元日に発生した能登半島地震では、石川県などの多くの地域で電気やガス、水道といったライフラインに影響が出ています。
29年前の阪神淡路大震災でもライフラインが寸断され、神戸市では電気の復旧に6日、ガスが84日、水道の復旧には90日間を要しました。
地震を教訓に「災害に強い水道」を目指した神戸市の取り組みを取材しました。
神戸の水道は1900年に、日本で7番目の近代水道として給水を始めました。市民のライフラインとして水を提供してきましたが、1995年に大きな転機を迎えます。
それが、阪神淡路大震災です。高速道路がなぎ倒され、巨大なビルが倒壊。これまで経験したことのない揺れに、電気・ガス・水道などのライフラインが完全に絶たれました。このうち、水道の復旧には90日間もかかりました。
神戸市兵庫区の奥平野浄水場です。大正時代に建てられ、現在も神戸市の水道の一部を担っています。
(神戸市水道局 浄水統括事務所 橋上重弘所長)
「普段は色が変わっているあたりまで水がたまっている。
(ここで)1日2万トン、神戸市全体で1日50万トンくらいなので、25分の1くらいの水をつくる」
浄水場を案内してくれた橋上所長。震災当時も水道局の職員でした。
(橋上さん)
「他都市からのタンク車に乗って水を運んだりしましたけども、少しでも早く運びたいと思ったが、渋滞がひどくてなかなか届けられず、悔しい思いをした」
これを教訓に神戸市は災害に強い街づくりを目指し、命に直結する水の確保に注力しました。
(橋上さん)
「いま地下50メートルくらいです。
これが大容量送水管。耐震性があって中に貯留機能もある大容量送水管です」
地下50メートルに作られた大容量送水管は、東灘区から兵庫区にかけて距離およそ13キロにも及びます。震災の翌年から始まった工事は完成までに20年を要しました。
直径2.4メートルの巨大な大容量送水管には、阪神淡路大震災から学んだ耐震技術が施されています。
この溝に注目ください。この溝が災害時の大きな揺れやひずみに対応し、水道管の損傷を防ぐ構造になっています。分かりやすく説明すると、曲がるストローのような役割を果たします。
この大容量送水管は震災に強い水道管というだけでなく、もうひとつ大きな特徴があります。
(橋上さん)
「この中には水がぱんぱんです。断水になったときには、ここの中に神戸市民全体で(1人)1日に3リットル使用するとして12日間分の水がためられています。
それ以外にも災害時給水拠点というシステムを作っていってますので、全部合わせると約1カ月近くの水をためているという状態をいますでに完成している」
こちらが災害時給水拠点です。中には給水栓が設置されています。
(神戸市水道局 浄水統括事務所 髙田浩太郎さん)
「こういう取り出しがあってホースをつないで、仮設の給水栓を立ち上げて、市民の方が使える設備です。
神戸市内で62カ所あります」
この災害時給水栓の地下には、大容量送水管と同じように、貯水機能を持つ水道管が備えられています。
(髙田さん)
「(震災)当時6歳で、母親とタンク車を追いかけた記憶はあります。
他都市で被害があり応援に行った時には、涙を流しながら『ありがとうございます』って言っていただいたのは、やりがいのある仕事だと感じた」
住宅街を歩くこちらの人。水道局の職員です。毎日の生活を支えるために、水道を守る取り組みが続けられています。
ヘッドホンで道路の音を確認する作業は、水道を守る重要な調査です。
(神戸市水道局 東部水道管理事務所 河北仁史さん)
「音を聞いて水漏れの調査をしている。水道が水漏れしている音があるが、その響きを聞いている」
水道管は地中に設置されているため、水漏れしているかどうか、音で確認するそうです。
漏れていない音、漏れている音。このわずかな違いを聞き分けています。そして水漏れしていることを確認したら、止水栓ごとに音を聞いて、どの区間なのかを正確に把握します。交通量が多い場所では、静かな夜に調査を行うそうです。
(神戸市水道局 東部水道管理事務所 中村泰士さん)
「漏れていることを家の方と立ち合いをして確認をして、どこが漏れているのかを検討をつけた中で、工事の話をすすめていきます」
水漏れは道路の陥没や地盤沈下で建物が傾くなどの恐れがあるためとても危険です。そのため、水道管自体も震災後、大きな変化を遂げていました。
(神戸市水道局 東部水道管理事務所 坂田昭典所長)
「これが震災前によく使っていた水道管。ゴム製で、ここで水が抜けないように止水している。
これの摩擦力だけで抜けないように抵抗している。なので、地震で大きな力がかかると抜けてしまう。
震災以降、『耐震継ぎ手』というものを採用していて、ここに『ロックリング』というリングが付いていて、ここで抜け出しが止まる。大きな地震がきてもここで止まるので抜けない。いまは順次これに取り替えている」
坂田さんも震災当時は水道局の職員で、悔しい思いをしたそうです。
(坂田さん)
「当時、3カ月間水が出なかったという状況があった。それを教訓にした耐震化基本計画を神戸市は作成して、震災から30年近くずっと対策を続けてきている。
同じような災害が起きたときもいかに被害を少なくするかを考えて、水道局の務めは、市民の皆さまに安定して上質な水を送り続けることが使命だと思っている」
神戸市内62カ所に設置されている災害時給水栓の場所は、水道局のHPで確認できます。自宅からどこが一番近いのか、ぜひ知っておいてください。