神戸市北区で高校2年生だった堤将太さんが
殺害されてから10月4日で丸12年となります。
「息子とともに戦う」事件と向き合い続ける家族の思いです。
事件から12年 「なぜ息子が」悲しみは消えない
(将太さんの父・堤敏さん)「逮捕されて1年経ちました。一番最初に入ってきた情報は犯行時17歳の少年。全くの面識もない人、それから何も変わっていない。一言言いたいのは絶対許さない」
末っ子の将太さんは生きていたら10月10日に29歳の誕生日を迎えるはずでした。
12年前の10月4日、午後10時45分ごろ。神戸市北区筑紫が丘の路上で友人と会っていた将太さん(当時16)が頭や首などを刺され命を奪われました。
犯人追い続けた10年10カ月 息子の幸せ楽しみ奪われた
事件から2年後には目撃証言をもとに、情報提供を求めるビラが作られましたが、捜査は難航。
事件は未解決のまま、家族は情報提供を求めるため毎年命日に駅前に立ち続けました。
そして、事件から10年10カ月後の2021年8月、28歳の男が逮捕されました。
事件当時の年齢は17歳、少年法に守られ名前は明らかにされませんでした。
将太さんが奪われた時間を生き、逃げ続けた元少年から謝罪の言葉はありません。
(父・堤敏さん)「司法解剖の記録なんか見ても、本当にここの傷一つ上から下から幅、深さという書き方している。一つ一つ自分の体に刻むような思いで読んだ。ずっと挫けそうやで、本当に。こうやって彼の顔を見たら挫けているわけにはいかんからいつも真正面に向かい合って座っている」
いつも家族の中心で、将来、父の仕事を継ごうとしていた将太さん。
あったはずの未来を思ってしまいます。
(父・堤敏さん)「結婚式でも席を置いて遺影を置いて姉ちゃんの結婚、兄貴の結婚 多分ものすごい喜んだだろうと思う。やっぱり将太がいたらどうなっているんだろうとかそういうことを思ってしまう。普通の家庭の在り方でしょう。犯人はそれを全部奪ったんだからね」
今度は一緒に 「戦う、将太と」
犯人が逮捕されても、息子が戻ってくることはない。
被害者の家族の、そして将太さんの苦しみを知ってもらおうと各地での講演依頼を引き受けています。
この日は、兵庫県警の警察官を目指す大学生らに向けて思いを語りました。
(父・堤敏さん)「将太が帰ってきた。リビングの真ん中に敷いた布団に寝かせた時、涙が出た。『将太ごめんな』と言うのが精いっぱい。包帯をほどいて手を握って温めたら握り返してくれるんじゃないか。頬を温めたらにこっと笑ってくれるんじゃないか。犯人は息子の楽しみや幸せすべて奪った。私の息子は殺されるために生まれてきたんじゃない」
事件から12年。
堤さんは父親として、息子とともに戦う覚悟を決めました。
「黙ってしまうと本当に彼が死んだことになる。僕らがこれから彼が生きている証を作っていってやらないといけない。そのことで僕らの中でも彼は生き続ける。『あの時は怖かっただろうけど今はあいつの顔を見ても怖くないよ』と言ってやりたい。これからは一緒に戦いたいから 将太と」
■2022年10月4日放送「NEWS×情報キャッチプラス」より