サンゲイ・ツェワンさん。2018年4月、南アジアの国・ブータンから神戸に留学でやってきました。
サンゲイさんは市内の日本語学校に通っていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大により工場でのアルバイトを解雇に。学費が払えなくなり退学を余儀なくされました。
(サンゲイさん)
ちょっと悲しかった。仕事もできなくて、学校を卒業した証明書があれば6カ月の働けるビザをもらえますけど、私はもらえないですから。
家賃も払えず公園で野宿していたところを、去年9月、神戸市兵庫区の「国際交流シェアハウスやどかり」に保護されました。
やどかりを運営するのは日本語教師の中野みゆきさんと母の真由美さん。
中野さんたちの元には、サンゲイさんのように、コロナ禍で生活が困窮した留学生や技能実習生たちの声が届きます。
(中野みゆきさん)
アルバイトが減ったという子が一番多いんですけど、もともと留学生なので週に28時間しかアルバイトができないという上限がある中でみんなやっているので、大体(週に)3~4回あれば平均的というところで「ゼロになった」とか「留学生だけ休んでください」と。
やどかりでの生活が始まり1カ月。サンゲイさんはブータンの料理を振る舞うことになりました。普段は支援企業から提供された食品を使って料理をしますが、この日は食材の買出しに。
たっぷり入れた唐辛子の匂いで思い出すのは、ふるさとの懐かしい風景や家族の姿です。
(サンゲイさん)
(家族は)日本の生活ができなかったら帰ってくださいと(言っている)。だから私も帰りたいなあ。
日本の生活はいいですけど、とてもいいです。でも私は失敗しましたので、自分でできなかったので。
現在、ブータンに住む家族も新型コロナウイルスの影響で仕事が減り、頼ることはできません。
中野さんはサンゲイさんや留学生を取り巻く現状について知ってもらおうと、あるイベントを企画しました。
日本に来る前、ブータンで友人と音楽活動をしていたサンゲイさん。感謝の思いを込めてふるさとの言葉で歌を披露しました。
新型コロナに翻弄された人生。それでも、やどかりでの暮らしの中で、ひとつの目標を見つけました。
(サンゲイさん)
今の夢は何ですと言えば、介護の勉強をしてブータンで介護の会社を作ると思っています。
帰国ではなく、日本で再び学ぶ道を選んだのです。
そして、1カ月後。あの日イベントに訪れていた介護施設を運営する人のもとで、サンゲイさんはアルバイトができることになりました。
一度は諦めかけた日本での生活。多くの人の力を借りて、もう一度歩き出します。