2021年02月05日(金曜日) 17:36 地域・まち

涙で乳がん検出へ 進む臨床研究

2月4日は「世界対がんデー」でした。神戸大学のチームはあるものを使って乳がんを検出する画期的な研究を進めています。

一生のうち女性の9人に1人がかかると言われる乳がん。乳がん検診はマンモグラフィが主流ですが、国内の受診率は47.4%にとどまっています。

乳がん患者などで作る団体「あけぼの兵庫」の代表として乳がんの早期発見の啓発活動など行っている川野さんも、講演会などでマンモグラフィ検診を受けない理由を尋ねると言います。

(あけぼの兵庫 川野紀子代表)
本当は行かないといけないのは分かっているんだけれど、痛さに耐えられないから二度とごめんだというふうな答えが返ってきます。

乳がんは早期発見によって大半が完治するものの、痛くて敬遠されるマンモグラフィにも欠点があると乳がん治療に携わる医師は指摘します。

(神戸大学医学部 乳腺内分泌外科 谷野裕一特命教授)
特に若い人の乳腺が多い人で乳腺の中の腫瘍を見つけるのはマンモグラフィは苦手なので、高齢者には向いているんですけれど(乳腺が発達している)若い人には向いていない。検査をしている立場からすると精度が高い方法でやらせて欲しい。

新しい検査法を確立しようと、神戸大学大学院・工学研究科の竹内俊文教授などのチームは、体のあるものを使って研究を進めています。

(神戸大学大学院 工学研究科 竹内俊文教授)
涙のエクソソームを取ることで乳がんが検出できないかを研究しています。

エクソソームとは細胞から放出される物質で、血液や体液の中に存在し、放出される細胞の情報を持っていると考えられています。

(竹内教授)
エクソソームの表面にいろんなタンパク質がついています。タンパク質の種類が細胞によって異なって、がん細胞と健常人のエクソソームの表面についているタンパク質は違います。

エクソソームに着目し、がんを発見しようと様々な研究が進められる中、竹内教授が開発した特殊なチップでエクソソームを高感度で検出することが可能になりました。

(竹内教授)
従来法の1000倍くらい感度がよくて血液でしかできなかった分析が涙でできるようになったのはこの方法のおかげです。

チップにはエクソソームとほぼ同じ大きさの穴が開いていて、穴の中にはエクソソームの表面のタンパク質と結びつく抗体とその結合を知らせる蛍光物質が入っています。エクソソームが穴に入ると光の強さが変化する仕組みです。

涙はドライアイの検査にも使われる試験紙を使って採取します。

自動分析計を使い、ひとつのチップの分析はおよそ5分で終了。チップの表面の光の変化を測定します。このチップを使うと、従来だと数時間かかっていた分析が最短5分でできるようになりました。

涙から採取したエクソソームを調べると、乳がん患者とそうでない人で違いが見られたといいます。研究が進めば、涙を自宅で採取し、検査機関に送ることで病院に行かなくても検査を受けることが可能になるといいます。

また、乳がん手術を受けた患者10人の術前と術後のデータを比較したところ、値に変化が見られたということで再発のチェックにも一役買いそうです。

(谷野教授)
手術の前の方が高くて手術後に低くなっているので、もしかすると手術の後にがんが再発した場合(のチェック)に使えるのではないかと思っています。

(川野代表)
再発(のチェック)にも涙の検査が有効であれば患者にとっては夢のような話で、検査で再発していないということが分かればすごく安心材料になって楽しく過ごせる。

乳がん患者などの協力を得て、臨床研究が進む涙を使った検査法。竹内教授は2022年度の実用化を目指しています。

(竹内教授)
がんになられた方がもう一度がんになる恐怖や自分ががんになったから子どもががんになるんじゃないかという心配が、簡単な検査でリスクが管理できて、危なかったらすぐ(病院に)行けるようなベースのライフラインに使われるようになればうれしい。

竹内教授などの研究チームは臨床研究を加速させようとクラウドファンディングの専用サイト「レディーフォー」を通じて寄付を募っています。期間は4月16日の午後11時までで、1000万円を目標にしているということです。

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