兵庫県は各地でネギの生産が盛んですが、今回はその中でも、淡路島で作られている細いネギ「芽ネギ」をご紹介します。どんな野菜なのか、揚田アナウンサーが取材してきました。
訪れたのは、南あわじ市の阿万塩屋町です。
阿部安能さん(49)。県内唯一の芽ネギ農家で、芽ネギを生産して30年になります。早速、農業用ハウスの中を見せてもらうと…。
【揚田アナ】
「すごい、一面緑ですね。芽ネギって、こんな背が低いんですか?」
【阿部さん】
「これで10センチちょっとあるんですけど、これでもう出荷になります」
【揚田アナ】
「この上の黒いものは何ですか?」
【阿部さん】
「これ全部、種の殻になります」
芽ネギは、種から一番最初に出た葉のことをいい、太さ1ミリ以下、長さ10センチほどで収穫します。
特徴は何といっても、その細さ。見慣れた青ネギと比べても一目瞭然です。
【揚田アナ】
「これだけ細くて小さいとなると栽培も大変ですか?」
【阿部さん】
「本来枯れる葉っぱなので、次の芽が出てこようとするので、それを枯れないように育てるのが一番難しい。
そのまま育てたら普通のネギにもなるし、それもずっと育てていくとタマネギもできます」
とったばかりの芽ネギを、少し食べさせてもらいました。
【揚田アナ】
「シャキシャキ!辛みがそこまでなくて、食べやすいですね」
【阿部さん】
「一本目の葉っぱなので、これに栄養分が全部詰まっていますので、体にはとても良いと思います。
小さい子どもでもネギが苦手な人でも食べられるかなと思います」
阿部さんのこだわりは、「土」を使うこと。
一般的に芽ネギは、スポンジに種を植え、水につけた状態で育てる「水耕栽培」ですが、阿部さんは箱の中に土を薄くまいて育てます。土に植えることで収穫後の芽ネギの日持ちが良くなるそうです。
さらに、使う土自体にもこだわりが。
【阿部さん】
「芽ネギの場合は、ものすごく密集して植えるので酸素濃度が薄くなります。
それを防ぐのに、この岩石を砕いて5千度で焼き上げた。これ、とても軽いんですけど、中はスポンジ状態によく似ています」
土と軽石を独自の配合で混ぜることで、根が腐らず元気に育ちます。
種を植えたあと、いまの時期は2週間ほどで収穫サイズにまで生長します。
太さ1ミリの芽ネギは、収穫も工夫が必要です。ここで使うのは、手作りの棒です。淡路島の手延べそうめんに使う道具からヒントを得ました。
芽ネギを棒で挟んで抜き取り、洗浄して土や種の殻を落とし、上下を切って揃えます。
【揚田アナ】
「ここを抑えて…あっ、下が切れてないかもしれないです。でもこの辺は大丈夫…。
(切り終わって)ちょっと斜めになっていません?この辺もまばらになっちゃいました」
阿部さんが切ったものは切り口が揃っていますが、揚田アナのはバラバラ。さすがベテランの技でした。
箱詰めも、ピンセットを使って丁寧に。毎日100~150パック詰めます。
9割が県外への出荷ですが、淡路島では10軒ほどの飲食店が芽ネギを使った料理を提供しているそうです。
阿部さん自慢の芽ネギを使った料理を提供するのは、南あわじ市の「ペンション アマテラス」。オーナーの出田裕重さんです。
【出田さん】
「うちはバーベキューをメインに、宿泊のお客様に提供していまして、肉に添えたり、あとは豚のしゃぶしゃぶとかですね。
あんまり普段、目にすることがないと思いますので、旅行のときとか観光のときとかにすごく良いかなと思って使わせてもらっています」
今回作ってもらったのは、今が旬のハモを使った名物・ハモすきです。
秘伝の出汁に、特産の玉ネギなどの野菜を入れて、火を通します。骨切りしたハモを加え、白い花のように開いたら、ハモすきの完成です。
ほかにも、淡路島で獲れた魚の刺身や、芽ネギ寿司なども用意していただきました。
【揚田アナ】
「ハモがふわふわですね。淡路島のタマネギもそうですし、出汁も甘めなんですけど、そこに芽ネギがあることで、さわやかさがプラスされます」
【出田さん】
「タマネギと芽ネギとハモと。全部、淡路島づくしです。」
続いて、今が旬のハマチ。
【揚田アナ】
「最初に芽ネギのシャキッとした食感がきて、そのあとハマチのコリっとした身の食感を楽しめますね。
脂ものっているんですけど、芽ネギがあることで後味がさわやかです」
【出田さん】
「口がリセットされて、もう3倍、4倍食べられますね。こんな体になっちゃいました(笑)」
一年を通して栽培される芽ネギ。夏は刺身やサラダ、冬はフグ鍋など、季節ごとの食材で楽しめます。
阿部さんは、今後さらに芽ネギの生産を拡大し、目にする機会を増やしたいとしています。
【阿部さん】
「ぜひ、淡路に来たときは、芽ネギを使ったフグ料理なんかにも結構使われていますので、ぜひ食べてみてくれたらありがたいと思います」