田進三議員の反対討論

「何らかの誤解、調査不足等によって証人(田村さん)を召還し、証言を求めた場合、著しい人権侵害、とりわけ名誉権の侵害に相当する事態に発展することも考えられます」

中野睦子議員の賛成討論

「明らかにおかしな取引を発見したわけでございます。これを見過ごしていくのでいいのか。なぜ調べることに反対されるのかその意味が分からない。別に何か意図があるのかと思うくらいでございます」

■守られなかった内部告発者 市民に次々と誤った情報が…

 市議会だよりでは、「1億円近い巨額の取引など不審な点がある」と中野睦子議員が百条委員会設置の賛成討論を行ったことが記されています。しかし、サンテレビの取材映像や議事録を見てもそのような発言は確認できず、実際に発言していない内容が市議会だよりに賛成討論として掲載されていました。また、2024年5月26日、大勢の市民が傍聴に訪れた元課長の証人尋問でも、中野議員はアンテナショップとは関係のないふるさと納税の商品を例に挙げて、田村さんが自分の会社からアンテナショップにたくさんの商品を仕入れていたかのような質問をしていました。

 

田村さん 

「あたかも私が店長の権限を使って自分の会社を使って、売り上げを上げて自分の懐を潤しているみたいな言い方をしているように私は取れた」

【2024年5月26日元課長証人尋問後の記者会見】

記者

「聞いている人は直接仕入れたのかなと思ってしまうもので、これは訂正してあげないと元店長に損害を被る内容かと。かなりの市民が(傍聴席で)聞いていましたし」

木戸(当時)委員長 

「ご指摘のように皆さん聞いている話なので、ちょっともう1回確認して注意せなあかんかなと思いますね」

 しかし、このあと市議会からは謝罪も訂正もありませんでした。サンテレビは、中野議員に「なぜ発言していない内容が賛成討論として市議会だよりに記されているのか。2024年5月26日の百条委員会で、ふるさと納税の返礼品を例に挙げて質問したのは誤認だったのか」と質問しました。中野議員はサンテレビに対し「取材を受けるつもりはありません」と回答しています。

もう一つの疑惑はむしろ被害者 元課長「仕入れ値よりも安く売れ」

 田村さんにかけられたもう一つの疑いは、田村さんの会社が弁当を仕入れ、アンテナショップで、仕入れ価格よりも安い価格で弁当が売られていたことです。この背景について、サンテレビは2024年6月18日に報道しました。

2024年6月18日 NEWS×情報キャッチ+放送動画

「兵庫県洲本市が東京に設置していたアンテナショップで店長を務めていた男性が、市の担当部局の元課長の指示を受けたことで多額の損失が出たことなどを明らかにしました。仕入れ値よりも安く売れと言われたことが分かりました。」

■「洲本市のPRのため仕入れ値よりも安く売れ!赤字は市が負担する」

 サンテレビは元課長が指示したとされる弁当の価格表を入手しました。オープンに間に合わせるため、元課長はかつて料理人でもあった田村さんの会社に仕入れを促し、「仕入れ値よりも安く売れ」と指示。

「赤字を市が負担する」という約束でしたが、約束は守られず、田村さんは逆に100万円以上の損失を被っていました。ショップを運営していた第三セクターも多額の赤字を負担することになりました。

【2024年4月22日 第三セクター支配人証人尋問】

「第三セクターに弁当の製造販売のノウハウがなく、市の魅力創生課の担当者から『田村さんの会社に手伝ってもらえ』と指示された。中間マージンを一切とらない約束で仕入れることになった」

【2024年5月26日 元課長証人尋問】

 元課長「事実ではないと思います。そんな細かなことまで指示しない」

■田村さん「人手が足りないので助けて」と言われた

 旧東京アンテナショップのオープン前から、田村さんは第三セクターとふるさと納税の返礼品の取引をしていました。

経営者でもある田村さんが旧東京アンテナショップの嘱託店長を務めることになった背景について、第三セクターの支配人は4月22日の百条委員会で次のように証言しています。

「平成30年(2018年)夏ごろ、アンテナショップの運営事業者に第三セクターが立候補できる可能性があるということを知りまして、その条件を満たすために東京現地の責任者、店⾧を探すことになりました。

複数の方々にお声掛けをして、その中で唯一返事をいただいたのが〇〇会社の代表(田村元店⾧)です。期間限定で、自身の会社を継続したままでいいなら、勉強、経験のためにこの話を引き受けてもいいという返答がありましたので、すぐ社内検討し、魅力創生課の担当者に確認をして、嘱託契約の準備をそこから進めました」

 また、旧東京アンテナショップでは、弁当の販売は当初の計画になかったこと。短期間でオープンの準備をしないといけない状況下で、突然元課長から弁当の販売を指示された背景についても証言しました。

「アンテナショップのオープンまで残された期間は本当にわずかだったと思います。その中で、現地で洲本市が指定する特注弁当の製造を請け負ってくれる会社を探し、地元で弁当に使用する食材を探し、物流をコントロールし、製造を計画し販売を管理する。

最後は店舗の従業員を指導教育する。ここまで考えた時、食の安全担保は不可能だと。場合によっては食品事故につながる可能性がある。

これらを魅力創生課に相談しましたが、『決まったことだ』と返事だけいただいております。

ただ、その時、魅力創生課の担当者から『すでに東京入りしているこの店⾧(田村さん)は、食品会社の社⾧ではないのか?彼の会社に手伝ってもらってなんとかオープンに間に合わせて』と、このように指示されましたので、そこから急きょ店⾧に事情を説明し、東京ですでに物販の準備をしていましたが、その準備から一旦離れていただき、食材探し、事業者探し、物流のコントロール。いわゆる弁当に関連する業務全般をお願いすることになりました」

「彼に申し訳ない気持ちが一番です。ただ単に勉強のつもりで第三セクターに協力をしたいという申し出がありましたので、その辺を考えますと、最終的にはこのような形になり、お願いしていた期間もわずか数カ月で全て東京のものを引き払ってこちらに帰ってきたわけですから、実際には彼に非常に助けていただいたと思っております。『何かこのようなことに巻き込んだ』という思いがありまして、それに対して、これは私個人の感情ですけれども非常に申し訳なかった」

 サンテレビの取材で「田村さんの会社はペーパーカンパニー」と語った元課長。しかし、旧東京アンテナショップオープン前の2018年10月10日午後2時22分、田村さんと元課長がふるさと納税のやりとりをしていたメールが存在します。

田村様

お世話になります。

ふるさと納税参加ありがとうございます。

様式を送りますので、ふるさとチョイス等の内容を例に記載して送付してください。

何品でも結構です。

写真は宅ファイル便等で送っていただいても結構です。

よろしくお願いします。

 元課長は田村さんにふるさと納税の取引を促していたはずですが、サンテレビの取材で「会社はペーパーカンパニーで、お店の仕入れを抜いている」などと話していました。

当時、元課長のリクエストに応えて田村さんの会社が仕入れていた「淡路牛の切り落とし」がふるさと納税で大ヒット。

洲本市の寄付額が伸びました。元課⾧は第三セクターにも「田村さんの会社で〇〇の肉は仕入れられないか、もっと増やせないか」と連絡していたそうです。

「第三セクターが田村さんの会社から仕入れているのは決算で知った」という元課長の百条委員会証人尋問での証言内容と異なっています。

■13ページの調査報告書 市民に伝えられた「1億円近い巨額の取引」の説明はなし

 2024年10月31日、洲本市議会百条委員会は調査報告書を公表。「弁当について利益の上乗せはなかったことが確認されるも、一部の詳細は判明できなかった。

お弁当の販売に係る経費負担については書面を交わしていないことから、その負担について、認識が異なっていたことが判明した」と記載されていました。

しかし、市議会だよりで市民に伝えられた「1億円近い巨額の取引」については、「ほとんどがアンテナショップの仕入れではなく、ふるさと納税の取引だった」という説明はありませんでした。

 不正を訴えた内部告発者が疑われ、百条委員会が設置される異常事態。さらに、前代未聞の事態に発展しました。

【2024年10月31日洲本市議会】

木戸委員長(当時)

「正当な理由がないのに、提出期限として定められた9月9日までに提出がなされなかったことから議会に告発を求めることといたしました」

 正当な理由なく記録の提出がなかったとして、市議会は田村さんを刑事告発すると議決。地方自治法第100条第3項では、「出頭又は記録の提出の請求を受けた選挙人その他の関係人が、正当の理由がないのに、議会に出頭せず若しくは記録を提出しないとき又は証言を拒んだときは、6箇月以下の禁錮又は10万円以下の罰金に処する」とあります。

田村さんインタビュー 

「全く不当な話ですよね。どういったものが必要なのか教えてくださいと伝えていました。こちらは全面協力しますという姿勢は崩していないのにきょうの結果なので、私としては納得できない部分があります」

委員長を務めた木戸議員(現在は議長)インタビュー

「探したけどありませんでした。あるいはデータが消去して復旧が不可能ですので提出することはできません。そこまで聞いて我々なるほど。それであれば仕方がない。というふうな判断ができるわけですけど、お答えをいただかないと我々正当な判断をしようがない」

■田村さんは約50枚の資料を提出していた

 田村さんは、2024年10月15日に請求書など6種類約50枚の資料を提出していました。田村さんの代理人弁護士は、膨大な量なので何が必要か範囲を絞ってほしいと要望を続けたが、応じてくれなかったと主張。両者の主張は対立しています。

田村さんの代理人 村岡美奈弁護士

「うちは全然出さないつもりはなくて出す心づもりもしていましたし。正当な理由のない証拠の拒否の場合は告発するという話だったが、うちとしては正当な理由。全部を出せというのはあまりにも営業の自由の関係もありますので、本当に百条委員会で必要な範囲に絞ってほしいと要望していた」

■洲本市議会の代理人弁護士とはやりとりを続けていた

 サンテレビは、市議会の代理人である市の顧問弁護士に、「2024年10月15日に約50枚の提出があったのになぜ告発に至ったのか。市の元職員の不正を調査する百条委員会も、第三セクターの事務処理に関する百条委員会も、市長など市の幹部や職員が調査対象。百条委員会が、普段から市と関わりの深い顧問弁護士に助言を求めたことは不適切ではないか」などインタビューを依頼しました。市議会の代理人である市の顧問弁護士は、「守秘義務があり取材にはお引き受けいたしかねます」と文書で回答しています。

【2024年10月31日市議会終了後の記者の囲み取材】

記者

「仕入れの録音データまで提出を求めているが、プライベートなこともあるので選んで探さないといけないので、そこを明確にしてほしいと言ったら全部出せと。録音データまで出せというのは過度な要求ではないか」

委員長を務めた木戸議員(現在は議長)

「そのやりとりの時点がどこかは私も判断がつかないところがありますし、まさにその部分について警察にご判断いただかないといけないと思います」

記者

「(告発は)人権侵害というかそれについての重み、人1人の人生を壊してしまうくらいの重みがあると思うが」

福本(当時)議長

「大変重い判断かなと私ども感じております。しかしながら議会としてご決定いただきましたので、しっかりと議会の決定をもとに対応していきたいと思っております」

洲本市議会は、議決から5カ月が経った今(2025年4月1日現在)も田村さんを刑事告発していません。

田村さん 

「ここまでいろいろやられて 謝罪で終わるもんじゃないじゃないですか。おいおい弁護士から発言があると思います」

元課長は百条委員会の証人尋問で、当時アンテナショップで田村元店長らから「店員がハラスメントを受けていた」と証言しました。しかし、サンテレビは当時働いていた店員ら6人に聞き取りを行いましたが、6人全員が「そのような話を聞いたことがない」と否定していました。

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