2021年12月24日(金曜日) 11:54 報道特集・ドキュメント

県内で相談増加 広がる「ひきこもり」支援の輪

丸いフォルムに、くりくりとした瞳。神戸市でひきこもりの人たちのサポートに一役買っているのは、分身ロボット「OriHime」です。

OriHimeはアプリで離れた場所から操作することができ、市内の就労支援施設に置かれています。利用者は自宅にいながらロボットを介し施設の人と会話ができほか、リアクションもとれます。

(神戸市 ひきこもり支援室 松原雅子担当部長)
たくさんの人と話をすることに不安や恐怖感を持っている人もいる。
参加している人の様子や話していることを体験して、数カ月経たうえで直接居場所に出向けるようになっていただきたい。

OriHimeの活用を決めたのは、神戸市が去年2月に立ち上げた「ひきこもり支援室」です。当事者や家族の悩みを聞くほか、コミュニケーションに慣れる研修や就職先の紹介などをしています。

(松原部長)
ひきこもり状態になることは特別なことではなく、個人の持ち味がうまくいかせない環境やストレスが長く続くと、出掛けるパワーがなくなることは誰にでも起こりうる。

市内では社会とのつながりが持てず悩む人や家族からの問い合わせが年々増加。昨年度はおよそ2000件の相談が寄せられ、支援室を設ける前より3.7倍増えました。

家から出られなくなる理由は様々。市内に住むこうださんも、ひきこもりを経験したひとりです。

(ひきこもりを経験 こうださん)※仮名
大学を卒業するときに進学する予定だったがうまくいかず、就職も色々あってうまくいかず、アルバイトの人間関係もうまくいかず、外に出るのが辛くなった。

大学卒業後数年間、自宅に閉じこもっていたこうださんは、ことし9月、家族のすすめで支援室へ。少しずつ会話を重ね、コミュニケーションがとれるようになるとワードやエクセルを学び、11月、就職を決めました。

(こうださん)
思ってたより他人は怖くない。
外に出るのも怖かったしチャイムの音や電話も怖かったが、仕事で電話対応をするがいいお客さんが多い。
そんなに怖くないから、踏み出せるなら力を貸してもらって、踏み出してみればいいんじゃないか。

ひきこもりの人たちをサポートしようという試みは民間でも始まっています。

丹波市で2012年に開業した「ネクステ」。障害者の就労支援事業やグループホームなどを運営しています。

ことし9月にオープンしたのは、「みんなの居場所ミラージュ」です。漫画やゲームをはじめ、DVD・ペーパークラフトなど、幅広い年代が楽しめるアイテムが並びます。

(ネクステ 大槻真也社長)
(利用者)は20~30代ぐらい。中には50代の人も。時には小学校1年生も過去には来た。幅広い年代が利用している。

「みんなの居場所」は、社長の大槻さんが、親しい友人が外に出られなくなった経験から、「気軽に立ち寄れる場所を」とつくりました。

ネクステでは、専門家のサポートを受けることもできます。臨床心理士の井上湧斗さんです。過去にはひきこもった経験があります。

(臨床心理士 井上さん)
自分が高校の時に不登校になり、色々な積み重ね、通学距離が長い・勉強が難しくなった・知っている人が少ない・部活でうまくいかない…。積み重ね積み重ね。

井上さんは「働きたい」との思いから大学進学を決めます。環境が変わったことで、再び社会とのつながりを持てるようになりました。

自身の経験から、まずは「居場所」を見つけることが重要だと言います

(井上さん)
誰かと関わることで色々な変化が出てくると思うので。
とにかくひとりで抱え込まないで、色んなところに相談先がある。続けて相談をして、一緒に考えられたら。

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