■貞包/自分に悔しい
女子バレーボールVリーグ・ヴィクトリーナ姫路は4月4日、元キャプテンの貞包里穂(さだかね・りほ)と、前日本代表・小林エンジェリーナ優姫(ゆき)の現役引退を発表した。
また古市梨乃、坊野明里、金田莉実、山田絢音の4選手の退団を発表した。
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貞包は佐賀県出身。28歳。
2019年、東海大4年時に内定選手として入団し、パワフルなスパイクでチームのV1昇格に貢献。
翌シーズンから背番号「1」を背負ってレギュラーとして活躍し、2020年から2年間、キャプテンを務めたが、23年4月、練習中に左ひざを負傷し、復帰後も出場機会が減っていた。
貞包に話を聞いた。
Q.引退の理由は–
「(ケガをする)前のパフォーマンスをしたいと思うが、なかなかそこに追い付けない……追い付けない自分に悔しくて……(目を潤ませる)、そういう自分がこのプロチームにいていいのかと考えるようになった。いろんな人のサポートで戻ってきたが、自分が頑張り切れなかった」
Q.他チームへの移籍は–
「入団する時、何があってもここで終わると自分の中では決めていた。ここに拾ってもらったので、ここでやれるだけやって終わろうというのがあった」
Q.現役を振り返って–
「いいことばかりではなくて、負けが多かった。こんなに負けるっていうぐらいだったが(笑)、1年1年が自分にとってはすごく勉強でいい時間だった」
■また一緒に
(貞包と同期入団のセッター櫻井美樹、左腕スパイカー田中咲希は今シーズン、チームのV2優勝に貢献した)
Q.同期の2人からは–
「早く一緒にコートに立ちたいとか、一緒に前みたいにやりたいとずっと言ってくれた。引退することはファイナル(3月24日)の1週間前ぐらいに2人に伝えた。2人とも、分かったと言ってくれて……」
「(2人の活躍は)やっぱり頼もしいし、2人の頑張りが、いろんなことを乗り越えれる力になったと思う」
Q.今後は–
「いろんな人に支えられてここまで来たので、今度は私がいろんな人を支える仕事に就きたいと思います。(スタッフとしてチームに残るのも)選択肢としてありますね」
■小林/次のステップへ
小林エンジェリーナ優姫はアメリカ・シカゴ出身。24歳。
アメリカ人の父、日本人の母を持つ。
日本での実績はなかったが昨年、日本代表登録メンバーに選ばれて来日。
9月にヴィクトリーナに入団した。
196㎝の長身を生かしたブロックやスパイクが期待されたが、今シーズンの出場は11試合にとどまった。
近くアメリカに帰国する。
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Q.突然の来日だった–
「(来日前は)大学院でマーケティングを勉強していた。(代表選出は)ほんとに突然だったし、(来日して)何を言えばいいか、何を考えていいか、わからなくて……(笑)」
Q.1年で引退–
「やっぱり(バレーボールより)仕事の方がいいかなっていうことになった」
「私は、日本に来て1人暮らし。家族もいない中で、チャレンジした。自分でも、頑張ってよかったと思うし、応援してくれたファンも本当にありがたい。私も寂しいが、(帰国するのが)私に一番いい。次のステップには一番いいと思った」
「すぐにはできないが、日本企業のアメリカ本社で働けたらいい。私は日本文化を知り日本語もできる。それがストロングポイントだ」
■五輪で見たい
Q.チームでは–
「アメリカにいた時は、アップの時とか『行こうぜ!』という感じなのに、日本ではみんな真面目だった。最初は合わせていたが、(最後は)私らしく、みんなに声を出して、笑わせて、気分が上がったと思う」
Q.女子代表はパリ五輪をめざす–
「(代表の井上)愛里沙さんと、(宮部)藍梨はすぐ仲間に入れてくれた人。アメリカに帰って、テレビで私のチームメイトをオリンピックで見れたら嬉しいので、頑張ってほしいです」
■坊野/アカデミーへ
このほか「退団」と発表された選手のうち、21歳のセッター・坊野明里は、ヴィクトリーナのアカデミーを指導することになった。
坊野は滋賀県出身。
金蘭会高からヴィクトリーナの育成チームを経て入団し、控えのセッターとして活躍した。
Q.なぜアカデミーへ–
「本当かどうかわからないが、私は子どもに人気があると(笑)、(会社から)言われて、(アカデミーの)話をいただいて、そういう目でバレーボールを見るのもいい人生経験かなと……」
■「SVリーグ」へ
ことし10月から、V1に代わる新しいトップリーグとして「SVリーグ」がスタートし、ヴィクトリーナも参入が決まった。
SVリーグは「世界最高峰」のリーグをめざす一方、参入クラブは、U15やU18のアンダーカテゴリーチームの保有が義務付けられた。
Q.新リーグでは–
「SVになってアンダーにも力を入れていけたらいい。もっとバレーボール人口を増やしたい。せっかくプロのバレーボール選手が(姫路に)いるので、プロの選手になりたいという人をぜひもっと増やしていきたい。会社のモットーである地域貢献をしていきたい」
Q.まだ21歳–
「違う目でこれからバレーボールを見る形になるが、また自分がプレーできたら、というのが頭の片隅にある。なので自分では引退とは言い切ってないんです」
(浮田信明)