2010年に神戸市北区で当時高校2年の男子生徒を殺害したとして、殺人の罪に問われている当時17歳の男の裁判で、被害者の遺族が「捕まるまでの11年間、被告の行動に命を削られてきた」と意見陳述しました。
事件当時17歳の無職の男(30)は2010年10月、神戸市北区の路上で当時高校2年の堤将太さん(当時16)をナイフで複数回刺して殺害したとして、殺人の罪に問われています。
これまでの裁判で男は殺意を否認し、弁護側は、事件当時、刑の減軽対象とされる心神耗弱状態だったと主張しています。
6月7日から始まった公判には殺害された将太さんの家族が被害者参加制度を利用して出席していて被告人質問などを行ってきました。
【将太さんの2歳年上の兄】
「事件の前に将太とけんかをして最後の会話はけんかだった。仲直りはできていない。『きのうはごめん、悪かった』の一言が言えなかったことに後悔がつのる。約11年、長く感じた。このまま捕まらないのではと情報提供を呼び掛けるポスターを見るたびに怒りが湧き上がった。喪失感と怒りはいつまでも消えない。この法廷で被告から真実が語られたと思っていない。最も重い処罰を望みます」
【将太さんの8歳年上の姉】
「父は将太が出かけるのを止めていたら、母は将太が倒れていた時AEDを持ってきていれば、私は心臓マッサージをやめる決断をしなければ・・・たくさんの後悔がある。家族で誕生日を祝う場に将太はいない。事件後に生まれた私の子どもとどう遊んでくれただろうか。被告だけではなくその家族にも遺族の喪失感と計り知れない思いを知ってほしい」
【将太さんの9歳年上の姉】
「事件の日は仕事が休みで、アイスを買って帰ると将太が2つ食べた。何気ない会話が最後になるとは思わなかった。奪っていい命など一つもない。刃物を振りかざせば死んでしまうかもしれないと分からないのか。一生許さない」
【将太さんの母】
「生まれた時の顔、海水浴で迷子になったこと、高校生になっても雷がこわくて一人でいられなかったこと。すべて昨日のことのように思い出されるけれど、新しい思い出が増えることはない。痛かったでしょう。きっと助けを求め死にたくないと思っていたはず。代われるものなら私が代わってやりたかった。生きていれば将太は29歳。悲しみと憎しみを背負って私たちは生きていかないといけない」
【将太さんの父・敏さん】
「大切な大切な息子だった。どれだけ痛かったか、苦しかったか、つらかったか。毎日毎日将太を思った。あなた(被告)やあなたの家族の愚かな判断に私たちの命は削られてきた。私の息子は殺されるために生まれてきたのではない。将太を返してください」
検察は「犯行は正常心理で行われた」とする精神鑑定の結果は信用できるとして「被害者にはなんの落ち度もなく一方的かつ執拗な犯行は殺意も強固で悪質であり、被告が当時17歳だったこと以外に酌むべき事情はない」として懲役20年を求刑しました。
一方、「犯行当時、心神耗弱状態で少年だったことが考慮されるべき」などとして懲役8年が相当と主張し、裁判は結審しました。
判決は6月23日に言い渡されます。