相撲部も土俵もない大学で女子相撲の日本一を目指す学生がいます。なぜ相撲を始めたのか、女子大生が相撲道にかける思いを取材しました。
神戸親和女子大学に通う古瀬愛恵さん。身長158センチと決して大きくない体で挑むのは…女子相撲です。
(古瀬さん)
一瞬で決まる。他のスポーツにはない。何が起きるかわからないから相撲って楽しいなと思う。
古瀬さんは長野県出身。小学1年生のときに相撲を始め、高校は相撲の名門校・鳥取城北高校に進学。そんな相撲の強豪校から去年の春、相撲部も土俵もない神戸親和女子大学に進学しました。
ひとりで相撲愛好会を立ち上げ、去年秋に行われた全国大会では見事日本一に輝きました。
(古瀬さん)
(強豪大学からのオファーは)届いてました。でも、土俵がなくても相撲はできるということをいろんなところに広めていきたいし、そういう姿を見てあとに後輩が続いてきてくれたら嬉しいなという思いでこの神戸に来た。
女子相撲はプロへの道がなく、古瀬さんは大学4年間を競技人生の区切りとし、教師になるという夢を叶えるため、教育学部のある親和女子大学を選びました。グラウンドの片隅でひとりサンドバッグと向き合い、黙々と立ち合いの練習を行います。
古瀬さんは高校1年のときに腰を痛め、結果を残せなかったことがありました。それ以来、トレーニングのやり方はもちろん、スポーツ選手として自身の生活スタイルも考えるようになりました。
(古瀬さん)
トレーニングをした後とかはしっかりごはんを食べた方が良いので、バランス良く考えて作っています。
4月2日、この日2人の後輩が古瀬さんの背中を追いかけ、相撲愛好会に入部してきました。長門美咲さんと小野田花梨さんです。
(長門さん)
寮でもたくさん面倒見てくださって。ごはんや日曜日には一緒に出かけたりしていたので、これから大学でもやっていきたい。
(小野田さん)
初めて会ったときもすごく丁寧に教えてくださって、今も買い物も一緒についてきてくれて優しい先輩。
この日が3人でやる初練習。これまでのひとりでの練習とは違い、真剣な表情の中に時折笑顔が見えるようになりました。
(古瀬さん)
やっぱりひとりと違ってみんなで確認しながらできるので、後輩を大切にして良いチームを作っていけたらなと思います。
翌週には大きな大会を控えています。3人体制になってわずか数日での大会です。
迎えた大会当日。この大会は全国の中学生から社会人までが階級別に競う個人戦と、3人チームで競う団体戦があります。古瀬さんたち神戸親和女子大学にとって初の団体戦出場となります。
初戦は3人とも勝って2回戦へと進み、相手は静岡県の永田相撲クラブ。先鋒・長門さん敗退。続いて中堅・古瀬さんは上手投げで勝利。1勝1敗で大将戦へ。小野田さん、粘りを見せましたが…惜しくも敗れました。
そして個人戦。古瀬さんは2回戦、名門・立命館大学の選手との対戦。大きく崩れ、審判会議に。しかし、わずかに先に手をついてしまい、ここで敗退となりました。
続いて中量級に出場した長門さんは順調に勝ち続け、決勝戦まで進みます。相手は団体戦の2回戦で敗れた静岡県の選手。見事、押し出しで日本一を勝ち取りました。
(古瀬さん)
自分は(結果を)残せなかったけど美咲が優勝してくれたので嬉しい。負けないように頑張ります。
神戸親和女子大学で女子相撲の開拓者となった古瀬さん。選手としての期間はあと3年。頼もしい後輩たちとともに古瀬さんの挑戦は続きます。
(古瀬さん)
相撲は一瞬で決まる競技だからこそ、日々の一瞬も大事にして神戸親和女子から相撲を広げていきたい。