スマスイで35年勤務したスタッフに密着~35年の歴史に幕を閉じた須磨海浜水族園

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【神戸市立須磨海浜水族園 平川雄治さん】
「あのときの須磨の水族園で見せようとしてたから、そういうのって批判されるの覚悟でやろうとしてたところがあった。本当に『スマ』は『生き様展示』です」

平川雄治さん、53歳。

【平川さん】
「ここが井戸水の貯水槽なんです。この井戸水は淡水魚にも使っているんです。
その淡水魚は残留塩素が高くなるようだったら調整しないといけない」

神戸市立須磨海浜水族園で働いて35年。平川さんはスマスイの中で唯一、開園初期から働いているスタッフです。

【平川さん】
「表はキレイにしていますけど裏はだいぶガタがきていまして。もう35~36年になるのかな。そういう建物で」

現在、建物の維持や修繕を担当する施設管理課の課長ですが、以前はイルカトレーナーを務めていました。

【1988年の映像】
「こんにちは。僕たちはイルカの中でも特に人懐っこいと言われるバンドウイルカです」

これは1988年、和歌山県太地町で、スマスイに初めてイルカを連れてくるためのトレーニングをしている映像です。

【平川さん(当時18歳)】
「『イルカと友達になれたら』という感じもありますし、イルカが何を考えているのかそういうのを知りたい」

翌年の89年、「イルカライブ」がスタート。「イルカが生きているそのままの姿を見てほしい」というトレーナーの思いのもと、ショーではなく「生きる」という意味の「ライブ」と名付けられました。

イルカライブの影響もあって、開園およそ1ヶ月で入園者数は50万人、4年で1000万人、そして35年で6600万人。

スマスイは魚の展示だけでなく、愛くるしい動物たちであふれました。

サメに襲われ、両前脚の半分を失ったアカウミガメの「悠ちゃん」。官・民・学が連携して人工ヒレの開発プロジェクトが行われました。さらに、開園からのべ18頭飼育されたラッコ。オスの「ラッキー」とメスの「明日花」は、スマスイのアイドルとして長い間愛されました。

そんな動物たちの中で一番人気だったのは、やっぱりイルカでした

惜しまれながらもひと足先に2021年、イルカライブは終わりを迎えました。

【平川さん】
「毎年毎年、イルカライブの内容を変えていって、より新鮮な状況でお客さんに見てもらえるような状況をやっていた」

そして、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災。スマスイも大きな被害を受けました。当時、波の大水槽では6000匹もの魚たちがいましたが、停電の影響でその多くが死んでしまったのです。

【平川さん】
「あのときも生かすことを最重要で、何とかして生かさなきゃってっていうのがありましたからね。あの震災は。
いままでの流れができないけども、その中でも良いものを、元気に楽しく継続してやっていけるような状況を目指していた」

-閉園5日前
【平川さん】
「本当に迫って来ましたね。5日前にこんなに盛り上がっていいんだろうか」

まもなく閉園日を迎えるこの日、スマスイの現役飼育員や元スタッフなど、長年親交のある人たちとの食事会が行われました。

笑いが絶えない食事会の仲間たちには、ある共通した思いがありました。
【元須磨海浜水族園 飼育支配人 馬場宏治さん】
「新しい水族館ができても、須磨の地に立つ水族館としては、先人たちが繋いできた思いは繋げないと」
【平川さん】
「生きている『生き様』を見せようとすると、食べたり食べられたりという状況をあのときの須磨の水族園で見せようとしてた。そういうのって批判されるの覚悟でやろうとしてたところがあった。本当に『スマ』は『生き様展示』です。
それを引き継いで今のこれから新しい水族館を作るときの一員になっているから、(先人の想いは)残っている」

スマスイは大きな魚と小さな魚が一緒に泳ぐ、自然界のありのままの姿を見せる「行動展示」をいち早く取り入れるなど、挑戦を続けてきました。

先輩から引き継がれてきたその思いを胸に、「最後の日」がやってきます。

【中垣内浩 総支配人】
「泣いても笑ってもきょうで最終日です。最後は最高の笑顔で」

いつもと変わらず施設管理の仕事をする平川さん。しかし、この日はいつもより開園時間が早く、スタッフはあわただしく動き回ります。

【魚類担当 国本亜紀さん】
「きょうは10分早く開園する。急いで行きます」

こちらはスマスイで働いて8年になる、魚類担当の国本亜紀さん。一番のやりがいは「お客さんとの触れ合い」だと言います。

【国本さん】
「特にバックヤードツアーなんかは直接お客さんとお話ししたりとか、終わった後に質問を受けてそれに答えたりというのが一番楽しいですね。
しばらくお客さまにも会えなくなってしますし寂しい気持ちですね。
きょうは一瞬で過ぎ去ってしまうと思うんですけど、噛み締めてきょうを楽しもうと思っています」

「スマスイ最後の日を楽しむ」。国本さんの思いは、お客さんも同じです。

閉園セレモニーでトークショーを行いました。

【MC】
「震災の話もありましたけども」
【平川さん】
「イルカたちはゆれが怖かったんでしょうね。プールの底の方を固まってゆっくり泳いでいました。
3ヶ月ほどで再開できる状況になりまして、早く再開できたと思っています」

【MC】
「スマスイにはたくさん来ましたか?」
【観客の男の子】
「…赤ちゃんの時からずっと来ました」

【来園者は】
「出身が明石なので、小学校の遠足とか遊園地でも来ていて、考えただけでも涙が出るくらい寂しいです」

【男の子】
「スマスイありがとう。スマスイありがとう!」

いよいよスマスイ最後の時がやってきます。

【中垣内支配人】
「これから出ますんでよろしくお願いします。神戸の夜景と同じですから、素晴らしい笑顔で」

【中垣内支配人】
「きょうでスマスイは長い歴史の幕を閉じます。来年の6月に新たなカタチでお待ちしております。
本当に長い間ありがとうございました!」

【国本さん】
「ついに終わってしまった。
絶対に泣かないと決めていたんですけど、お客さんから言われてもらい泣きをしてしまった。
明日からまたオープンに向けて頑張っていこうと思います」

【平川さん】
「私はもう施設の面倒見る気持ちで取り組みますので。きれいな水、魚たち生き物たちが住みやすい環境を維持させるために、日々裏方で頑張ろうと思います」

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