【特集】「姉と一緒に生きていく」 天国の姉とつくる姉妹のアート展

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特集です。
飲酒ひき逃げ事故で犠牲となった女性が遺したたくさんのアートがあります。
姉の死から7年、妹が未完成だった作品に色を付け姉妹初のコラボ個展が実現しました。
「姉と一緒に生きていく」妹が踏み出した新たな一歩です。

グラフィックデザイナーの濱口小百合さん。

亡くなった姉が遺した未完成の絵に色を付け新たな命を吹き込みました。

コラボ作品を見つめる濱口さんたち

【小百合さんの父・濱口榮俊さん】
  「すごくいい。かわいいし、ポップだし、のんちゃんらしさと小百合らしさも出てる」
【小百合さんの母・濱口雅子さん】
  「のんちゃんだけじゃないんだよね」
【濱口小百合さん】
  「コラボだからね」

姉が遺した未完成の絵 妹が命を吹き込みカラフルに

姉が遺した未完成の絵 妹が命を吹き込みカラフルに作品に色を付ける小百合さん

 

モノクロだった絵がカラフルに色づいていきます。色を付けているのは小百合さんの姉、望さんが遺した未完成の作品です。
【濱口小百合さん】
 「のんちゃんが遺した作品はめっちゃいっぱいあるんですけど色を付け終わっている作品は結構少なくて。のんちゃんの感性や色を一番わかっているのは私だし、一番のんちゃんの絵を生かせるのは私だと思うから」

 

目をそらしてきた大好きな人がいない現実 事故から7年、姉の死と向き合う

望さんが描いた絵が増えていくことはもう、ありません。7年前、神奈川県で起きた飲酒ひき逃げ事故で犠牲となり、アーティストとしての未来を奪われたからです。
一番のライバルで大親友。大きすぎる存在を失った小百合さんは現実を受け止めることができませんでした。

姉の望さんと小百合さん

【濱口小百合さん】
 「事実を拒否し続けて絶対に認めない。事故はなかったと言い続けていた。友達とかにも『お姉ちゃん、どうしてるん?』とか聞かれたら『お姉ちゃん東京で普通に大学生活を送ってるで』とか言ったりしていた」

事故から7年、前に進むきっかけをくれたのはやはり望さんの絵でした。

姉の大好きなアートで生きた証を伝える 姉妹初のコラボ個展へ

朝来市で農園とコーヒースタンドを経営する南谷雄大さんが望さんの絵に魅せられ、個展の開催を持ちかけたのです。
【南谷農園・SticksCoffeeを経営する 南谷雄大さん】
 「既存の絵ではなくて新しく絵を描いてもらえないですか?とオファーをしたんです。そうしたら『実は姉はもう亡くなっているんです』と。お父さん、お母さん、小百合さんの力になりたいとその時心が動いた。僕はお店をやっているので『個展をやってみないですか』とオファーした」

アーティストとして生きた姉の存在を伝えるため小百合さんは個展を開くことを決めました。
【濱口小百合さん】
 「のんちゃんが感じたことを書き記したノートがあってそこには『アーティストとして生きられなかったら私はきっとだめだろうな。分からない、怖くて想像できない』とあった。個展を通してのんちゃんを深く知っていってる。心の中の中もちゃんとノートに書いてあるのでそれをちゃんと読んで自分の中で理解して落とし込んでという作業をしたのは個展で初めて」

望さんが遺した未完成の絵に小百合さんが色を付ける。母の雅子さんの願いでした。

【濱口雅子さん】
 「PCで色を付けたりとかグラフィックなことをやりたいと思っていたけれど望はそれが苦手だった。でも小百合がそれをやってくれている。お互いがすごいちゃんと補い合っていて姉妹の絆って深いなってそれが今回の個展で分かった」

大切な人がそばにいるのは当たり前じゃない 望さんの絵がつないだ新たな出会い

午前6時。小百合さんが向かった先は個展開催地の朝来市。
そこでも、望さんがつないでくれた新たな出会いが待っていました。
小百合さんの思いに共感し、クラウドファンディングで個展の実現を後押ししたメンバーたちが準備を手伝いに来てくれたのです。
【濱口小百合さん】
 「本当にこんなにたくさんの人が来てくれると思っていなくて本当に感謝でいっぱいです」

手伝いに訪れた支援者と小百合さん

手伝いに訪れた綿民和子さん、小百合さんを支援しようと思ったのは自分にも家族を亡くすという経験があったからでした。
【綿民和子さん】
 「改めて大切な人がそばにいるって言葉が交わせるって当たり前じゃないし、すごく尊いことなんだと感じました」
【綿民和子さん】
 「小百合さんの思いがあったからみんな集まったんだと思います。言葉にならないけど伝わってきます、思いが」
【濱口小百合さん】
 「のんちゃんが急に体がなくなってしまってどうしていいかわからなかったんですけど 今も、のんちゃんの後ろを追いかけている感じはあって今も道でいてくれている。本当に一緒に生きているって感じがすごくする」

これからも姉とともに生きていく 姉妹で歩む道

小百合さんが色を付けたのはおよそ60枚。
モノクロだった絵は小百合さんの手によって完成しました。

【小百合さんの父・濱口榮俊さん】
 「一つ一つに望の命と小百合の思いがすごく入っていて、よくやったなという言葉しか出てこない。ずっと頑張っていたのを見ていたので」

姉のいない現実と向き合って感じた埋められない寂しさと切なさ。
姉がいてくれたからこそ生まれた新たな出会いと家族の絆。
小百合さんは全部抱えてこの先を生きていきます。

【濱口小百合さん】
「同じような経験をした人がたくさんいると思う。大切な人を亡くしたり。そういう人たちがちょっとでも悲しみの中から前を向ける。一緒にいる、一緒に生きていくことができると思ってもらえるような個展になったら私の中では大成功です」

姉の自画像と向き合う

 

【お知らせ】
姉妹初のコラボ個展「マッチ箱の中のビエンナーレ~のんちゃんに恋する9日間~」は2022年10月29日から11月6日まで開催。
平日/午前10時~午後5時 土日祝/午前10時から午後7時(最終日のみ午後9時まで)
開催場所:SticksCoffee (兵庫県朝来市山東町金浦644-1)

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