■逆転で皇后杯V
<皇后杯 決勝>
○ヴィクトリーナ姫路 3-2 SAGA久光スプリングス(12/21)
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女子バレーボール“日本一”を決める皇后杯全日本バレーボール選手権大会の決勝が12月21日にAsueアリーナ大阪で行われ、ともにSVリーグのヴィクトリーナ姫路がSAGA久光スプリングスを破り、初優勝した。
ヴィクトリーナ姫路は親企業を持たず、姫路・播磨の企業などが支える“市民型クラブ”で、2016年、竹下佳江監督(当時=ロンドン五輪銅メダリスト)と選手3人で活動を始めた。
しばらく成績は低迷し、昨シーズンはV2に降格するなど苦難の道をたどったが、今シーズンからトップのSVリーグに参入して躍進。
ついに皇后杯を制し頂点に立った。
■第3セットから反撃
決勝戦。
ヴィクトリーナ姫路はリズムに乗れず、第1セットを19-25で落とし、第2セットも途中7連続失点するなど7-17と大きくリードされた。
ここでアヴィタル・セリンジャー監督はセッター対角(ライト)にアナ・フヂゲル(ブラジル 186cm)を投入。
高さのあるアナがブロックに加わったことで、ミドルブロッカーの宮部藍梨(パリ五輪代表)と伊藤麻緒が相手の攻撃を止めやすくなり、レフトの井上愛里沙(パリ五輪代表)とチャッチュオン・モクシー(タイ代表)の両エースもアタックが決まり出した。
第2セットは猛追及ばず23-25で落としたが、第3セットを25-15、第4セットを25-20で取り返し、セットカウント2-2のタイに持ち込んだ。
そして最終第5セット、ヴィクトリーナ姫路は14-13とマッチポイント。
相手スパイクを受けたリベロ・森田茉莉が横っ飛びで上げたボールを、セッター・櫻井美樹がトスし、井上がスパイクを決めて、2時間19分に及んだ死闘に終止符を打った。
■開き直った
<各選手のコメント>
*井上愛里沙(MVPを獲得)
「(第5セットは)体もきつく、バテていたが、隣の(セッター)櫻井選手の眼がギラギラしていたので(笑)、自分を奮い立たせて、もうちょっと高く飛べっと言い聞かせながらやってました」
*伊藤麻緒(2年目 ブロック4本)
「(2セット先取され)力も出せてないのにここで終わるわけにはいかないと、気持ちが上がった。周りの先輩たちが本当に心強いので、自分が気負う必要はないかなと思いました」
*森田茉莉(好セーブを連発)
「すごく緊張して入ったが、思ったより足が動いた。(2セット連取され)逆に開き直った。もう怖いものはない、勝つしかないと吹っ切れたのが良かった」
*チャッチュオン・モクシー(チーム最多28得点)
(英語で)「チーム初の“ゴールドメダル”を取れてとても幸せです。チームメイト、コーチ、スタッフ、一緒に頑張った全ての方々に感謝します」
*柴田真果(キャプテン)
「いい流れでなくても、我慢して自分たちのバレーを続けた。どんな時でも踏ん張って自分たちのプレーができたのが良かった」
■感謝の気持ち
<各選手・関係者のコメント>
*宮部藍梨(アタックとブロックで13得点)
「ヴィクトリーナに入ったシーズンに(V2に)降格した。経験した悔しい思いは間違いなく自分たちを強くしてくれたと思う。みんなで励まし合いながら、前に進めてきたのはすごく嬉しい」
*櫻井美樹(生え抜き7年目 決勝はフル稼働)
「チーム創設から下位が長く降格もしたが、家族、ファンの皆さんがどんな時も応援してくださったのが、この今の結果に繋がっている。感謝の気持ちでいっぱいです」
*田中咲希(生え抜き7年目 全試合に先発)
「(きょうは自身は)スタートの所でうまくいかなかったが、代わって入ったアナ・フヂゲル選手が活躍してくれ、ワンチームで勝てたと思う。(皇后杯は)1戦1戦、心こめて戦い抜けたと自信を持って言える」
*松本愛希穂(前キャプテン)
「日ごろの練習が実って良かったと思います」
*関口博之GM(ジェネラルマネージャー)
「日本一になるぞ、なるぞ、と姫路市民の皆さんの前で言い続けて、本当にこんなことになりました。スタッフ・選手、みんなが姫路に集まってくれたおかげで日本一になれた。感謝です」
*上原光徳 球団社長
「最高でした。バレーボールの歴史を塗り替えたと言うか、インパクトがあると思う。チームを誇りに思います」
■実った「100%」
チームを日本一に導いたアヴィタル・セリンジャー監督はオランダ女子代表チームなどを率いた“名将”。
昨年、V2に落ちたヴィクトリーナ姫路の監督に就任し、「練習も試合も100%の力で取り組む」精神を選手たちに植え付けた。
蘇ったチームはV2を全勝優勝し、SVリーグもここまで11勝5敗の好成績。
そして皇后杯を制した。
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<セリンジャー監督のコメント>
「決勝を戦った経験がある選手は2人ぐらいで、ほぼ全員が初めてだった。
(2セット先取されて)選手たちはいい意味で開き直り、もう失うものは何もないと緊張感がほぐれ、そこから自分たちを取り戻して、逆転することができたと思う。
とにかく選手には『勝ち負けを気にするな、1本1本、ワンプレーに集中してやっていけば、必ず私たちのリズムが来る』と作戦タイムで言い続けた。
3セット目ぐらいからプレッシャーが相手に行って、私たちの方に勢いが来たと感じた。
5セット目はシーソーゲームだったが、ここで絶対1本取らなければいけない時の井上選手の本能的な能力が素晴らしかった」
■再びSVの戦いへ
皇后杯での中断を経て、12月28・29日にSVリーグ戦が再開する。
5位のヴィクトリーナ姫路は、ヴィクトリーナ・ウインク体育館に10位・クインシーズ刈谷を迎えて戦う(28日は13時5分、29日は14時5分に試合開始)。
“2冠目”、SVリーグ優勝をめざして2025年も戦う!
(浮田信明)