2022年03月11日(金曜日) 10:15 報道特集・ドキュメント

介護の経験がいつか宝に 「ぼちぼちやろう」男性介護者の思い

三田市に男性介護者の集いがあります。結成から10年。介護を卒業していく人が増える中でも活動を継続する思いとは。

三田市の地元ラジオ局「ハニーFM」では月に一度「介護」をテーマとした放送を行っています。ゲストとして出演するのは三田市で発足した男性介護者の会で代表を務める北村吉次さんです。

【エフエムさんだ 門垣登志子放送局長】
「男性の介護者はSOSの発信が苦手で弱音を吐かない。男性はまじめで逃げない。仕事のように介護をしようとする」
【男性介護者の会で代表を務める北村吉次さん】
「自分自身がつぶれないようにしないとダメです。介護者が笑顔なかったら介護を受けている人は幸せになれないというのが私たちのモットーですから」

今から20年前、北村さんは社員として働く傍ら、妻とともに母の介護に追われていました。

【北村吉次さん】
「朝トイレを失敗することもある。母の機嫌が悪いときもある。そんなことを考えながら生活していたからなんで俺だけこんな目に遭わないといけないと思っていました」

母の介護を終えた頃に出会ったのがかつての自分と同じ思いを抱える男性介護者たちでした。

市の社会福祉協議会主催で集いが開かれたことをきっかけに2011年に男性介護者の会「ぼちぼち野郎」が結成されました。結成から10年。この間に介護を卒業したメンバーも多くいますが、今も月に一度の集いは続いています。

【母を介護していた男性】
「介護を受けている方はいろんな恩恵がある。介護している人にはない。話す場がない」
【北村吉次さん】
「朝からトイレ失敗してね。おむつを替えてバタバタ出てきたんやと言っても誰も分かってくれないから。みんな同じことをやっている。僕だけじゃなかったとその時はじめてわかった。そこで救われた」

介護していた相手や理由はみんなバラバラ。それでも「介護」という共通の経験を通して思いを分かち合うことができます。

40代の参加者の男性は1人で母の介護をしています。

【母を介護する男性】
「やっぱり人から責められるんですよ。若いのに働いていない。お母さん見てもらっているなら見てもらっている日だけでも働けと。できないときはそう言われても僕にはようしないですと言うしかしょうがない」
【母を介護していた男性】
「頼めるところはできるだけ頼んでいったらいいしな。それでちょっと楽になってその分自分の動きをしてね」

今苦しんでいる男性介護者の思いを受け止めるのが介護を卒業したメンバーたちの役割です。

【母を介護する男性】
「卒業している人が増えてきたので現役としてはいろんなことを教えてもらったりという機会もある。「初の頃はお互いに情報交換ということでやっていたけれど年数が経ってくるとここが居場所になった」
【両親を介護していた男性】
「まず自分のことが吐き出せるということと、それが返ってくる。合っているかどうかはわからないけど自分の中で咀嚼してできる感じ」

【ぼちぼち野郎代表 北村吉次さん】
「ぼちぼち野郎の活動をしたから言えるんですけど介護してきた経験があって良かったな。介護してきた気持ちがわかりますから。良い経験させてくれた、いろんな仲間に出会えたし。介護してきたことが今となってはですがプラスです。大きな財産。自分だけで苦労して『世の中で苦労しているのは俺だけや』みたいな人がまだまだいる。それだけはなくしたい」

北村さんはこの日、「ぼちぼち野郎」の活動を伝えるため地元のラジオに出演しました。介護をしながら孤独感を抱いていたかつての自分を思い浮かべながらマイクの向こうに思いを届けます。

【ぼちぼち野郎代表 北村吉次さん】
「一生懸命介護をしているのに報われないなと思うこともあります。なんでやねん!と腹の立つこともあります。そんな話を聞かせてください。
ぼちぼちと介護やってきましょう。気楽にやっていく、長続きするようにしましょう」

仲間たちとの出会いが介護という経験を宝物に変えてくれる。北村さんはそう信じています。

三田市の男性介護者の会「ぼちぼち野郎」では毎月第4土曜日の午前10時から集まりを持っています。参加の申し込みは不要ですが、問い合わせは代表の北村さんのメールアドレスで受け付けています。

北村さんアドレス:007carpentier25@nike.eonet.ne.jp

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