神戸市は食を通じて神戸の魅力を発信しようと、市内196店舗の飲食店を「神戸名店百選」に選定し、表彰式を開きました。
3月29日、神戸市役所で開かれた「神戸名店百選」の表彰式。市内の飲食店およそ100店舗の店主らが集まりました。
「神戸名店百選プロジェクト」は、阪神淡路大震災と新型コロナウイルスの2度にわたる危機を乗り越えた神戸の飲食店を表彰し、食を通じて神戸の魅力を発信しようと、神戸市が初めて企画しました。
去年秋からインターネットなどで市民の推薦を募り、今回、530件の応募の中から市内の飲食店196店舗が「神戸の名店」に選ばれました。
【久元喜造神戸市長】
「震災から28年の歳月が流れました。そして新型コロナウイルス感染症の拡大から緊急事態宣言が発出され、休業を余儀なくされたり、長い間通っていたお店が営業を再開してくれた、懐かしい味を私たちに提供してくれた。そのお陰で多くの方々が元気をいただき、明日の希望を獲得できたのではないかと思う」
【やき鳥のんちゃん 辻野美千代社長】
「めちゃんこ誉です。光栄です。ことし創業60年の記念の年なので本当にうれしいです」
辻野さんは、三宮で焼き鳥店を営む2代目社長。28年前の震災を乗り越え、コロナ禍では従業員やその家族の生活を守ることを最も大切に考えたと話します。
【辻野社長】
「震災もコロナも大変だったので、市長の話が非常に心に沁みました。本当に頑張らなあかんなって、61年目に向けてやらなあかんなとすごく思いました」
三宮・東門街の割烹料理店「舟櫓」も「神戸名店百選」に選ばれました。
【舟櫓 安藤喜子女将】
「このコロナは本当に夫婦で乗り越えていかなければならない戦いでしたので、この3年4年は大変でした。きょうのことを励みに、またぼちぼち頑張っていきたい」
認定店には盾とステッカーが贈られ、夫婦2人でステッカーを貼りました。
割烹料理・舟櫓は、ことしでオープン35周年。震災では近くのビルが倒壊し、道路が陥没したため店に立ち寄ることもできませんでした。
【喜子さん】
「震災のときは半年近く店が営業できない状態が続いて、どうしていいか分からない。私も若かったし」
そのピンチを救ってくれたのが先代の女将さんで、母親の米子さんでした。
【喜子さん】
「性格的にも明るい人だったので、『大丈夫、大丈夫。頑張ったらいいんや』って本当に励ましてくれて。コロナの真っ只中に他界しましたので、表彰式に一番出させてやりたかった」
「被災した人を元気づけたい」先代の勧めもあって震災当時は屋台を営業し、焼きそばやホットドッグなど、割烹とはほど遠いメニューを提供しました。
【喜子さん】
「お客様と言ったら工事現場の方々が1杯100円のコーヒーに並んでいただいて『お互い様や』って言ってくださるんですけど、本当にありがたい日々でした」
【舟櫓 安藤伸二郎店主】
「儲けとかじゃなしに。地方から復興の手伝いで来てくれていた。その人らはお昼の食べる所もないんですよ。コーヒーとかサンドイッチとかそんなん作ったら喜んでくれてね」
震災を乗り越えた舟櫓でしたが、コロナ禍ではまた違った苦境に立たされました。
【伸二郎さん】
「ふさぎ込むことばっかりでしたよ。支払いのこと考えたらふさぎ込んでました」
このコロナ禍でうれしいこともありました。長男の肇さんが跡取りとして修業を始めています。
【長男 肇さん】
「やっぱり元気ない感じがしたもので。みんなに元気になってもらえたらなと思って、手伝うことがあればと思って(修業を始めた)」
今回の神戸名店百選。常連客はどう思っているのでしょうか?
【常連客ら】
「ここは本当に自分へのご褒美かなと思っているんで」
「友人に勧めて女子会もしたい」
【喜子さん】
「時間制限があった時でもおひとりで顔出すよって来ていただいて、本当にありがたかったです」
【常連客】
「素晴らしいお店で、一番の大好きなお店です。エネルギーもらえるし頑張ってるのが分かるし、お料理もおいしい」
震災とコロナを乗り越え神戸の食の魅力を発信する神戸名店百選。この盾のステッカーを見つけたら、ぜひお立ち寄りください。