【神戸ストークス】「最後尾から参画します」、Bプレミア決定までの足跡

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  • 神戸ストークスのBプレミア参入が発表され喜ぶ渋谷順社長(中央)ら /10月17日

  • 神戸ストークスのBプレミア参入を発表する Bリーグ・島田慎二チェアマン /©B.LEAGUE

  • Bプレミアに参入する22クラブ一覧

  • 入場者数6454人を達成 /4月21日 ワールド記念ホール(神戸・ポートアイランド)

  • ジーライオンアリーナ神戸のイメージ図

  • 神戸ストークスの新体制発表会 /9月

■歓喜の瞬間

「続いてのクラブを発表します……神戸ストークス!」
「おおっ!」

男子プロバスケットボールBリーグの島田慎二チェアマンは10月17日、記者会見し、現在のB1に代わる国内トップリーグ「Bプレミア」(B.LEAGUE PREMIER)に参入する22クラブを発表した。

B2神戸ストークスの名前も21番目に呼ばれ、神戸市内のホテルでリモートで会見を見守っていたクラブ関係者らが、発表の瞬間、大きな歓喜の声を上げた。

 

■世界めざすリーグ

Bプレミアは再来年、2026年シーズンにスタートする。

世界水準のバスケットボールをめざすため、ドラフトの実施、サラリーキャップ(各クラブの健全経営のため、選手報酬総額に上限を定める)の導入、外国籍選手が同時にプレーできる人数の拡大などを行う。

Bプレミアは、後述の3条件を満たせば参入できる「エキスパンション型」のリーグで、成績による降格はない。

17日の発表会見には、決定を受けて神戸ストークスの渋谷順社長がリモートで参加し、
「おそらく最後尾からの参画だと思う。プレミアに恥じないクラブの総合力を付けていきたい。
ウォーターフロントに建設中のアリーナを踏まえ、地域に価値を届けたい」と抱負を語った。

 

■アリーナが第1条件

Bリーグは、Bプレミアの参入に3つの条件を付けた。

第1条件が、新設や改修によって5000席以上のアリーナを持つこと。

「アリーナを成長戦略の1丁目1番地に置いて、事業を重視して、そしてカテゴリーを分けるという取り組みは、世界のスポーツ界で初めてのチャレンジなんです」(島田チェアマン)。

その上で、平均入場者数が4000人以上、売上高が12億円以上の2条件を付けた。

ただ初年のみ条件を緩和し、①平均入場者3000人以上で売上高12億円以上、②平均入場者4000人以上で売上高9億円以上、のいずれかでもOKとした(3次審査)。

参入が決まった22クラブのうち、B1所属は18クラブ、B2所属は神戸ストークスなど4クラブ(うち富山と信州は昨シーズンB1)。

また今回の決定に漏れたB1の秋田・茨城・越谷・FE名古屋・京都・大阪の6クラブのうち、秋田・茨城・京都・大阪の4クラブは、ことし12月の4次審査での参入決定をめざしている。

 

■「成功率は5%」

神戸ストークスは3次審査による参入をめざしたが、Bプレミア決定までの道は険しかった。

アリーナは、神戸港第2突堤に建設中の「ジーライオンアリーナ神戸」(GLION ARENA KOBE 来年4月に開業)が収容1万人以上のため、問題なかったが、<平均入場者3000人以上で売上高12億円以上>の条件は、過去の実績からハードルが高かった。

神戸ストークスは昨シーズン終盤の3月に、入場者アップのプロジェクトを開始するも、この時点での平均入場者は2362人。

残りホーム7試合で平均3000人を達成するには、1試合5000人以上の入場者を平均して集めなければならず、試合会場のワールド記念ホールがあるポートアイランドのマンションをスタッフが回って、“ドブ板”で集客したり、無料席を増やしたりと努力を重ねた。

その結果、入場者は試合を追うごとに増え、クラブ最多記録を更新し続けた。

4月20日には入場者が6000人を超え、翌21日の最終戦はB2最多記録の6454人が入場。
総入場者数は9万1421人に達し、平均3000人をクリアした(3047人)。

一方、売上高もスポンサー収入の3倍増などによって12億円以上を達成し、3条件をクリアできた。

17日に記者会見した渋谷社長は、「絶対に3000人を達成すると社内では言っていたが、内心、成功率は5%ぐらいと思っていた」と笑顔で明かした。

 

■海に囲まれたアリーナ

神戸ストークスの新しい本拠地・ジーライオンアリーナ神戸は10月現在で外観工事を終え、内観工事に移っている。

地上7階建て。
座席は馬蹄形に並び、屋内アリーナでは最大級のLEDビジョン(横幅24m、高さ13m)が東側一面に常設され、選手のプレーを大迫力で映し出す。

神戸ストークスのホームゲーム(年間30試合)のほか、音楽コンサートや企業イベントなどにも利用され、
アリーナを運営する「株式会社 One Bright KOBE」によると、来年の稼働率はすでに80%超に達している。

開業は来年4月で、神戸ストークスの最終盤の4試合(4/5、4/6、4/20、4/21)が行われるほか、4月はMISIAのコンサートなども予定されている。

またアリーナ周辺の神戸港第2突堤は、新たに「TOTTEI」とネーミングされ、公園やイベント会場などが整備される。

 

■真のトップへ

クラブは創設以来、苦難の道を辿ってきた。

親会社を持たない市民型クラブとして、2011年に「兵庫ストークス」として歩みを始めた。
チーム名は兵庫県の鳥・コウノトリから取った。

しかし当時は国内リーグが分裂していたこともあって、集客は伸び悩み、会社は“破綻”。
IT企業を経営していた渋谷氏がクラブ経営を引き継いだ。

2016年のBリーグ創設時には、本拠地を神戸市から西宮市に移し、「西宮ストークス」として再スタート。

その年にB2優勝を遂げ、2017年にB1に昇格したが、わずか1年で降格。

2018年から7シーズン連続でB2に“定着”し、佐賀・長崎など後から来たクラブにも追い越されるなど、「最後尾からプレミアに参画」という言葉に誇張はない。

昨シーズン、本拠地を神戸市に戻し、「神戸ストークス」として再々スタートを切った。

これまでチームには地元出身選手が多く、ファンに愛されてきた。

今シーズンも、創設時から在籍する14年目の谷直樹(36歳=川西市出身)、202㎝のビッグマン・中西良太(35歳=神戸市出身)、在籍13年目の道原紀晃(35歳=神戸市出身)、キャプテン・渡邊翔太(31歳=神戸市出身)が揃う。
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アリーナとBプレミア。
2つの目標を達成した神戸ストークスに求められるのは“強さ”だ。

今シーズンこそB1に昇格し、名実ともにトップクラブに成長してほしい。
(浮田信明)

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