利用客が減るバス業界で、新たな地域の魅力を見出す取り組みが兵庫県内で進められています。その取り組みを取材しました。キーワードは、「地域文化を体験」です。
8月下旬。兵庫県多可町の「杉原紙研究所」で、紙すきの体験会が開かれました。
体験会には家族連れが参加。四角い木枠で水を漉し、色を入れて模様を描き、世界にひとつだけのオリジナルの和紙を完成させました。
この体験会は、姫路市のバス会社「神姫バス」が企画しました。神姫バスでは、ことしの春に「地域事業本部」を立ち上げ、バス事業での経験を生かした地域の魅力の掘り起こしを進めています。
【神姫バス 地域事業本部 船本実希さん】
「地域の方と何か一緒にできないかということで企画を。来て楽しいということだけではなく、その地域のことを少しでも知ってもらいたい。楽しさと学びと両方あればいいなと。」
兵庫県は来年7月から、JRグループと共同で「兵庫の食」や「歴史・文化」などを体験できる観光キャンペーンをスタートさせます。また、2025年の大阪・関西万博では、酒米・山田錦の田植え体験など、兵庫ならではの体験型コンテンツを通して、国内外からの観光客の呼び込みを目指します。
【兵庫県 斎藤元彦知事】
「田んぼの土の中の軟らかさを肌で体感をすることは、子どもたちやインバウンドで海外から来られた方も含めすごく面白い体験だと思う。兵庫県のファンを広げていくということ。」
自治体と観光に関連する事業者が一体となり、県内の魅力を発信するこの取り組み。現在、60を超える応募や相談が寄せられているといいます。
9月中旬のこの日、神姫バスでバイヤーとして商品を企画する船本さんは、翌月に予定している日帰りモニターツアーの打ち合わせのため、加東市の窯元を訪れていました。
今回のモニターツアーは、「酒米・山田錦」がテーマ。山田錦を使った日本酒の飲み比べに加え、ここ「東条秋津窯」では、酒米・山田錦を育てた土を使って、ぐいのみを手作りします。
【船本さん】
「これがどういうものから作られているか皆さんに知っていただくくことで、より愛着が湧いたり、今後使いたい、おすすめしたいというふうに、その人に語ってもらえるひとつのことになるのかなと思う。」
【東条秋津窯 藤村拓太さん】
「こういうところで作っているということを知っていただく機会になれば。」
そして、モニターツアー当日。この日、兵庫と大阪から日本酒好きの5人が参加しました。
今回作る「ぐいのみ」は、東条秋津窯の作家・藤村さんが、試行錯誤を重ね7年前に完成させたオリジナルの酒器です。
山田錦を育てた土のほかに、表面に塗る「釉薬」にも山田錦を収穫した後の稲わらを燃やしてできた灰を使用。独特の乳白色の色合いを生み出しています。
参加した人たちは、およそ1時間にわたり、土の感触を手で確かめながら、形作っていきました。オリジナルの山田錦のぐい飲み。どんな焼き上がりに仕上がったのでしょうか。
ツアーではこのあと、地元で捕れたシカを使ったローストや角煮などが並ぶ昼食を味わいました。そして、三木市の稲見酒造に立ち寄り、1889年に創業した130年以上の歴史がある酒蔵を見学した後、山田錦を100%使用し17年以上寝かせた古酒などを味わいました。
【船本さん】
「それぞれのところで山田錦のことについてストーリーを聞いて、試飲をして感じていただいた。背景もしっかりと見ていただけて、山田錦を丸ごと味わっていただけたのかなと思う。
いろんなストーリーを絡めながら、北播磨の魅力を皆さんに伝えていければいいなと思う。」