【特集】病気で得た出会いを糧に 若年性認知症と生きる

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若年性認知症と診断された三田市の男性が自らの経験を伝えています。
病気をきっかけに多くの出会いを得た男性の闘病生活を取材しました。

古屋一之さん。2016年、58歳の頃に若年性のアルツハイマー型認知症と診断されました。

三田市の自宅で息子と2人、暮らしています。

訪問ヘルパーの介助を受ける古屋さん

【古屋一之さん】
「『認知、いらんねん』と。『お前いらんねん』じゃなくて『認知』と言われた時はすごくこたえました。
『どこへ行ってもあんたはあかんねんで』と言われたような気がしました。人生の最後につまずいてしまったというか、その気持ちはすごくありましたね」

勤めていたタクシー会社では運転事故の訴訟や運行管理の業務を担当していましたが、認知症を理由に解雇されました。
64歳未満で発症する若年性認知症は進行とともに認知機能や理解力が低下したり、記憶障害などの症状が出ます。

認知症と診断されてから6年。古屋さんは物と物の距離や位置関係を把握するのが難しくなってきました。
2021年9月からは食事の準備や入浴など短時間の訪問ヘルパーの介助を受けています。

あしたのことさえも… わからないことが増えていく日々

【ヘルパー】「へぇ~明日お花見に参加されるそうですよ?」
【古屋さん】「え、知らんよ…どこに書いてあるのそんなの」
【ヘルパー】「ここにね、いいですね」
【古屋さん】「え、そんなの知らんわ。聞いてないよ」

あすの予定や服の向き。椅子の座り方、トイレからの帰り方などがふとした時にわからなくなります。
2021年9月から始まった1冊のノートには、息子の剛太さんや訪問ヘルパーが書いた古屋さんの様子が記録されています。
幻覚や幻聴、物忘れ。古屋さんの認知症は少しずつ進行しています。

病気で得た数々の出会いが古屋さんの力に

北村吉次さん。古屋さんとの付き合いはもう4年になります。2018年に講演会で自身の経験を語る古屋さんと出会いました。
以来、同じ病気を抱える人たちとの交流会やイベントに出かける古屋さんのサポートを買って出ています。

【北村吉次さん】
「行ったら『きょうはなんでした?』って聞かれると思います。きょうの予定は頭の中には残っていないと思います」

この日は、地元のデイサービスで開かれる交流会に参加するため古屋さんを迎えに行きました。

古屋さんと北村さんが出会った2018年

【古屋一之さん】
「北村さんと会ってあちこち行くようになった。同じ認知症という病気の人と会わせてもらえたのは大きかったですね。
北村さんに会ってから『いいんだ、これでかまへんのや、まだまだできることはあるで』と教えてもらいました」

自分の経験が役に立てば 古屋さんが伝えたい思い

新型コロナウイルスの影響で3カ月ぶりの開催となった交流会「花カフェ」には、認知症の当事者やその家族らが参加しました。
この日、初めてカフェに参加した80代の夫婦です。
「古屋さんの話を聞きたい」と足を運びました。

【80歳の妻】
「何か手助けになるようなことがあるかもしれないから私は本当ずっと楽しみに…心待ちにしていたんですけど主人はさっき聞いていなかったと言うんですね。
そういうことが多くなってきて私の心の準備がすごく苦しくなってきた」
85歳の夫は2年ほど前から物忘れが増え、認知症の疑いがあると言います。

交流カフェに参加した古屋さん

【古屋一之さん】
「話の語尾に『大丈夫』と付けたらいいんですよ。なんでもつけてください。そうしてやったら大丈夫や、大丈夫やと思いますから。
そう思わせるのは一緒に生活している人しかできないと思うし、本人が一番落ち着くと思う」

認知症という病気を受け入れた今、古屋さんはかつての経験を当事者たちに伝えようと奮闘しています。

「認知症も捨てたもんじゃない」 前を向いて生きる

【北村さん】「いろいろ話して古屋さんの体験がその夫婦にとってちょっとでも元気になるようなきっかけになればいいよね。古屋さんの仕事です、それは」

【古屋さん】「恥なんですけれど自分にとったら。いろんなことを話している。役に立ててもらえるんだったらと思うようになってきましたから隠しておきたいんじゃなしに、それも話さないとあかんなと思うようになってきました」

【北村さん】「それが古屋さんのいいところですよ。良いところであり、古屋さんにとって一番大事な仕事ですよ」

【古屋一之さん】
「この病気になったから悪いことばかりが起きたんじゃないんですよね。この病気があったから出会えた人がようさんいるわけですから。決して認知症も捨てたもんじゃないよとそういう気持ちでいますね」

桜の下を歩く古屋さんと北村さん

病気で得た出会いを糧にして。

できないことが、忘れてしまうことが、増えていく毎日を前を向いて生きていきます。

-2022年4月14日放送「NEWS×情報キャッチ+」より

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