2021年10月21日(木曜日) 18:35 報道特集・ドキュメント

阪神淡路大震災 1000年先まで伝える ~震災遺構「神戸の壁」と歌で~

新長田のギャラリーに響き渡る 神戸市役所センター合唱団の歌声。

♪リメンバー神戸の壁
「この街は焼けました。悔しさ忘れず 報いて下さい」

新長田一帯は26年前、阪神淡路大震災の火災で焼失しました。西日本最大規模の再開発が現在も行われていて、ビル群が立ち並んでいます。

リメンバー神戸プロジェクト 三原泰治代表
「今見ても分かりません」

現代美術家の三原泰治さん。新長田には、震災とアメリカ軍の空襲から焼け残った防火壁(1927年ごろ建設)があり、三原さんは26年間、保存と継承活動を行ってきました。

三原さん
「減災防災をものとして残すということと、忘れないために遺構で見張り役。標識になってほしいということで活動を始めました」

解体されるはずだった防火壁。三原さんの説得で、土地の所有者は壁のそばで両親を亡くすも公費解体を取り下げました。

三原さん(1995年のインタビュー )
「世界に伝えると、現物で伝える必要がある」

三原さんたちは防火壁を「神戸の壁」と名づけ、未来に伝えるため保存を訴え続けましたが、神戸に残すことはできませんでした。

遺構を残す重要性について震災や防災の提言を続けてきた兵庫県立大学大学院の室崎益輝教授は?

兵庫県立大学大学院 室崎益輝減災復興政策研究科長
「遺構はどんどん壊してしまった。だけど、そのことによって次の子どもたちに震災の恐ろしさや地震の大きさを知らせようと思ってもなかなかそれは伝わらない」

神戸で震災の遺構として残されているのは、神戸港震災メモリアルパークと阪神高速道路の震災資料保管庫の2カ所だけです。

室崎教授
「震災の記憶をちゃんとしっかりと残すというのは本物じゃないと伝わらない部分が結構ある。後悔はありますよね。もう少し残せれば。神戸の壁も長田の駅前に残しておきたかったという思いは私はあります」

三原さんたちの活動の成果は実り、当時の津名町長が神戸の壁の受け入れを表明。その後、野島断層がある淡路市の北淡震災記念公園に移設され、淡路島に残りました。

復旧復興を最優先にし、遺構を残せなかった神戸。失敗を繰り返してほしくないと、三原さんは何度も東北に出向きました。

南三陸町で訴える三原さん
「神戸では見たら悲しい、復興の邪魔だ。価値はない。そういうことで神戸でも傷跡が残っていません。逆に学ぶものがないと」

現在、支援しているのが宮城県南三陸町にあった冠婚葬祭施設「高野会館」の保存運動です。東日本大震災では4階の屋上まで津波が到達しましたが、327人と犬2匹の命を守った建物です。所有する南三陸ホテル観洋は保存を決断。遺構を活用し、語り部を通して東日本大震災を伝え続けています。

南三陸ホテル観洋 阿部隆二郎副社長
「高野会館の建物と周辺の道路とか環境整備の要望書をお持ちさせていただきました」

三原さんは、野島断層がある北淡震災記念公園元総支配人の宮本肇さんとともにプロジェクトチームを結成。町に対して公費での保存や周辺環境の整備を訴えています。

すぐそばの防災対策庁舎は宮城県が2031年まで県有化し、維持管理します。

北淡震災記念公園 元総支配人 宮本肇さん
「何をもってこの震災遺構を残すのか?命の大切さ。それを伝えていこう。三原さんと2人は関西から見ていて我々は反省もし、反省してここに来ています」

しかし、町の回答は…。

南三陸町 最知明広副町長
「回答ですか。非常に難しいと」

東日本大震災から10年。当時高野会館へ逃げて助かった住民とともに追悼のつどいに出席しました。町議会を傍聴して戻ってきましたが、公費での保存や周辺道路の整備は平行線のままです。

三原さん
「東日本に行って 神戸の壁も野島断層も我々もちゃんとすることが課題であると痛感している」

阪神淡路大震災の継承についても、常に新しいアイデアを取り入れながら活動を続けています。

三原さん
「すべて我々も命があるし、語り部も命があるのでいかに形になるものを残していくと。今回はその1つとして歌であると」

10月16日から、長田区のWALL GALLERYで神戸の壁の歌をテーマにしたイベントが始まりました。この場所には神戸の壁の基礎がベンチとして残されていて、壁の歴史や震災にちなんだ歌を紹介するパネルが展示されています。

三原さん
「神戸の壁を1000年先まで歌によって伝え、生かすことを願って開会のあいさつに代えさせていただきます」

たとえ命が尽きても歌を残して1000年先まで伝える。三原さんの思いに賛同した神戸市役所センター合唱団が神戸の壁の歌を歌いました。

♪リメンバー神戸の壁
「見て触れて未来へ進んでください。リメンバーリメンバー神戸の壁」

あわせて読みたい

広告

広告

広告

PAGE TOP