上郡町に廃校となった校舎を利用した就労支援の里山学校があります。
社会との接点を取り戻そうと奮闘する若者と、それを支える教師を姫路駐在の上杉カメラマンが取材しました。
「里山ICT能開学校」。
廃校になった上郡町の鞍居小学校を利用して4年前に開校した就労支援の学校です。
通学するのは引きこもりとなり社会との接点を失った人たちです。
代表の尾鼻弘光さんは専門学校での教師の経験を生かしプログラムや経理を教えています。
姫路市に住む30代の男性は中学生で不登校となって、20年近く引きこもり社会との繋がりを失いました。
「ここらへんのページは良い感じやったんですけどトップのページがうまくいかなくて結局元に戻したんですよ」
「そもそも家から出なくなったきっかけは?」
「中学の時に不登校になって最初の頃はあせりとか、復帰せなあかんなとかあせりはありました。
途中、何年かしたら何も考えなくなってる時期もありました」
「社会へ一歩踏み出す時につまづいた際の居場所がないというところですね」
「みなさん本当に大変と思います。
本人もつらいし家族の方も本当につらいという、うちに相談に来られる方は涙ながらに来られることがあります」
親の進めもあって今は自立を目指して、プログラムを学びながら簿記の資格取得に向け勉強しています。
「補助材料の消費なんで借方の勘定科目は?」
「製造間接費 そうやね、借方の製造間接費60万円、貸方の減価償却費60万円ということやね」
新しい取り組みにも積極的に挑戦しています。
コミュニケーション能力を高める訓練を兼ねて、尾鼻さんが高齢者向けに行っているパソコン教室を手伝います。
「もうちょっと上、これ消えないんです」
「このへんをクリックしたらたぶん消えると思います」
「あらほんまや、番号のところ、これやね」
「番号…下の番号のところ」
「この番号? はい」
「もうちょっと広くやね」
「はい、こうやね」
「そうです」
初めて行った指導体験で思った以上の成果があったと尾鼻さんは喜びを隠せませんでした。
通学して4カ月が過ぎました。
「おめでとうございます。見させてもらいます、すごいですね」
予想通り満点の合格。教えた中では最短でかつ満点合格です。
「まあできたという自信はありましたけど万が一ということもありますから」
日本商工会議所の簿記検定試験の3級に合格。
少しずつ歩みを進めています。
これまでに4人が入学し、3人が就職や企業を果たしています。
この男性は2018年6月にこの学校を卒業した卒業生です。
現在は、尾鼻さんを手伝いながらホームページ制作を請け負うなど月に10万円程度の収入を得ています。
「一歩踏み出してうちに来てくれるようになったそれだけでも大きな大きな一歩だと思ってます。
その気持ちを変えた努力であったり勇気であったりそういったところを受け止めて。
そうすれば本当に素晴らしい能力を持った若者たちばっかりですので、あとは自然と成長していくそう私は思っています」
廃校となった里山の小学校が学びの場として生まれ変わり、新たな道を照らしています。
尾鼻さんは佐用町に新しい就労支援校を開校予定でそこの学校には卒業生を教師として就任させる予定
【内閣府のひきこもり調査】
15歳から39歳の若年層のひきこもりが54万1000人と推計(2015年の調査)