阪神淡路大震災から1月17日で29年を迎えました。
そして、その2日後に行われた追悼の光の祭典「神戸ルミナリエ」が10日間の開催を経て、1月28日に閉幕しました。
これまで毎年12月に開かれていた神戸ルミナリエですが、今回は1月19日から28日までの10日間と、初めて1月の開催となりました。
これは、震災の追悼という趣旨にふさわしい時期を選んだ、という意味とともに、震災30年に向けた次回の神戸ルミナリエへの実験的な試みだったということです。
今回は、開催期間以外にも新たな試みがみられました。
注目されたのが、会場の分散化で、東遊園地だけでなく、旧居留地やメリケンパークでも開かれたことや、初めて有料エリアが設置されました。
その結果ですが、組織委員会によりますと、来場者数は229万8000人だったということです。このうち、有料エリアには、15万400人が訪れたということです。
コロナ前の通常開催となった2019年の346万9000人という数字からおよそ66%の来場者だった他、過去最少という結果でしたが、開催時期を変更したこと、これまでメインの展示だった光の回廊がなくなるなど、形式が変わったことや、コロナ禍を経た社会情勢の変化などもありますので、単純な比較はできません。
組織委員会は今回の結果を「想定通り」と評価しています。
開催形式の変更によって、混雑の緩和や、これまで課題となっていた多額の警備費用が縮小できたというメリットもうまれました。
次の開催に向け、神戸ルミナリエのあり方を模索していくということで、第30回については、ことしの6月から7月ごろに概要が発表される見通しです。
今回の神戸ルミナリエで、来年の節目の年に向け、早くも活動を始めた若者たちがいました。
会場で、来場者に震災への思いをメッセージとしてつづってもらうよう呼び掛けをおこなったのが、若者たちで作る震災語り部団体「1.17希望の架け橋」のメンバーです。
1.17希望の架け橋は、阪神淡路大震災を経験していないその世代から、教訓を次の世代につないでいこうと、2020年に立ち上がりました。現在、13歳から25歳の若者たち55人が参加しています。
主に、学校での講演や、震災を経験した世代への聞き取りなどを行いながら、次の世代につないでいく活動を行っています。
また、2月22日からは能登半島地震の被災地に赴き、ボランティア活動を行う予定だということです。
今回、震災の記憶を継承しようと、彼らが神戸ルミナリエで取り組んだ活動を取材しました。
メンバーは、震災のことをより身近に感じてもらおうと、会場で集めたメッセージと、来場者の写真をつなぎ合わせ、1枚のポスターにするということです。
訪れた人は、阪神淡路大震災だけでなく、能登半島地震の被災者に宛てたエールやイラストを描き、追悼の思いや備えの大切さなどを表現していました。
【メッセージを書いた人】
「『希望を忘れない!みんながいる!』って書きました。みんなが怖くなっちゃうから元気を出すように書きました」
「その出来事は忘れないように。それが練習にもなるから『出来事は忘れない』にした」
「『忘れない』。地震を忘れたら1.17のつどいとかなくなっちゃうから、このイベントを大切にしたい」
「『皆さんが穏やかに過ごせるように』という思いと、能登半島の震災で被災された方が一日も早く日常が戻りますようにと書きました。
(震災を)分からない世代の方にも継がれていくことはとても大事なので、活動に参加されることはうれしく思う」
また、メッセージを書いた人の中には、こんな方もいらっしゃいました。
戸円明日風さんは、能登半島地震の被災者のひとりです。戸円さんは、実家の富山県氷見市に帰省していた際に、地震に遭いました。
富山県の北西部に位置する氷見市は最大震度5強を記録し、9人がけがをした他、住宅16棟が全壊、22棟が半壊するなどの被害が出ました。
【富山県氷見市出身 戸円明日風さん】
「余震でちょっと軽めの揺れが来たんですけど、その時は『ちょっと揺れてるな』くらいで、『ちょっと大きかったね』って話していたら数分後に本震が来て。
みんなで床に手をついて『揺れてる、揺れてる』って言って、花瓶の割れる音とかしながら。怖かったです」
「祖父と祖母もいるのでまず状況確認して 家の倒れたものとかうちは屋根がちょっとずれて。
(神戸は)復興してきれいな建物とかイルミネーションもあると思うので、復興の証みたいで、石川県とか富山県の私のところも元通りになればいいなって思ってます」
兵庫だけでなく、さまざまな場所から多くの人が訪れた神戸ルミナリエで、希望の架け橋のメンバーは3日間メッセージ集めを行い、637枚のメッセージが集まったということです。
最後に、1.17希望の架け橋代表の藤原さんに、今後の活動への思いを伺いました。
【1.17希望の架け橋 藤原祐弥代表】
「とても若い方がメッセージを書いていただいて中には希望とか伝えるとか、震災に関してすごく前向きな紙を書いていただけたかなと思います」
「今回集めさせていただいた写真はモザイクアートとして、自分たちのインスタグラムなどのSNSを通じて、幅広く伝えていけたらなと思います」
「30年というと節目の年になりますので、世間の注目度が非常に高くなっていきています。その中でも私たちが活動することで、自分たちより下の世代がより一層興味を持っていただいて、またその若者たちが次の世代に語り継いでいってくれることを期待しています」