乳がんで苦しむ患者を救おうと、神戸大学医学部の特命教授が、新しい治療法を確立する臨床試験のための費用の寄付を呼び掛けるクラウドファンディングを行っています。
神戸大学医学部乳腺内分泌外科の谷野裕一特命教授は乳がんの治療薬の研究をしています。
国内で乳がんになる女性は9人に1人いると言われていますが、谷野特命教授が研究を進めるのはそのうち10から15パーセントを占めるトリプルネガティブ乳がんです。
トリプルネガティブ乳がんとは30代から40代に多く発症する乳がんで、ホルモン療法などは効かず効果が期待できる薬は抗がん剤のみで、3年以内の再発率が他のタイプの乳がんよりも高く再発後の生存期間が短いのが現状です。
(神戸大学医学部乳腺内分泌外科 谷野裕一特命教授)
トリプルネガティブ乳がんの患者は手術前に抗がん剤治療をする、手術を受けた、そして残っていてもあとの治療法がない。再発率が下がってこの治療がいいというものがないので、その不安を訴える方が多い。
1人でも多くの命を救いたいと谷野特命教授が注目するのは、卵巣がんや肺がんの治療に使われているジェネリック医薬品「カルボプラチン」です。
海外では「トリプルネガティブ乳がんが再発した時に有効な可能性が高い」というデータも発表されています。
谷野特命教授は、臨床試験が進んでこの薬が使えるようになりトリプルネガティブ乳がんの新たな治療の選択肢が増えることに期待を寄せます。
(谷野特命教授)
今の試算でいくと、今まで亡くなっていた患者がこの治療がちゃんとできるようになれば、1000人ずつ助かっていくのかなと、そんな期待を持ってやっています。
患者会の働き掛けで製薬会社から薬の無償提供を受けるなどしたものの、臨床試験には多額の資金が必要で、クラウドファンディングで寄付を呼び掛けています。
専用のサイトには当事者たちを含め寄付をした人たちの応援メッセージが掲載されています。
(谷野特命教授)
患者さんが年間1000人助かると言ったけど、その周りにどれだけ人がいるか、悲しむ人がどれだけいるか。この治療法をつくる意義ってどれだけ大きいかと僕は思う。