神子素カメラマンが訪ねたのは、洲本市五色町鮎原にある木下佳典さんの自宅です。
庭に設置されたプールには、たくさんのニシキゴイ。佳典さんは会社員として働きながら、休日を利用してニシキゴイの飼育に取り組んでいます。
その数はおよそ1000匹。育てたニシキゴイで模様が美しいものは品評会に出品しています。
おもに体長15センチほどの幼魚と30センチほどの若鯉の銀鱗部門に出品していて、国際的な品評会でも総合優勝するなど、高い評価を受けています。
【木下佳典さん】
「(ニシキゴイには)小学校4年生から、9歳の時から興味が出てきて、ずっと今に至るくらいです。
何が好きって言われたら困るけど、やっぱり飽きへんのですよね。癒しのひとつみたいな感じで。」
佳典さんがニシキゴイに興味を持ったのは、父の勝也さんの影響でした。勝也さんも会社員のかたわら、ニシキゴイの飼育に取り組んできました。
【父・勝也さん】
「(佳典さんが)4年生くらいから品評会にずっと一緒に行きよったんや。連れていきよったな。
コイといったら寿命が長いから楽しみも長いわな。年数がだいぶある、その間好きなコイなら楽しめる。」
ニシキゴイの飼育は自宅だけでは終わりません。卵からふ化した稚魚は市内にある池に放して育てます。その池の稚魚から選別を繰り返して、模様や体形が美しいニシキゴイを見つけるのです。選別は真夏に行うので過酷な作業です。
【佳典さん】
「みんながしんどいだろうなと言う選別、暑いときの選別がまた楽しいんです。僕にとっては夏の楽しみみたいに。」
この池から選び抜かれた稚魚を自宅の水槽で育てて品評会に備えます。
勝也さんが田んぼの様子を確認しています。実はこの田んぼにも稚魚を放しています。稚魚が害虫や雑草を食べてくれるので、おいしいコメができるそうです。この地域では、かつては田んぼでコイを育てる農家が多かったのですが、今では少なくなりました。
9月になって、稚魚を放した田んぼでは稚魚の引き上げが行われました。人手が必要なこの日、佳典さんの双子の息子・英樹さんと雄喜さんが手伝っていました。兄弟は2人とも会社員ですが、休日には父と祖父が取り組むニシキゴイの飼育に力を貸しているのです。
【双子の息子・雄喜さん】
「ちっちゃい頃だったら、泥んこになりながらコイを獲ったりして楽しかったのを覚えてます。
まだそんなに決まったりとか、したいなとか思ってないけど、どうせだったらちょっとぐらいは手伝ったりしたい。」
【佳典さん】
「次男が先にやりかけた。高校の時、次男が野球やってて淡路の品評会に来れなくて、長男に手伝ってもらって。
帰りに『俺もコイやっていいか』と言われたので『それはウェルカム』と言って。結局、2人とも手伝ってくれる感じになった。その時はやはりうれしい。」
力仕事の多いニシキゴイの飼育では、若い2人の存在が大きな力となっています。最近では品評会にも2人が関わるようになりました。
【佳典さん】
「品評会もあの2人がおらんかったらとてもじゃないけど無理です。
僕の手伝いをしてもらうのに品評会のスタッフもやってもらっているが、要領わかってるので任せる感じ。」
11月に開催される品評会に出すニシキゴイが決まりました。白地に赤の模様が入っていて、背中の一部に銀色に輝くうろこがあるのが佳典さんのこだわりです。去年池で育てていた稚魚をここまで育て上げました。
木下さん一家が3世代で取り組むニシキゴイの飼育はロマンにあふれています。
【佳典さん】
「いとこも田んぼ貸してくれたり、稲植えているところに(稚魚を)放させてくれたり。
色々皆さんが協力してくれるから僕だけおいしいとこ取ってるみたいだが、みんな支えてくれるからね、やっていけてるんだろうね。」