2010年、兵庫県神戸市で高校2年の男子生徒を殺害したとして殺人の罪に問われている男の裁判員裁判が9日、神戸地裁で開かれ精神鑑定を担当した医師が出廷しました。 医師は、鑑定結果について「犯行当時、男に精神疾患はなく、責任を逃れるために精神疾患を装っている可能性が高い」と証言しました。
被告の男に行われた2度の精神鑑定 医師が法廷で証言
2010年、当時17歳だった無職の男(30)は、神戸市北区で高校2年の堤将太さん(当時16)をナイフで複数回刺して殺害したとして、殺人の罪に問われています。
神戸地裁で開かれたこれまでの裁判員裁判で、被告の男は行為を認めたものの殺意を否認していて弁護側は、男には当時、妄想や幻聴があり、判断能力が劣る心神耗弱状態だったと主張し、刑事責任能力の程度などが争われています。
2021年8月、男の逮捕後、5カ月間の鑑定留置が行われ、2022年1月に刑事責任能力を問えるとして神戸地検は殺人罪で起訴しました。 その後、弁護側が精神鑑定を請求し、2022年10月から2023年1月に渡り、再び精神鑑定が行われました。
4カ月にわたる鑑定経て 医師「詐病の可能性高い」と証言
9日の裁判では2度目の精神鑑定を行った医師が出廷し、2時間の面談を10回行った鑑定の結果を報告しました。
医師は、「犯行当時の被告に精神疾患はなく、責任を逃れるために精神疾患を装っている詐病の可能性が高い」と述べました。
また、医師は「犯行動機に関する捜査段階の被告の供述が精神鑑定の際には『精神状態が悪かった』という内容に変わってきており、責任を減免する意図で精神疾患を装っている詐病の可能性を検討する必要が生じた」と証言しました。
男が精神鑑定で述べた「不良に狙われている」という妄想や幻聴について医師は「逮捕直後の供述にはなく精神鑑定の際に自ら述べ印象付けようとした」と指摘、その上で鑑定時に男が話した内容には「明かな嘘がある」と述べました。
鑑定結果について「男の主張する幻聴・妄想は病的なものではなく、犯行当時に精神疾患はなく鑑定時の精神状態も正常だった」として、「犯行当時から現在に至るまでの行動はすべて正常心理で行われていた」と結論付けました。
裁判は6月12日に結審し、判決は23日に言い渡されます。