特別支援学校 兵庫県内の現状と課題

  • X
  • Facebook
  • LINE

午前8時45分、先生たちが総出で出迎えます。児童生徒がスクールバスで登校してきました。

県川西立カリヨンの丘特別支援学校。定員は小中高等部合わせて120人。知的障害のある児童生徒が対象です。ことし4月に開校しました。

【保護者】
「楽しそうに登校できているので、すごくうれしく思う。設備が整っていて、子供を安心して預けられる」

和室や浴室を備えた生活学習室では、手洗いや着替えなど、自立に向けた指導を受けることができます。

清掃の手順やマナーなどが学べるビルメンテナンス室も整備。就労に向けた技能学習にも力を入れています。

食品加工室です。高等部の生徒たちがクッキーを製作。材料を正しく計量し、ひとつずつ袋づめしています。

生地を切り、オーブンで焼き上げます。授業中、先生は笑顔で何度も何度もうなずきます。

生徒同士協力しながら完成。きつね色に焼き上がりました。

後片付けも大切な仕事です。

クッキーは、カフェテラスで提供。この場所で、6月末から月数回、地域住民に向けたカフェを開く予定です。

この日は先生を客に見立て、接客や運営方法をシミュレーションしました。

就労やコミュニケーション力の向上に向け試行錯誤です。

【生徒たち】
「楽しかった」
「いい感じに焼けたと思う」
「きょう初めてプレオープンで人を招いたが、すごく緊張した」

校名の「カリヨン」はラテン語で「幸せを呼ぶ平和の鐘」。生徒1人1人の幸せを願って名付けられました。

【県立川西カリヨンの丘特別支援学校 山﨑恵さん】
「失敗してもいいんだよという雰囲気を、まず教師から発信している。やってみよう、挑戦したいという気持ちになってる子どもが多い。
あいさつがひとつできたとか、礼が1個できたというようなこともすべて踏まえて、褒めるように『それでいいんだよ』と伝えるようにしている」

新しい学校が開校した一方で、ある事が問題となっています。

障害のある子どもが通う公立の特別支援学校の教室が不足。図工室の転用、教室の間仕切り、廊下での授業といった対応を強いられています。

去年10月時点で全国では3359の教室が不足。兵庫の不足数は48と、47都道府県中、全国ワースト24位となっています。

教室不足の背景について、専門家は2つの要因をあげています。

【関西学院大学教育学部 菅原伸康教授】
「ここ10年みても知的障害の子どもたちの在籍が増えている。社会全体の知的障害への理解が深まって、早期の発見、早期診断が増えてきている。
学年が上がってくるとどうしても学習困難が見られるようになってきて、特別支援学校に転入する子どもたちが増えている」

県教育委員会は教室不足を「喫緊の課題」とした上で、48という教室数より、在籍者の増加に目を向けた対策が大切だとしています。

【県教育委員会事務局特別支援教育課 山野慎一さん】
「知的障害の特別支援学校というのは、在校児童生徒数は増えていって、新しい学校を作ったり、校舎の増築をしたり、仮設校舎を建てたり、そういった取り組みをずっと続けている」

県内の特別支援学校の在籍者は2023年度で6259人と過去最多を更新。23年連続で増加していて、県では2028年度には6799人になると推計しています。

東播磨地域では定員超過が深刻です。

知的障害のある児童生徒が通う県立いなみ野特別支援学校。およそ4割の定員超過の状況です。

今後県では校舎の建て替え工事を行い、252人の定員を350人に拡大。2027年度にも新校舎での授業が始まる予定です。

稲美町在住の植田さんは地域住民の新校舎への要望を集め、県に提出しました。

【植田貴代さん】
「できたら一緒に、支援学校の交流スペースなんかも使えたら。支援学校の生徒さんと一緒に、趣味的なことでもいいし、調理でもいいし、農家さんと連携で加工品作ったりとか、一緒には畑したりとかもできたら。夢はすごく広がっています」

また県では、近隣の東はりま特別支援学校でもおよそ4割の定員超過となっていることから、校舎を増築する他、旧加古川市立平荘小学校を増築改修。2026年度に定員170人の新たな特別支援学校を開校する予定です。

【山野さん】
「(通学地域は)一人一人のニーズ、置かれているところが違う。できるだけ丁寧な対応を心掛けたい」

学校再編に伴い通学区域の見直しも行います。

安心して学べる特別支援学校の環境整備へ。今まで以上にスピード感を持った対策が求められています。

おともだち登録するだけ! LINEでニュースを読もう! ともだち登録をする 毎週配信(月・火・金) 1回で8記事をダイジェスト形式で配信。