副反応疑い報告制度で、医療機関や製造販売業者から新型コロナワクチン接種後の死亡疑い事例として報告されたのは、7月10日までに1780人。しかし、ワクチンと死亡との因果関係が認められた事例は1件もありません。
7月25日、厚生労働省の疾病・障害認定審査会(感染症・予防接種審査分科会)は、急性アレルギー反応と急性心筋梗塞を発症した90代の女性の「死亡一時金と葬祭料」の請求を認めました。初めて死亡一時金が認められたケースですが、健康被害救済制度は、厳密な医学的な因果関係を必要とせず、否定できない場合など幅広く認定の対象としています。そのため、因果関係を評価するのは副反応疑い報告制度であり、1件も認められていません。
どのような副反応疑いが報告されているのでしょうか?
接種後の死亡事例として報告されたのは、7月10日までに1780人です。すべてが関係あるわけではありませんが、まだ因果関係が認められた事例はありません。重篤な副反応疑いは、医療機関からは7585件、製造販売業者からは2万3436件で、両者をまとめたデータはありません。一部、重篤ではないケースも含まれています。この表に書かれていないのがワクチンを打った後に後遺症のような遷延する症状(長期的な症状)を訴えている「ワクチン後遺症」患者です。国の実態調査が不十分なワクチン後遺症とは?
認めてもらえないことが1番つらい なかったことにしようとしている
7月16日に尼崎市で行われたワクチン後遺症患者会。接種後に後遺症のような症状を訴える患者や家族ら約120人が集まりました。これまで多くのワクチン後遺症患者を診察してきた尼崎市の長尾和宏医師が、同じ悩みを抱える人たちが語り合える場を提供しようと会を企画しました。
名古屋市在住 47歳女性
「しびれはそのまままだずっとありますし、歩行困難が1番困っていることですね」
2021年7月にモデルナの1回目のワクチンを打った名古屋市の女性。10日後から手足のしびれや倦怠感が現れ、14日後、歩行困難や息苦しさで救急搬送されました。医師から末梢神経の障害ギラン・バレー症候群と診断され、約5カ月間入院。現在も歩行が困難な状態です。
名古屋市在住 47歳女性
「まず認めてもらえないことが1番つらいな。なかったことにしようとしているのが1番つらいことです。仕事もできなくなったりしているので、苦しんでいる人に気づいてほしいというのが1番ですね」
ギラン・バレー症候群 「重要な基本的注意」としてワクチンの添付文書に
ギラン・バレー症候群は、製造販売業者から副反応疑いとして5月15日までに211件報告されています。統計学では、ワクチンを打っていない人との差が認められないものの、専門家が「ワクチンとの因果関係が否定できない」とした事例が15件ありました。厚労省は、6月10日、「重要な基本的注意」として、症状が現れた場合はただちに医師に相談するようあらかじめ説明することをファイザーとモデルナのワクチンの添付文書に記しました。
医学部生 自分と同じような体験をしている人がどれくらいいるのか?
九州大学の医学部生 20歳男性
「夜寝ている時に心臓の苦しさで目が覚めて息ができない症状で救急車で搬送されました」
2021年10月、2回目のファイザーのワクチンを打った20歳の男性。接種5日後に胸の痛みで救急搬送され、医師から心膜炎と診断されました。男性は、九州大学の医学部生で、後遺症を訴える患者の聞き取り調査をするため、医学部生の仲間5人と患者会を訪れました。
九州大学の医学部生 20歳男性
「自分と同じような体験をしている人がどれくらいいるのかや人の意見をいろいろ聞きたいなと思ってきょうは来ました」
心筋炎・心膜炎は「重大な副反応」と添付文書に明記
製造販売業者からの心筋炎と心膜炎の疑い報告は、それぞれ801件と273件で若い男性が多いのが特徴です。7月10日時点で、専門家によって123件が心筋炎、53件が心膜炎であったと評価されています。厚労省は、ワクチン接種のメリットの方が上回るとしていますが、ファイザーとモデルナのワクチンの添付文書に「重大な副反応」と明記し注意を呼び掛けています。
九州大学の医学部生 20歳男性
「医師は、ほぼほぼワクチンの後遺症(副反応)だろうという感じだった。ちゃんと上の方に報告すると先生がおっしゃっていたので。僕の先生の場合は、正義感を持った先生だったのかなと思います」
19歳女性 情報を開示して苦しんでいる人の救済をしてほしい
神戸市の19歳の女性。2021年9月、ファイザーの2回目のワクチンを接種した翌日から約4カ月間、37度台後半から38度台の熱が続きました。
19歳女性
「発熱と頭痛と吐き気、呼吸がしづらいというのがありました」
女性の母
「毎日毎日熱が続いてきたら2カ月くらいからは衰弱しきっているかなという状態で」
現在も頭痛や微熱など体調不良が続いていて、兵庫県内の医療機関と大学病院に通院しています。5カ所の病院のすべてのカルテを集めて、5月末に国に対して健康被害救済制度の医療費・医療手当を申請しました。
19歳女性
「もっと情報を開示してほしいのもあるし、苦しんでいる人に対してもっと救済をしてほしいなと思います」
ファイザーの機密文書 有害事象分析の報告
ワクチンを接種した後、因果関係を問わず、健康上好ましくない症状や病気を有害事象。このうちワクチンが原因と認められたものを副反応と呼びます。2022年3月、医師や弁護士などによる非営利組織PHMPT(Public Health and Medical Professionals for Transparency)のホームページで、ファイザー社の機密資料が公開されました。資料に記されているコンフィデンシャルとは日本語で非公開の「機密」を表す意味です。ファイザー社がFDA・アメリカ食品医薬品局に提出した有害事象の分析に関する資料で、ワクチン接種後に起こりうる1291種類の有害事象のリストが記載されていました。
厚労省も把握した有害事象報告書
4月26日 参議院厚生労働委員会
川田龍平 参議院議員(立憲民主党)
「ファイザー社からの報告はなかったのでしょうか?いつ厚生労働省はこのデータの存在を知ったのでしょうか?」
鎌田光明 厚生労働省(当時)医薬・生活衛生局長
「テキサス州の裁判でFDA(アメリカ食品医薬品局)が開示したデータというのは先生ご指摘の同じころに我々もニュースなど先生のご指摘を踏まえて調べた結果でございますが、把握いたしました」
3カ月間で1223人の死亡報告 4万2086件の有害事象報告
厚労省が把握したのは、2021年2月28日までの3カ月間の有害事象報告についてです。安全性に関しては新しい懸念はないとする一方で、日本国外で1223人の接種後の死亡報告。特に注視すべき項目として心臓や脳などのさまざまな臓器、神経など、1291種類のワクチン接種後に起こりうる有害事象のリストが記されていました。このリストはワクチン接種後に起こりうるあらゆる有害事象を検証するためのもので、有害事象があったことを報告するものではありません。
鎌田光明 (当時)医薬・生活衛生局長
「ファイザー社によれば公開されている資料と我々の方に報告した資料がどこまで重複しているか不明というところでございました」
PHMPTが公開した裁判資料によりますと、FDAに情報開示請求の裁判を起こし、2022年1月、アメリカのテキサス州の裁判所は、ファイザー社の資料を開示するよう命じました。
専門家の会議に諮ってから国民に情報を発信
川田龍平 参議院議員
「データについて知ったのは私の質問で知ったということですが、その一部はしっかり受け取っていたということでよろしいということですね。それ公開はされたんでしょうか?」
鎌田光明(当時)医薬・生活衛生局長
「得られた情報をそのまま出しているわけではない。国内の副反応の状況、そして国外の安全性に関する情報も含めて評価して専門家の会議に諮りその上でその結果について国民のみなさまに情報を発信したいと考えているところでございます」
川田龍平 参議院議員
「そこでなぜ専門家を間にかませるんですかね。データをちゃんと出してくださいよ。公開して。大本営発表になってしまっている」
ワクチン接種後に起こりうる有害事象の検証リストには自己免疫疾患も
白血病や悪性腫瘍の研究・治療を専門とする名古屋大学名誉教授の小島勢二医師。ファイザーの報告書の特に注視すべき有害事象のリストの中に、血液、消化器、脳神経、循環器、腎臓などさまざまな臓器の自己免疫疾患が記されていて、リストと同様の症例が国内の副反応疑い報告でも報告されていることに懸念を示しています。
ファイザーのワクチン接種後に起こりうる有害事象検証リストと同様の症例が国内の副反応疑い報告でも
名古屋大学名誉教授 小島勢二医師
「日本で新型コロナワクチンを打った後に自己免疫疾患があるかと言うと、もうかなり報告されているんですね。ギラン・バレー症候群が222人。血小板減少性紫斑病が144例だとか」
【7月8日開催:第81回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和4年度第6回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会資料より 副反応疑い報告について小島医師まとめ】
【神経疾患】
ギラン・バレー症候群 222件 急性散在性脳脊髄炎 71件
【血液疾患】
血小板減少性紫斑病 144件 自己免疫性溶血性貧血 11件 抗リン脂質抗体症候群 10件 後天性血友病 5件
【消化器疾患】
自己免疫性肝炎 21件 自己免疫性膵炎 2件
【その他】
全身性エリテマトーデス 21件 抗好中球細胞質抗体陽性血管炎 14件
日本の医学界でも
名古屋大学名誉教授 小島勢二医師
「去年の終わり、ことしくらいから結構コロナワクチンと関連したこういった自己免疫疾患の報告が学会で報告されているのが目立つんですね。これはたまたま血栓止血学会。見るとここに5題くらい出ていると。血小板第13因子というのは凝固因子ですね。それに対してワクチンを接種した後、自己抗体ができてしまってそのために亡くなってしまったと」
日本の医学会では、自己免疫疾患以外にも新型コロナワクチン接種後の症例報告や副反応に関する発表が相次ぐ事態になっています。その数はこの半年でのべ約150件(題)。8割の国民が2回目の接種を完了し、6割の国民が3回目の接種を終えました。国は被害を訴える声に向き合い、因果関係について実態調査に取り組む責任があるのではないでしょうか?
ファイザー社の有害事象報告書について
サンテレビはファイザー社に対して3つの質問をしました。
①PHMPTのウエブサイトの有害事象報告は本物か?
②日本政府に対して報告は?いつ?
③テキサス州の裁判所がFDAに情報開示命令を出した?
ファイザー社の回答です。
「FDA(米国食品医薬品局)が接種開始後の実際の臨床での有害事象レポートに関する資料を公に発表したという事実はございません。なお、弊社が米国での製造販売承認申請時にFDAに提出した資料の一部が第三者のWebサイトで公表されているとの情報がございますが、第三者のWebサイトであるため、大変恐れ入りますが、弊社からお伝えできることはなく、また、提供できる資料もございません」
とコメントしています。
「1291種類の有害事象があった」のは誤り 注視するべき項目で有害事象があった報告ではない
サンテレビの8月22日の放送で有害事象報告1291種類4万2806件とお伝えしましたが、「1291種類の報告」という表現に誤りがありました。1291種類は、起こりうるあらゆる有害事象の可能性を検証したリストのことで、ワクチンの接種後に「1291種類の有害事象の報告があった」というのは不適切な表現です。訂正してお詫びいたします。