明石市にある青楓館高等学院。ここは、通信制高校に通う生徒を支援する「サポート校」と呼ばれる学校で、この春開校したばかりです。
利用するのは、不登校や睡眠障害など、さまざまな理由で全日制高校を選択しなかった生徒たちです。
【生徒】
「自分は中学校不登校で内申も全然なかったので、通信制があるからどうかなと思って検討していたら、青楓館があって、見学に一度来て、面白そうだなと思って(入学した)」
パン作りが得意な2年の男子生徒は、朝なかなか起きることができない起立性調節障害に悩み、全日制の高校を中退しました。
【生徒】
「夜の0時くらいから朝6時までずっと(寝られない)。きょうも朝まで起きて来て、みたいな感じで。きょう、めっちゃ久しぶりに学校来た」
サポート校の役割は、学習の支援がメインで、生徒は通信制高校に通いながら高校卒業の資格取得を目指します。
文部科学省の最新の調査では、通信制高校に通う高校生は、全体のおよそ7.5%で、13人に1人の割合です。
個性を尊重し 生きる力を養いたいと話すのは、青楓館の学院長として、生徒の学習指導などにあたる藤原照恭さんです。
【藤原さん】
「全日制高校の評価は僕もそうでしたけど、テストがどれだけできて、どれだけ単語を覚えられて、どれだけいい大学に行けたかが基本的な評価指標になっているので。
本来、自分たちがやりたいことで社会で生きていけるけれど、それが全日制では潰されてしまう。潰されてしまうというとかなり語弊があるかもしれないけど、気づけないと思うんですよね。
気づけるのと、それを 最大限、本当に本気で応援する大人がそばにいるかどうかはすごく大事なのでは」
青楓館の特色のひとつが、「PBL」と呼ばれる取り組みです。
PBLは、正解がひとつではない社会の課題に対して、調査や検証を行う「課題解決型学習」です。
現在進んでいる取り組みのひとつが、明石市の街の魅力発信です。
【生徒】
「明石の特長、たとえば育児に力入れているところとか、住みやすいところとかを紹介する。簡単にその情報が分かるようなものを作りたいと言って、それをみんなで考えてやっている」
通学せず自宅から出席している生徒ともオンライン上で議論を進めます。
PBLは、生徒がそれぞれが興味のある課題に取り組みます。
こちらのグループは、みんなでポップコーンを試作。祭りの運営に携わって、地域の活性化について考えるプロジェクトです。
【生徒】
「神戸PBLっていうのをやっていて、(神戸市北区)唐櫃台という場所の夏祭りで、それで使うポップコーンを売るための紙コップにロゴを入れようとしていて、そのデザインを考えている」
PBLは、人や社会と関わり、自分が活躍できるフィールドを模索してもらう狙いです。
青楓館では、少人数ならではの強みをいかし、すべての生徒が週に1度、講師と面談を行う場を設けています。
【高1の生徒の保護者】
「正直、中学の間は『学校面白くない、楽しくない』と言って、『今なんでこの勉強をしないといけないのか』と思いながら休んでいる時期もあったんですけど、4月以降は楽しい、入る前から『絶対この高校がいい』と言って入学したので、期待通りというか、本人はすごく楽しんで登校しています」
【高2の生徒の保護者】
「コロナの後遺症で全日制の高校を1年生で通えなくなって。
通信制に対する知識も少なくて、『道から外れてしまったね、どうしようかな』と口には出さないながらも少しあったんですけど、自分のやる気さえあればどうにでも広げていけるステージだなと分かったので、今はもう楽しみでしかない感じです。
よかったです、自分の偏見とかもなくなって」
開校から3カ月半。1学期最終日は、これまでの活動や、それぞれが進めているPBLの進捗を発表しました。
地元だけでなく、北海道の環境問題にも取り組んだ生徒も。
【生徒】
「北海道PBLとは、北海道の網走を舞台にしたプロジェクトで、網走の環境問題について地元の高校生とともに協力して考えていくプロジェクトです。
9月に現地を訪れ見学します。11月にもう一度網走に行き、現地の高校生と発表会を行う予定です」
【生徒】
「今まではPBLで誰かが提案してきたことを支えるだけだったけど、これからは自分から提案していきたい。
僕が将来海外に行きたいなと思っているので。でも、まだ英語の能力が足りていないから、夏休みの間に英検3級を目指そうと思います」
1カ月半の夏休み。藤原さんは、決して無駄にはしてほしくないと、生徒にエールを送りました。
【藤原さん】
「みんなが動いたことで大人が本気になると実感してほしい。だから、自分の興味関心を実現していったら大人の顔色の変わるし、自分たちのやることも知らぬ間にできるようになっている。
みなさんが世界を動かしてほしい。必ず動くのでぜひやっていってほしい」
報告会の後の球技大会も、生徒の提案で実現しました。
自分のやりたいことを見つけ、背中を押してくれる大人がそばにいる。明石の小さな学校から教育改革が始まっています。