能登半島地震 避難所の現状と歯科医師が語る口腔ケア

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1月1日に発生した能登半島地震から1カ月が経ちました。これまでに少なくとも240人が犠牲となり、今も8000人ほどが避難所での生活を余儀なくされています。

そして今後、増えると思われるのが災害関連死です。

災害関連死を防ぐうえで重要な口腔ケアについて、阪神淡路大震災を経験し、石川の被災地に支援に入った歯科医師に話を聞きました。

1月29日、日本災害歯科支援チーム「JDAT(ジェーダット)」として輪島市に派遣されていた兵庫県の歯科医師らが、被災地での活動を終えて神戸に帰ってきました。

足立医師は、阪神淡路大震災の時も避難所で巡回診療を行った経験があります。

(足立了平医師)
「阪神淡路大震災の時のように、密集したところに路地の裏で崩れていたりとか、30年前を彷彿とさせるような感じではありました。
被災者の方もたくさんおられるんですが、多くは二次避難されていて、比較的元気な方が残っているという印象は受けました」

JDATは2022年に創設された日本災害歯科支援チームで、被災地での歯科医療や公衆衛生活動の支援を行います。

震災から1カ月が経過し、懸念されるのが災害関連死です。

能登半島地震で亡くなった240人のうち、珠洲市で6人、輪島市で3人、能登町で6人の合わせて15人が災害関連死に認定されています。

6434人が犠牲となった阪神淡路大震災。神戸市長田区の西市民病院では、病棟の5階部分が崩れ、取り残された人の救出活動が行われました。

歯科医師の足立さんは29年前の震災当時、この病院の歯科部長代行を務めていました。

阪神淡路大震災では922人が震災2か月以内に関連死したと言われています。中でも最も多かった死因が肺炎です。

(足立医師)
「よく調べてみると肺炎が24%、約4分の1を占めている。一番多い。
続いて心筋梗塞、脳卒中という順番なんですけど、東日本大震災にしても熊本地震にしてもこの順番は変わらない。呼吸器系の疾患、特に肺炎が3割を超えているんです」

災害時の避難所生活では十分な口腔ケアが行われず、口の中で菌が繁殖し、気管に入り込むことで、高齢者に多く見られる誤嚥性肺炎を引き起こしたのではないかと考えられています。

(足立医師)
「高齢者は(口腔ケアをしないと)死にますよということが言えるんです。それを伝えないといけない。 
なかなかまだ一般の方々に誤嚥性肺炎という概念、それから誤嚥性肺炎は口の中の細菌が原因で、口腔ケアをすれば(関連死の)4割くらい防ぐことができますよということが浸透していなと実感しました」

阪神淡路大震災での経験を生かして、東日本大震災や熊本地震でも被災地に支援に入り、口腔ケアの重要性を呼び掛けてきた足立さん。

今回は輪島市内、十数カ所の避難所で避難者に口腔ケアグッズが行き届いているかなどを見て回りました。

(足立医師)
「歯ブラシなどは比較的入りやすいと思う。たくさん段ボールの箱の中に入れて置いてある避難所もありました。
ただ、全くない避難所もある。口のケアができる環境を整えているところと、そうでないところにはどうしても差がある。
比較的元気な方が多いので、今すぐどうこうなるという感じではなかった」

避難者が自ら、口腔ケアの重要性を理解することが大切だと訴えます。

(足立医師)
「高齢者の命を守るためのケアというのはたくさんされる。インフルエンザの予防接種もそうですし、体を温めるとかというのもそう。
そういったたくさんのケアのことを『バンドル』という。このケアバンドルの中に、口腔ケアが命を守るということが抜けやすい。
支援される側の高齢者の方々も、歯を磨かなかったら死ぬかもしれないということを自分たちで意識する、理解をする」

足立さんは最後に誤嚥性肺炎を防ぐための避難所づくりが必要だと語ります。

(足立医師)
「輪島の避難所に関して、水場の環境を整えること。歯磨きをしやすい環境というのはまだまだ整っていない。
道端にペッと唾を吐くようなことをあまりしない。そうでなくてシンクのようなもの、簡易的なシンクのようなものを持ってきて、ここなら吐き出してもいいですよというような場所をつくる。シンクであれば流れていって、居住しているところから近いところに作る。
『口腔ケアも大事よね』ということを思っていただいて、口腔ケアができる環境を整えるということを、支援する側が意識するということが大事」

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