こちらにあるおよそ1ヘクタールの畑では、ソバの実が収穫のシーズンを迎えました。
収穫体験に参加したのはおよそ20人。ソバ専用トラクターの運転や鎌を使っての収穫体験です。
畑を守ろうとさまざまな地域から集まった人たちが参加しました。今回の収穫体験を企画したのは、新温泉町春来地区にあるそば屋「てっぺん」です。
そばを活用した町おこしをと「春来そば生産組合」が運営する店で野趣あふれるロケーションで味わえる
風味豊かなそばを目当てに休日には多くの客が訪れます。
春来地区では地元産のソバの実を安定的に手に入れるためにソバ畑を増やしたいものの、ある問題が…。
地元の区長・小谷さんはこう嘆きます。
(小谷和信区長)
この農地を守りたい。放棄地を解消したい。
年々放棄地が増えていておりますね。高齢化48%ですから。
高齢化でソバを育てる人が減っている上に、もうひとつ問題があるといいます。
(小谷区長)
獣害に困っとるんです。被害が大きいんですよ。
シカによる農作物の被害です。
(てっぺん 浅見雅之社長)
高齢化が進んで面倒見切れなくて耕作放棄地が増えているみたいな話はどこでも起きている話ですが、それに輪をかけて獣害の問題があるので作っても仕方がない。
かけただけの労力に見合わない、ソバが取れないのは皆さんのやる気というか収益も上がらないということで困っていた。
シカはソバの新芽を好んで食べるほか、育つ前のソバの実も食べてしまいます。
暖冬の影響で雪も少なくなりシカが住みやすい環境に変わってしまったこともあり、シカによる地域の農作物の被害は10年ほど前から増加。
県の農政環境部によりますと昨年度県全体でおよそ1億3千万円、新温泉町だけでも370万円近くの被害が出たといいます。
被害を防ぐための有効な手段は電気を通した柵の設置ですが、50アールの設置で60万円ほどかかります。
そこで「てっぺん」が中心となり、クラウドファンディングで予算を募ることとなりました。参加した人には「てっぺん」のソバの無料食事券が送られます。
(浅見社長)
これがうまくいってどこでもソバがちゃんと取れるという話になれば。(クラウドファンディングは)春来の為になるし、協力していただいている町内の皆さんのためにもなるのでうまくいってほしいというふうに思っている。
こうして6月にはじまったクラウドファンディング。力になりたいとわずか20日間で予定していた60万円をはるかに超え、あわせて110万円ほどの金額が集まり、およそ1ヘクタール分の畑のまわりに電気柵を設置することができました。
(小谷区長)
いいソバができて獣害にやられないように願うばかりですけどね。
こうして2カ月後-山奥にある畑にはシカの被害から逃れた見事な白いソバの花々が咲き誇っていました。
この様子をクラウドファンディングで出資した人に向けてSNSなどで紹介するため撮影することに。
(出資者ら)
今回のクラウドファンディングで電気柵を作ってしっかりとソバを守ったので、こんな満開にね、山の中でソバ畑ができてるって感動しました。
次は新ソバをいただければと思っています。
さらに2か月後の10月30日、大きく育ったソバの実の収穫体験会が開かれたのです。
(小谷区長)
皆さんのおかげで電気柵が設置に対する費用が生まれて。収穫を迎えたわけですけど、おかげで被害に遭わずに100%ソバが収穫できるのは本当にありがたいことです。
(浅見社長)
いいソバが取れてるんじゃないかと思う。大成功だったと思います。これから新ソバがようやく出せるので。協力いただいた皆さんには大変感謝しております。
さまざまな人の思いが集まり収穫されたソバの実を使った新ソバは、11月18日から提供されるということです。