淡路島の森で近年、コナラなどの落葉樹が夏にもかかわらず赤く染まり枯れてしまうといった現象が起こっているといいます。島の自然に一体何が起こっているのか?
淡路総局、神子素カメラマンの報告です。
「淡路島でことし急速にナラ枯れが発生しています。赤く褐色に枯れた木があります。これがナラ枯れです」
「ナラ枯れ」とは「コナラ」や「ウバメガシ」といったブナ科の木々の葉が秋を待たずに赤く染まり木全体が枯れてしまう現象です。
淡路市にある県立淡路景観園芸学校。
澤田佳宏先生は4年ほど前に淡路島ではじめてナラ枯れを発見したといいます。
澤田先生「(ナラ枯れは)明石海峡より向こう側でどんどん広がってきていたり、徳島県でもまん延していたんです」
「淡路島には2017年までは気づかれていなくてナラ枯れ空白地帯と呼ばれていたのですが2018年に最初の一本、古い損木(枯れた木)があるのに気づきまして」
「2019年に拡大を始めて2020年はほぼ島中全域に広がったというような、そういうイメージです」
澤田先生と森に入ると木の幹には無数の小さな穴が・・・。
「これ全部穴です。全部、虫の堀った穴です。すごい量の木くずが出ていますね」
これが「ナラ枯れ」の原因であるカシノナガ キクイムシのすみついたあとです。
5ミリほどしかないこの虫ですが大きく育ったブナ科の木の幹を食べて育ちます。
その際、虫が持ち込んだカビの一種が木の水を吸い上げる部分を腐らせて木が枯れる、すなわち「ナラ枯れ」が起きるといわれています。
木が枯れることで生態系に悪影響があるのはもちろん、枝の落下や倒木による被害、また斜面に生えていた木が枯れ山崩れなどがおきる危険性もあるといいます。
兵庫県では年に一度、9月に県全体の森林を調査していますが6年前から「ナラ枯れ」の被害が増え始めてきたとしています。
なぜナラ枯れは起こったのか?
山で木の手入れをしなくなった今の生活に問題があると澤田先生はいいます。
澤田先生「(現代は)暮らしの中で炭とかマキとかを使わなくなって山の木がどんどんほったらかしになり大きくなっているのでこういう事になっています」
急に広がり始めた淡路島の「ナラ枯れ」にいち早く対策を始めたのが南あわじ市の論鶴羽神社です。
敷地内にある「アカガシの森」は兵庫県の天然記念物に指定されていて、多様な植物が自生しています。
去年12月参拝客と森を歩いた宮司の奥本憲治さんは偶然「ナラ枯れ」の前触れを見つけました。
奥本さん「ここは兵庫県指定の天然記念物となっているので教育委員会の方に連絡して樹木医さんに2月ごろ診ていただいて、これは深刻な被害だと」
502本の木のうち84本に被害が及んでいることが判明しました。
虫の対策に必要な予算は県からの補助金などでは到底まかなえない金額だったといいます。
しかしピンチの神社をあるスターが救いました。
「こちらが羽生結弦選手の絵馬になりますね」
ゆづるという名前が同じで神社と交流のあるフィギュアスケートの羽生結弦選手です。
羽生選手はソチと平昌オリンピック前に2度参拝、熱烈な羽生ファンにとってもこの神社は聖地となりました。
聖地のピンチを聞きつけた羽生ファンはすぐに行動を始めたといいます。
奥本さん「ファンの皆さんの中の何人かの方がそういう大変な事が起こっているんだったら寄付だけでもさせていただきたいという声があり」
「全国から1300人を超える方々から700万円を超える寄付が集まっているという事で」
「本当に感謝でしかないですね。本当にお礼を申し上げたいと思います」
神社では寄付金で虫が幹に入らないように防ぐネットや虫を捕まえるシートを購入しました。ただこれを木一本一本に設置するには多くの人の手が必要だったといます。
ナラ枯れを防ぐには人的にも経費の面でも課題が多く、根本的な解決策が見つかっていないのが現状です。
「県道沿いとか国道沿いでちらほら枯れてしまう木があるので、そういうのは危険木として枯れてしまったものは倒れる前に除去するという事が必要になるかと思います」
今後も増加が予想される「ナラ枯れ」の脅威にまだまだ人々は翻弄されるのかも知れません。