2022年02月16日(水曜日) 10:40 報道特集・ドキュメント

358色で元気を届ける 自閉症の中学生アーティスト

西宮市に358本のカラーマーカーを操る中学1年生がいます。どんな作品を生み出しているのでしょうか。たくさんの色を使って絵を描く男子生徒の姿を取材しました。

色鮮やかで優しい眼差しのゴリラ。夕日に染まる神戸の街。描いたのは、西宮市に住む中学1年生の柳生千裕さんです。

(柳生千裕さん)
僕は見た人が楽しく元気になれるようにと思いながら描いています。

柳生さんは5歳のとき、自閉スペクトラム症と診断されました。小学校では友達の輪に入っていくことが苦手で一人で黙々と絵を描いていたといいます。

(柳生さんの父 尚夫さん)
おとなしくてちょっと人と接することが苦手というか、そういう感じの子で。だから休み時間とかでもひとりで絵を描いていたのかな。

絵を描き始めた頃は今のカラフルなものとは違い、黒のペンで描いたたくさんの棒人間が動き回る姿でした。

そんな柳生さんの絵を大きく変えたのが、芸術大学出身の父・尚夫さんがプレゼントしたカラーマーカーの「コピック」との出会いでした。

(尚夫さん)
初心者セットみたいな感じで12色の一番始めやすい色というのをプレゼントしました。千裕が棒人間で白黒ばっかりだったのでちょっと色を付けてみたら楽しいのではないかなという。

気軽な気持ちで何気なくプレゼントしたコピック。初めて描いた絵は、題して『ステンドグラスとハゲの間の輝き』。緻密な模様で描いたおじさんの絵でした。

コピックを手にしてから柳生さんの描く絵はどんどん色鮮やかに。現在のコピックの数は358色。たくさんの色の中から迷うことなく絵に色を乗せていきます。

(記者)絵はどんな存在?
(柳生さん)楽しく描くものじゃないかなと。

1月9日、地元西宮市で2度目となる個展「カラフルアート展」が開かれました。館内には柳生さんの描いた絵30点が展示されています。

(柳生さん)
この絵は僕の住んでいる西宮浜をイメージして描きました。文字には西宮浜を象徴するような言葉を多く入れました。全部想像で描いてます。

個展は大盛況。わずか15分ほどで会場はいっぱいになりました。

(訪れた人たち)
あんなたくさんの色を使ってどんな心なんだろうなと思って感動しました。
娘が絵が好きなので。すごく素敵な絵じゃないですか。色彩感覚がすごく素敵。

柳生さんの小学校時代の先生など、柳生さんをよく知る人たちも見学に訪れました。

(小学校時代の担任)
進化という言葉が良いかわからないが、千裕くんのイラストから始まって2年生のときには棒人間。こういう空間の中で千裕くん自身が普段なかなか会わない方との出会いを通して人とのつながりの中でまた良さがもっともっと伸びていくのではないかな。それがまた次の絵につながっていくのではないかなと思う。

柳生さんの絵が多くの人に届くきっかけになったのがこちら。2019年10月に火災で焼失した世界遺産の「首里城」を描いた作品です。

作品のタイトルは『いつかその日まで』。描くきっかけになったのは、柳生さんのもとに届いた1通のメッセージでした。

(柳生さん)
やっぱり鮮やかで温かい色合いで描こうと思いました。

首里城の絵は「希望の象徴」としてSNSを通じて多くの人に愛され、世界にまで届きました。すると、首里城の焼失の半年前に火災に遭ったフランス・パリのノートルダム大聖堂の再建を願う絵も描くことに。

タイトルは『光り輝く大聖堂』。この絵はことし、パリへと贈られます。

柳生さんのまっすぐな思いと358色のコピックによって創り出される絵は言語の壁を越え、世界へと羽ばたいています。

(記者)これからやりたいこと、目指したいものは?
(柳生)
あんまり細かくは決めていないけど、見た人が楽しく元気になってほしいなというのはずっと思いながら描きたいなと思っている。

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