2022年03月17日(木曜日) 12:27 地域・まち報道特集・ドキュメント

丹波 映画監督が能楽師のピンチ救う

丹波市在住の能楽師・上田敦史さんです。上田さんはこのほど京都府福知山市のため、市にゆかりのある武将明智光秀を主人公にした新作の能を作りました。

能は3月8日、光秀が築いた福知山城本丸広場で披露されるはずでしたが、新型コロナの感染拡大の影響を受け、舞台まで1週間を切った3月2日、無観客となることがホームページなどを通じて発表されました。

(上田さん)
唯一よかったのは、動画だけでも撮影させてもらるということなので。それならば、ちゃんとしたものを残すということになったのが、本当に(本番の)1週間ほど前の話なので。まずは誰に撮ってもらうのか…。

そこで撮影に手を挙げたのが映画監督の近兼拓史さんです。

自身の映画製作で丹波市に魅せられた近兼監督は去年、およそ半世紀ぶりとなる映画館「エビスシネマ。」を立ち上げるなど、市のために力を尽くしてきました。

地元の能楽師・上田さんに訪れたピンチに近兼監督は撮影を申し出、この舞台で動画作品を作ろうと提案しました。

この日は本番まで残り4日。すでにリハーサルも終了し、近兼監督には綿密な撮影プランを考える時間がありません。

(近兼監督)ここの前にマイクを置くとしても。
(上田さん)あー、前に置く。
(近兼監督)前に置くじゃないと(音が)取れないですよ。
(上田さん)舞台上にマイクだらけの、で、コードはいっぱいというのはちょっと避けたいと、正直避けたいですね。音のこともあるんですけど。
(近兼監督)それは何も撮れなくなりますよ。

(近兼監督)
能楽師さんなので他の分野のことはわからないのですから、それをカバーするのは僕らの仕事なんですけれども…苦労しそうですね。

伝統芸能を撮影するのは初めての体験。映画の現場とはどうも勝手が違う能の舞台に思わず本音がこぼれます。

(近兼監督)
きついぞー…いえいえ、やりましょう。
無観客になって誰にも見ていただけないというのは本当に残念なので、何とか皆さんに見ていただける、よりクオリティーの髙い状態で見ていただけるようにがんばってみようと思う。

本番当日となる3月8日、晴天に恵まれた福知山城。監督は朝早くから準備に追われていました。

(近兼監督)
とりあえず6台、カメラ6台用意しましたけど、ぶっつけ本番なので次の展開が読めないので。
いやぁ厳しいね。電源がまだないのでどうしたらよいかと思っているところです。まぁ何とかします。

ぶっつけ本番の状態ではカメラやマイクの位置もなかなか定まりません。

(近兼監督)
人がいなければ近くにカメラを置いても大丈夫ってことですね?

本番直前の軽いリハーサルで出演者の動きを絶えず確認しながらのセッティングです。

いよいよ本番が始まりました。福知山城の本丸広場、野外ステージが舞台となる『光秀』。

光秀の盟友・細川幽斎を通じ過酷な生涯を描くストーリーで、能独特の舞や笛、そして太鼓はもちろん、戦国時代のスペクタルを表現するために鉄砲隊なども登場します。

監督は常にカメラに向かいファインダーをのぞき込みます。また、移動するカメラマンに対し動きを指導。ダイナミックなカットを狙っていきます。

こうしておよそ1時間半の舞台は終了しました。

(上田さん)
実は近兼監督が一番頭を悩ませたと思います。正直、能を撮ったことがないはずなので。
しかもワンチャンス、一日だけしか撮れない。でも結果良い作品ができ、お互い喜び合えたらそれに勝るものはないかなと。

(近兼監督)
動きの少ないものですから、どうやって飽きさせず見せるかというのが難しいですよね。
このコロナ禍で伝統芸能の方というのは本当に苦労されていると思う。ですからお客さんがいない間も懸命に皆さんが努力鍛錬されてこの日を迎えて演じきった。それが伝わればいいなと思う。

動画の完成は3月末を予定。福知山市の配信サイトで作品は公開されるということです。

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