補助犬法施行から20年 受け入れの現状と課題

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宝塚市に住む木村佳友さんは、交通事故が原因で手足に障害があります。木村さんは、妻の美智子さん、そして、介助犬のデイジーと暮らしています。

【木村さん】
「デイちゃん、サーチ携帯!」

デイジーは、落としたものを拾ったりゴミをゴミ箱に捨ててくれたりと、木村さんの日常生活をサポートしてくれます。

JR宝塚駅前にあるラブラドルレトリバーの銅像。名前は「シンシア」で、1990年代の後半から木村さんの最初の介助犬として活動。

在宅勤務の木村さんの生活をサポートし、一緒にスーパーに買い物に行ったり、電車にも一緒に乗りました。こうした木村さんとシンシアの社会参加が、「補助犬法」の成立に大きな役割を果たしました。

「身体障害者補助犬法」とは、介助犬をはじめ盲導犬や聴導犬を含めた、身体に障害がある人の生活を助ける犬=補助犬を、公共施設や交通機関に同伴することへの拒否を禁じる法律です。2002年5月22日、この法律は成立しました。

木村さんとシンシアは、ほかの補助犬ユーザーとともに可決の瞬間を見守りました。すでに認知されていた盲導犬に加え、それまではペット扱いだった介助犬と聴導犬も、補助犬としての公的な基準が設けられました。

【木村さん】
「法案で介助犬も盲導犬も聴導犬も、同伴することが障害者の権利として、アクセス権として認めていただいたことを本当にうれしく思っています」

法律の成立・施行から20年が経過し、補助犬ユーザーの社会参加は確実に進歩しましたが、20年が経過したからこそ、心配な点があると木村さんは話します。

【木村さん】
「補助犬法が出来た当時、テレビとかマスコミが報道したり、受け入れ側の大手企業が補助犬法を社員に周知徹底したり。実際、その時点で認知度も上がって受け入れも進んだが、反対に20年経って補助犬法の認知度が低くなった。
法律を知らない人が補助犬の同伴を店で断ってしまうケースも増えてきているので、障害者が自由に社会参加できないということが、ちょっと残念に思ってます」

現在、全国の補助犬の実働数は959頭。その9割近くの848頭が盲導犬です。そして、介助犬は53頭、聴導犬は58頭となっています。法律の施行後、補助犬の数は増えましたが、近年は減少傾向だということです。

NPO法人・日本補助犬情報センターのホームページです。木村さんが副理事長を務めるこの団体は、補助犬の社会における理解と普及を目指していて、全国の補助犬ユーザーからの相談や対応に当たっています。

多くの公共施設の入口には、補助犬の受け入れを示すステッカーが貼られていますが、いまだに同伴拒否が絶えない現実もあります。

【日本補助犬情報センター 橋爪智子事務局長】
「盲導犬は70年の歴史がありますので、補助犬法ができる前から活動しているので、盲導犬は知っているけど介助犬と聴導犬は聞いたことがないのでと言われて断られることもある。
飲食店や医療機関でも、今もまだ『犬は困ります。ほかのお客様に迷惑なので』ということで断られることがある」

医療機関の補助犬受け入れについて調査も行われています。神戸大学医学部附属病院リハビリテーション部の三浦靖史准教授は、2008年から3年ごとに補助犬ユーザーの受け入れ状況を調査してきました。

【三浦准教授】 
「補助犬利用者は決まった医療機関へ通院することが多いので、それ以外の医療機関に関しては、そもそも補助犬利用者が来られないということで、(受け入れ)マニュアルも作っていないが困ることもない。
(マニュアルを)作らないところは作らないし、作るところは作ってしっかり受け入れているということで、ややそこで二極化、違いが出ているという風に思います」

医療機関の受け入れ拒否は、レストランが拒否するのとは次元が違うものだと三浦准教授は指摘します。

【三浦准教授】
「レストランで拒否されても利用者にとって辛いことだが、医療機関は即健康や命に関わるところなので、やはりここは多くの機関の中でも、率先をしてスムーズに受け入れていくべきところと思います」

宝塚市では、補助犬への理解を深めるイベントを毎年開いています。今年も11月26日に「身体障害者補助犬シンポジウム」が開催され、木村さんも妻の美智子さん、デイジーとともに参加しました。

【木村さん】
「法律ができて、当初は法律の名前も内容も知らない人が54%だったんですが、4年前に調べたら名前も内容も知らない人が70%まで増えていたんです」

今回は、介助犬の役割を若い世代に知ってもらうため、応募した6人の小中学生が介助犬のトレーニングを体験しました。

【体験した子ども】
「最初は自分にできるかすごい不安だったけど、やってみると懐いてくれたり、素直に言ったことを行動してくれて楽しかったです。
学校の友達とかに今回の感想とか、どんなことしたとか伝えて広めていきたいです」

法律ができただけでは、社会全体が変わるのは難しいのが現実です。木村さんは、特に若い世代に補助犬法を伝えることが重要だと話します。

【木村さん】
「レストランとか鉄道会社とかを利用する時に、対応してくれた職員の人が介助犬の事に理解があって、同伴拒否をせずにすごく優しく受け入れてくれた。
そういう方に聞くと、その人が小学校や中学校の時に僕の講演会を聞いてくれてたんです。未来を担ってくれる子どもたちにキチンと補助犬の事を理解してもらえるように、学校教育の中で補助犬を取り入れてほしいと思ってます」

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