ふるさと納税で違反があり制度から除外された兵庫県洲本市で、返礼品としてのおせち料理が偽の公印で業者に発注されていた問題の続報です。返礼品のはずのおせちが一部の洲本市民に無料で配られ、イベントの参加者にも無料で振る舞われていたことが分かりました。
洲本市は2021年におせちの開発プロジェクトとして、ふるさと納税のクラウドファンディングを実施し寄付金を集め、そして、10月1日付でJTBパブリッシングに4800万円分のおせちを発注。発注数は、三段重と一段重のおせちをそれぞれ1000セット。申し込み者が市長名にもかかわらず偽の公印が押されて発注されました。市の条例で議会の議決が必要と定められている2000万円以上の発注でしたが、議会の承認なく決裁されました。このことについて弁護士の見解は?
神戸むらかみ法律事務所 村上英樹弁護士
「条例上、2000万円以上の発注をする場合は議決が必要ということにもかかわらず、議決がなかった。まずそのプロセスに問題がある。明確に条例違反ということになりますね」
一部の市民に無料でおせちが届いた
2000セットのうち800セットが医療従事者に。1000セットがふるさと納税の返礼品として配布予定となっていました。このうちふるさと納税の返礼品としては、10万8000円以上の寄付者に三段重(3万6000円相当)を。3万3000円以上(1万2000円相当)の寄付者に一段重を贈ることになっていました。しかし、実際には一部の市民に無料で配られていました。
洲本市民
「うちは受け取りましたよ」
Q何月くらいですか
「おせちだから年末。なんで配っていただけるのか分からなかったです。すごく不思議」
事前の告知もなく、理由を書いた手紙も添えられていませんでした。さらには、ふるさと納税の返礼品を扱う業者にも突然おせちが発送されたことが判明したのです。
市内の返礼品事業者
「12月31日。冷凍で(三段重)届きました。送り主が洲本市魅力創生課でした。なんで魅力創生課がうちにおせち料理を送ってくるのって。全く理解できないです。業者に送るなんてもっと非常識」
無料で市民に配るのも根拠が必要
村上弁護士
「ただで配ってしまうということについてはそれも条例か議会の議決か根拠が本来必要なわけで、これをなくしてやってしまっているわけなんですね」
おせちはどこに配られたのか?2月の臨時議会で1987セットのリストが公表されました。医療関係者に配られたのは157セット。返礼品としては174セットにとどまっています。残りは新成人に360セット。ふるさと納税の返礼品に関わる業者に153セットが発送。また、リストによると、大半が別の目的で配られたということです。
無料で3万6000円相当のおせちを食べながら…
例えば、東京や大阪など、おせちを食べながら洲本市への移住について考えるというイベントです。3万6000円相当の三段重が無料で振る舞われていました。このようなイベントでシティープロモーションとして合わせて1066セットが振る舞われたとされています。
市内の返礼品事業者
「私は受け取るべきではないし、洲本市の税金でつくったおせち料理をいち納入業者がもらっていいはずがないと思ったので、代金は返しに行きましたけど、受け取っていただけませんでした。受け取った側ももっと声をあげてどうして送られてきたのかなというのをもっと声をあげてもらいたいです」
洲本市長選の2カ月前に一部の市民におせちが
おせちが洲本市魅力創生課から一部の市民に発送されたのは、2021年12月末と2022年1月。洲本市長選や市議選の2カ月前のことでした。
村上弁護士
「投票行動に直接的に影響するかどうか分からないので、公職選挙法に直接違反にあたるということではないのかもしれないが、いろんな疑問が湧く行動なのでやっぱりいかがなものかという感じはしますね」
追認すべきかどうか?洲本市議会は議案を可決
おせちが議会の承認なく不適正に発注されていたことがふるさと納税の第三者調査委員会の指摘で発覚。事後でこの発注を議会が認めるべきかどうか。2月の洲本市の臨時議会で議案が出され、賛成と反対が同数に。最後は議長採決で可決されました。発注から1年4カ月経ってから追認されることになりましたが、傍聴席からは驚きの声が飛び交ったそうです。
傍聴していた市民
「えーっという感じ。なんか。えーって。これで洲本市はやっていけるのかみたいな声が後ろから聞こえて。どうなっているねん!洲本市は?みたいな声が聞こえた。市会議員って市民の代表なのに、なぜもうちょっと突っ込んだことを言えないのか。反対にならないのかと思いました」
村上弁護士
「追認されたということなんですけども、配った時点ではそういう根拠がなかったということなのでこれは非常に問題があると言えます」
洲本市議会の6月定例会が6月16日に開会
洲本市 上崎勝規市長
「第三者調査委員会では、地場産品基準違反や3割基準違反など373品目の産品に違反があり、複数の違反をしていた商品も71品あることが報告されました。しっかりと反省した上で検証し、できることから改善に向けて対策を講じてまいる所存であります」
疑惑のおせち問題や市が牛を1頭買いした問題などふるさと納税についても市議による一般質問が行われる予定です。
サンテレビは、JTBパブリッシングとのおせちの契約書類について情報公開請求をしていますが、洲本市は、契約書や納品書が「ない」と回答をしています。JTBパブリッシングはサンテレビの取材に対し、「回答を差し控えさせていただきます」とメールで回答しています。洲本市は2月の臨時議会で1987セットを配ったと内訳を公表しましたが、納品書がないため本当に1987セットのおせちがつくられて納品されたかどうか分からない状態です。
サンテレビの取材に対して、洲本市は文書で回答しました。
Qなぜ当初の目的と違うところに配られたのか
「当初の予定では医療従事者の方とふるさと納税の返礼品として納税者の方におせちをお送りすることとしていました。また、当時の決裁には書かれておりませんが、移住関連のイベントの振る舞いとして活用することも想定されていたようです。しかしながら、医療従事者・ふるさと納税の納税者ともに、予定していた数量をお配りすることができず、発注済みであったお節料理をお送りする方を新たに選定したと思われます。新たなお送り先として、返礼品の納入業者の方や新成人の方にお送りすることとなりました。ただ、新たにお送りする方への決裁は書類がありませんので、事務処理ができていなかったものと思われます。返礼品業者の方にお送りしたのは、新たな返礼品開発のヒントや都市部住人の好みやニーズを知ってもらうために贈ったところです。また、新成人の方にお送りしたのは、洲本市の産品のPRと、成人式がコロナ禍の中での開催となり祝賀会等大人数での飲食の機会を自粛いただいた代わりとして、成人式に参加された新成人の方にお贈りしました」
Q市長選の2カ月前に市役所から複数の市民におせちが無料で配られたことについて
「おせち料理という商品の特性から、本来は年末までに配送を終了させておくべきものですが、元々の事業のスケジュールからやや遅れながらの実施となっています。当該事業でおせち料理をお送りしたのが年末年始の時期であったというだけで、市長選・市議会議員選挙の2ケ月前の時期であったことはまったくの偶然です」