アスベストによる病気で亡くなった男性の労災認定に関する文書を、加古川労働基準監督署が誤って廃棄した責任を問い、遺族が国に損害賠償を求めた裁判で、神戸地裁は11日、訴えを認め国に一部賠償を命じる判決を言い渡しました。
訴えによりますと、三木市の男性は建設現場での作業中にアスベストを吸い込み、中皮腫を発症。2003年に54歳で亡くなり、その後、労災認定を受けました。
男性の遺族はおととし、神戸市の建材メーカーに損害賠償を求める訴えを起こしていて、その中で加古川労働基準監督署が男性の労災に関する資料を廃棄していたことが分かったということです。
このため遺族は「資料を誤って廃棄したことにより、どの建材からアスベストを吸い込んだのかなどの証拠を立証する機会を奪われた」などとして、国に対しおよそ300万円の損害賠償を求めていました。
11日の判決で神戸地裁の野上あや裁判長は「国が資料について当分の間廃棄せず、保存するよう通知していた状況からすれば、加古川労基署の署長は保存期間を30年に延長しなければならなかったというべき」「保存期間を延長しなかったのは著しく合理性を欠き違法」などとして、国に対して1万1000円の賠償を命じる判決を言い渡しました。
弁護団によりますと文書の誤廃棄を巡り国家賠償法上の違法が認められるのは、全国で初めてだということです。
判決を受け遺族は、「訴えが認められてうれしい。父も労災記録も戻ってこないが、二度と同じようなことにならないよう改めて対策をしてほしい」とコメントしています。
一方、国は「主張が一部受け入れられなかったものと受け止めております」とコメントしています。