尼崎からファッションの本場・フランスへ。福祉と障害への偏見を変えたいと、パリコレに出展。仲間と挑んだ3年越しの夢。人生の大一番の行方は…。
スカート姿がひと際目を引く尼崎市の平林景さん。発達障害の子などが通う放課後等デイサービスを市内で4つ経営しています。
(平林さん)
自分の身近な人に発達障害を持った方がいらっしゃたので、そういう方たちが通えるように。
発達障害の子の長所を強烈に伸ばせるような学校を。
元美容師で、おしゃれが大好きな平林さんには人生をかけた夢があります。
(平林さん)
福祉におしゃれを掛け合わせて、世の中の障害や福祉業界に対するイメージを明るく華やかにするのが生涯をかけたミッション。
平林さんは2019年に日本障がい者ファッション協会JPFAを設立。巻きスカートやジャケットなど、障害の有無に関わらずおしゃれを楽しむブランド「ボトモール」を立ち上げ、縫製の一部を障害者の就労施設で行うなどしました。
そして、ことし5月。JPFAは車いすファッションでのパリコレ挑戦を表明しました。
(日本障がい者ファッション協会 小川修史副代表)
誰もが心躍るファッションをパリから発信する。
9月27日、フランスのパリ日本文化会館。ショーでは平林さんが4分間、英語で想いをぶつけました。
(平林さん)
もし、車いすが当たり前の世の中だったらどんなファッションが流行っていると思いますか。新しい世界をみんなで一緒に見てみましょう。
コンセプトは「ネクストUD」。次世代のユニバーサルデザインです。
今回出展したのは10種類。フックやベルト、マジックテープを使ったものや、頭から被るものなど、簡単に脱ぎ着ができて機能的なのはもちろん、「その人らしさを表現でき、おしゃれで、幸せやワクワクを感じつつ誰もが身につけたくなる」デザインで、新たな価値と流行を生み出すとしています。
さらに、生地にもこだわりが。こちらは1000年以上の歴史を持つ京都の高級絹織物・西陣織。迷彩柄が立体的に表現されています。
(平林さん)
結構特殊な生地で、生地自体が浮いている。そういった特殊な技術。世界であまり見たことがない。
こちらは麻痺がある人でもゆったりと袖を通せるようになっています。両面ジッパーのため、袖を変えたり両腕にすることも可能です。ボトムスは焼却後、土に返すことができるサスティナブルな素材となっています。
また、太陽の光に当たると生地の温度が上がるウォームダールを使用したものは、10度以上暖かくなり足元の冷えを防ぎます。
モデルはオランダ人やイギリス人、それに世界的パラクライマーなど10人が参加。日本からは、モデル選考を勝ち抜いた中村悠紀さんが参加しました。
(中村さん)
個人的には夢の世界で、「パリに来たんだ」って。すごい拍手があったのが覚えているが、高揚感がすごく高まって、あっという間に終わってしまった。
自分の中の完成が広がったので、「早く次のファッションショーないかな」って。
JPFAの谷口藍さん。資金不足などを乗り越え、メンバーも大きく成長できたと言います。
(日本障がい者ファッション協会 谷口藍副代表)
ありのままでは成し遂げられないくらい大きな目標だったので。泣いたり怒ったり色々あったが、変わっていく過程の中で良さが磨かれていった。(平林さんは)より天真爛漫に、より人懐っこくなった。
おしゃれの力で福祉や障害への偏見をなくすことが、自分たちの世代の責任と話す平林さんたち。パリコレで見えた景色とは。
(平林さん)
大きな一歩を踏み出せた、やり切った感はあると思う。自分たちのベストは尽くせたと思う。
間違いなく新しい時代の扉が開いた音が聞こえた。(仲間)全員の力で扉をこじ開けることができたというのが、すごくエキサイティングな旅だった。
パリコレから変える障害者と福祉の未来。更なる変化を目指します。