元コープこうべ職員が語る阪神淡路大震災 2つの震災を経験「何気ない日常や人とのつながりの大切さ」~震災29年 トルコ・シリア大地震1年~

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神戸で29年前の阪神淡路大震災を経験し、トルコ・シリア大地震の被災地支援を行った男性を取材しました。

トルコのネヴシェヒル・ハジュベクタシュ・ヴェリ大学で日本語の専任講師をしている藤本憲志(ふじもと・のりじ)さん(60)。この日は日本に一時帰国していました。

藤本さんは、2012年まで26年間コープこうべの職員として働いていました。29年前の阪神淡路大震災では、神戸市東灘区の寮が全壊しました。

神戸市東灘区を訪れた藤本さん。

(藤本さん)
「多分、ここですね。
思い出せないほど変わっていますね。ここは本当に2階建ての普通の瓦屋根の家がずっと並んでいて、全部1階に屋根が並んでいたのがすごく印象的でしたね」

地震で寮と配送センターを兼ねた5階建ての建物の1階部分が崩壊。藤本さんは当時最上階の5階に住んでいました。

(藤本さん)
「僕の勝手な想像で、この地震って東海地震の関東大震災の余波がここまで来ていると。余波でここまで来ているとなると、東京、首都は壊滅状態なんじゃないかなと勝手に思って」

鉄製のロッカーが倒れて、隣のベッドが壊れていました。いつもこのベッドで寝ていた男性はたまたまこの日寮にいませんでしたが、一歩間違えれば自分が死んでいたと実感したそうです。

(藤本さん)
「揺れて地獄に突き落とされるような感じのイメージがあります。本当に死ぬかなという。とっさにどうやらベッドの下に潜っていたみたいで、ロッカーとかが倒れてきたのはなんとか防げた」

外に出た藤本さんは徒歩で2キロ離れた本部に向かいました。

(藤本さん)
「本部大丈夫かなと思って住吉の本部に行ったら、住吉の本部のコープというのが1階に落ちていたのを見て、なんかもう人生終わった感がすごくありましたね」

コープこうべ本部は崩れ落ちていました。コープこうべでは、震災で職員11人が死亡。兵庫県内18施設が全壊または半壊しました。

(藤本さん)
「あれを見た時に終わった感じがしました。あれは本当にかなりショックなシーンだったと思います」

向かいにあったコープこうべのショッピングモール「シーア」は無事で、当時衣料品担当だった藤本さんは、被災者に生活必需品を提供する手伝いに奔走しました。

2011年3月11日の東日本大震災。藤本さんは、本部とは別に個人で被災者のカウンセリングなどのボランティアに参加しました。

(藤本さん)
「みやぎ生協からも阪神大震災の時は応援いただいていたので、恩返しのつもりで行ったんですけど、個人で行くと何もできなかったという無力感がすごくあったんですけど、それでお話を聞いてくれてありがとうと言われるとすごく来てよかったなというのがすごくありました」

2012年に母親の介護のため、26年間勤めたコープこうべを退職。2023年7月、久しぶりに本部を訪れました。

(藤本さん)
「すごく懐かしい感じがします。ご無沙汰しております」
(コープこうべ職員)
「向こう(トルコ)はちょっと落ち着いたんですか」
(藤本さん)「全然。でも支援自体はすごく早い」

2021年4月から大学で日本語を教える専任講師として単身でトルコへ。

(藤本さん)「輸入。輸入の反対は何でしたか?」
(学生)「輸出。先生、試験では漢字の反対は出ますか?」
(藤本さん)「本当だな。反対を出した方がいいなあ」
(学生)「えー」

トルコに滞在していた2023年2月。マグニチュード7.8のトルコ・シリア大地震が発生しました。
 
日本は国際緊急援助隊・救助チームを派遣。日本のチームを支援したいと日本語を学ぶ学生たちが訴えましたが、藤本さんは準備が不十分だと止めました。
 
(藤本さん:2月8日放送のインタビュー)
「ボランティアでもし向かうのであれば、自分の食糧・水・寝る場所。トイレとか自分で確保してやらないと逆に救援物資がスムーズに届かない。
行くのは今のところは辞めて後方支援、物資の補給、物資を配達するトラックに荷物を載せるお手伝いをするとか今できるお手伝いをするように伝えています」

被災地から北西に約200キロ。車で4時間ほどの場所にいた藤本さん。神戸に拠点を置く被災地NGO CODE海外災害援助市民センターと合流して学生たちと被災地支援に向かいました。

-阪神淡路の経験をしているのは非常に大きいと思うが、トルコで生きたか 
(藤本さん)
「肌感覚でそういう感覚が分かるというのが大事かなと思います。被災した経験もありますし、ボランティアに行った経験もあるので、ボランティアに行くときの心構えを」
 
日本では、1月1日に能登半島地震が発生。度重なる災害報道を見て浮かぶのは29年前の阪神淡路大震災の光景です。

(藤本さん)
「トルコの地震が起きた時、もちろん東日本の時もそうだったんですけど、そういう大きなことが起こる度に阪神淡路のことを考えざるをえない状況ですね」

神戸で阪神淡路大震災を経験し、トルコで被災地支援に携わった藤本さん。日本語を学ぶ学生たちに伝えていることは、何気ない日常や人とのつながりの大切さです。
 
(藤本さん)
「何気ない日常って僕も何かすごい無駄にしてきたなというのがあって、反省で地震まで思っていた。
今を大切に生きてほしいというのと、大切な人、普段何気なく交わしている言葉であったりとか、あいさつであったりとかができたりしていることの幸せを、日常をかみしめてほしいなと」

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