筋肉が骨に変わる病気「FOP」と闘う兵庫県明石市の男性が、難病研究の支援を呼び掛けて、毎年、募金活動を行っています。
男性の思いにこたえようと活動の輪が広がっていて、2020年も多くの人たちが一緒に取り組みました。
23歳の誕生日会。
幼い頃から、進行性の難病と闘ってきた日々でした。誕生日は特別な日でもあります。
明石市に住む山本育海さんは、筋肉が骨に変わる難病FOPの患者です。
母・智子さん「免疫がほとんどない状態だからなんのウイルスにもかかれないというか、もらえないというか、毎年インフルエンザだけでも怖いのに。」
今では、腰が曲がらなくなってしまいました。
口も十分に開かないため、食べられるものは限られています。
8歳の頃にFOPと診断された育海さん。
治療方法はなく、転んだりケガをしたりすると症状が進行するため、なるべく体を動かさないようにと体育の授業は見学。
友達と外で遊ぶこともできなくなりました。
育海さんは、2010年、京都大学iPS細胞研究所に皮膚細胞を提供しました。
皮膚を採取することで進行が進むおそれもありましたが、FOPの治療法を見つけてほしいという思いからです。
様々な病気と闘う人たちと出会ってきた育海さん。
患者の立場でありながらも、「FOPだけでなくすべての難病で苦しむ人をなくしたい」と高校3年生のときに「193募金」を始めました。
同級生の協力を得て育海さんの誕生日の12月14日に合わせて実施。集まった募金を、京都大学iPS細胞研究所に寄付することで研究を支援しています。
育海さん「まだまだ知られていない難病も多いと思うので、これからも支援の輪を広めてもらい、難病への理解・協力をお願いしたい」
高校卒業後も後輩たちが受け継いでいて、今では、明石市内だけではなく、神戸や大阪の高校などにも活動の輪が広がっています。
育海さん「応援を励みにしてもっと頑張っていかないといけないと思うし、FOPのこともそうだけど、多くの難病があることを知ってもらわないといけないと思いました」
西宮市の仁川学院高校はことしで3回目の参加となります。生徒たちは、新型コロナウイルスの影響が続く中で、悩んでいました。
仁川学院高校の生徒「固まってやったらだめだと思う。離れるとなったら何をやっているか分かづらい」
「ソーシャルディスタンスをどのくらいするのか気になる」
不安を抱えながらも実施に踏み切ったのには理由がありました。
仁川学院高校の生徒「(この時期に募金活動をすることが)よくないと思っている人がいると思うけど、ここで止めてしまったら育海さんみたいな病気の人もいち早く治せるものを止めてしまうのはよくない」
支援の輪は、高校生だけではありません。地域の人たちも育海さんの思いに賛同し、募金に協力しています。
明石夢工房・古志利宗社長「すごいやん。募金参加する学校増えている?」
育海さん「卒業してもなお、支援の輪を広げていってくれているんで、高校生の力あってのことだと実感はしている」
明石夢工房・古志利宗社長「きっかけを作ったんは大したもんやと思うわ」
明石菊水・楠大司社長「お寿司を半分に切るとこから始まった。だんだん症状が悪くなって口も開かなくなって、僕らにしたら支援じゃなしに母親ができないことを周りの人間がやっているだけ」
この日、育海さんのことを小さいころから知っているカフェのオーナーが誕生日会を開いてくれました。
カフェマローネ・栗村智子さん「一番最初は9歳の時やったんかな。大きくなりました」
母・智子さん「とにかく進行してほしくない進行してほしくないって、病気が分かった時には思っていたけれど、研究のスピードより進行のスピードも速かったし、ショックも受けたし悔しい思いもした。でも毎日どんなつらいことがあっても育海が前向きだから。強い子に育ってくれたと思うし、人を思いやる人に育ってくれたと思う」
そして、迎えた募金活動当日。
仁川学院高校は、2日間にわたり協力を呼びかけました。
仁川学院高校生徒会長・田窪もえさん「人通りがコロナ前より少ないので大変だけど、その分募金をしてくれた人にはすごく感謝しています。難病で苦しんでいる人や大変な人に寄り添えたり、一緒に頑張ろうと思える社会になれたらと思う」
一方、明石市では、誕生日を迎えた育海さんも、地元の高校生とともに「すべての難病支援のため」と訴えました。
育海さん「治療法がない病気でも見つけるには研究者にがんばってもらうしかない。本当に微力ではあるけれど、治療法・治療薬を見つけるために協力していきたい」
進行する病と向き合い続ける日々。しかし、決して一人ではありません。
いつも寄り添い続ける家族と仲間。広がり続ける支援の輪が支えとなっています。