【ひょうご 形の無い文化財】2種類の葉で包む 宝塚西谷のちまき

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宝塚市西谷地区に伝わる「ちまき」。ナラガシワとヨシの2種類の葉でだんごを包むのが特徴です。

この伝統食は2020年に宝塚市の無形民俗文化財に指定されていましたが、ことし3月、文化庁の「100年フード」に認定され、一気に注目を集めました。

ちまきの研究を続ける、兵庫県立南但馬自然学校の服部保学長に、西谷のちまきについてたずねました。

【服部学長】
「2種類の葉で巻くというところが一番の特徴ですね。
端午の節句の時に神様にお供えするということですね。お供えの終わった後に食べたと。
もうひとつは保存食的な意味がある。おもち全体を葉っぱで巻いて、熱湯につけてゆでるから殺菌される。そうすると保存がきくわけですね」

宝塚市北部に広がる西谷地区。その面積は宝塚市全体の3分の2を占める広大な田園地帯で、かつては西谷村という自治体だったことから独自の文化が残っていて、ちまきもそのひとつです。

地元の大原野では、ちまき文化を後世に伝えようと、有志が保存会を作って活動しています。

この日は、100年フードの認定を記念した、「ちまきまつり」の前日。保存会会長の岡田幹夫さんと副会長の仲清人さんが、ちまきづくりに必要なナラガシワとヨシを採取していました。

ちまきには地元に生える植物を使うのが基本です。

【西谷ちまき保存会 仲副会長】
「(ヨシは)もう何百年も前からあるんじゃないか。それを発見してちまきの包みに使ったんだろう」

【西谷ちまき保存会 岡田会長】
「ナラガシワについては家ごとに植樹して育てていく。ヨシとはか多分自然に自生していた」

6月10日のちまきまつり当日です。この日は公民館に地元の女性が大勢集まって、ちまきづくりです。

ちまきは、うるち米6、もち米4の割合で作っただんごを15センチほどの円すい形に整え、ナラガシワの葉で包んでからヨシの葉でしっかりとくるみます。最後にガマの葉で作ったヒモで巻きます。

実は、ちまき文化は西谷でも無くなりかけていました。

【今西富美子さん】
「5月5日が端午の節句です。でもこの辺は6月5日にそれ(ちまき)を作って、仏さんや神さんにお供えしていた。
もう何年かどころか、もう何十年も(自宅では)作ってない」

【福西栄子さん】
「こういう(便利な)時代になってしまいました。(昭和)30~40年になったら、もうそんなたいそうなもの(ちまきづくり)はしないようになってしまった。
『昔、ちまきを食べておいしかったな』『あれが食べたいな』という話が出まして。それなら昔作った経験のある者3人ほどで、ここでやりましょうということになって」

ちまきが地域の伝統として再確認されたのは、2018年でした。

ちまきは、お湯で40分ほどゆがくことで完成します。この日は、屋外で薪を使って豪快にゆがいていきました。

ちまきまつりでは、ちまきづくり体験が行われました。阪神間から訪れた家族連れら17名が、だんごを葉でくるむ作業に挑戦。慣れない作業に悪戦苦闘です。

【参加者は-】
「売られているものを買うんじゃなくて、自分で作ることで葉っぱの香りとか感じられて、すごい良かったと思います」
「知らないことがいっぱいでしたね。普段は食べるだけだったので。
巻き方もこんな工夫してやってるんだというものがありました」

ちまき博士・服部保さんの講演会も行われ、服部さんは、ちまきが日本に伝わってから1300年以上になることや、西谷のちまき文化の貴重さを語りました。

【服部学長】
「今まで続いてきたわけですけど、だんだん減っていくと。そうするとこのまま黙っていたら絶滅してしまうと。
その前に(ちまき文化の)重要性を訴えたほうがいいということで、宝塚の文化財審議会の中で『これは非常に重要だから文化財として指定しよう』と提案させていただきました」

講演会の後、参加者全員に試食用のちまきが配られました。

【参加者は-】
「こういう素朴なものを食べるのも大事なのかなって。飽食の時代に」

【岡田会長】
「今かしかないという、この時期ね。タイミングですよ。
『フード』といっても365日食することもでき、どこかに売っている、こういうのはたくさんありますね。
だけど、これ(西谷ちまき)はどこを探してもありません。それだけに我々がこれを守っていかないといかん」

一年のある時期にしか作ることのできない伝統食が、無形民俗文化財、そして、100年フードとして地域の誇りになっています。

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