2020年10月07日(水曜日) 16:48 地域・まち

【特集】マスクは効果あり!? 世界一のスパコン富岳で調査

世界一の性能を誇るスーパーコンピューター「富岳」で新型コロナウイルス対策の研究が行われています。飛沫の動きを見えるようにした研究結果をもとに、マスクの効果や、教室や音楽ホールなどの対策をご紹介します。

神戸にある世界一の性能を誇るスーパーコンピューター「富岳」。整備を進める理化学研究所は、来年度からの共用開始を予定していますが…。

(坪倉誠教授)
緊急事態ということで、新型コロナへの対策ということで(優先して)計算資源を使わせていただいています。

理化学研究所計算科学研究センターのチームリーダーで、神戸大学大学院システム情報学研究科の坪倉誠教授は、室内でウイルスの飛沫がどのように広がるか、またその対策を研究しています。

(坪倉教授)
スパコンが必要な理由は、大きく分けて2つ。まず1つは精度。2つ目はたくさんのケースを扱う。オフィス、教室、病室、ライブハウス、コンサートホール。すべて全然状況が違うわけですね。そのすべてを扱おうと思うとスパコンのような大きな計算資源が必要になると。

【マスクの効果は?】

まずは、マスクの効果について。使い捨てマスクとして売られている不織布マスクと、ポリエステルマスク、綿の手作りマスクの3種類を比較。

粒子を目に見えるように表現したシミュレーションで、黄色が隙間から漏れているもの、赤がマスクに付着したもの、青がマスクを通り過ぎていく粒子の様子です。

(坪倉教授)
不織布マスクを見ると、50ミクロンより大きな飛まつというのはほぼ100パーセントブロックすることができます。20ミクロンより小さなものになってくると、漏れが発生する。ただしその漏れはほとんど隙間から出るものです。つまりマスクと顔の間にある小さな隙間から大体3割くらいですね。

不織布マスクとポリエステルの布マスクは、どちらもマスクから出ていくのを8割ほど抑えられています。フィルター機能が比較的悪い綿の布マスクも一定の効果があることが分かります。また、(不織布マスクに関して)口の中に入る量は、密着していればほぼブロック。隙間があっても3分の1にすることができます。

(坪倉教授)
マスクは飛まつを抑える。それはもちろんなんですけども、それとともに空気の流れを防ぐという効果があります。
飛まつというのは空気によって流れていきますので、口から出る空気の速度を遅くすることによって遠くまで到達する飛まつを抑えることができる。この2つが非常に重要な効果になりますね。

マスクをすることで、ある程度の粒子をブロックできますが、エアロゾルという小さい飛沫が隙間から漏れ出るので換気によって外に追い出すことが重要です。

【フェイスシールドの効果は?】

(坪倉教授)
大きな飛まつ、50ミクロンよりも大きな飛まつ。100ミクロンとか、そういったところに関してはある程度ブロックする効果はあるんですけども、小さな飛まつ、エアロゾルと呼んでいたものですね。これに対する防御力はほとんど無くてですね。
世の中にはマスクをつけるのがどうしても不都合のある人がいますよね。例えば、呼吸器に疾患があったりとか。そういったときは、フェイスシールド、マウスシールドみたいなものをつけるしかないと思うんです。

フェイスシールド、マウスシールドを使う場合は、空気中に小さな粒子が漂う状態になるので換気をする、あるいは屋外など換気ができる場所で使用する必要があります。

【病院での対策は?】

カーテンで仕切られた病室は、換気にむらができます。赤が汚れた空気、青がきれいな空気です。

(エアコンは外部換気なしで、換気口によって外部換気している状況で)エアコンを入れて空気をかき混ぜることで、設定換気量の半分ほど換気が進むことが分かりました。

(坪倉教授)
扇風機を併用するとか、サーキュレーターをつけてやるとか、より強くしてやることでさらにかき混ぜることで数値は改善する可能性はありますね。

【教室での対策は?】

(坪倉教授)
教室というのは非常にたくさんの子どもが入るということで換気はよくない状況なんですね。感染リスクを下げるという意味だと、窓を開けて強制的に外の空気を入れるというのは非常にいい対策になります。

しかし、暑い夏や寒い冬には窓を全開にすることができません。そこで、エアコンの快適性を生かしながら効果的な換気ができるシミュレーションが。

(坪倉教授)
対角上に、窓と扉を20cmくらいですね。開けてもらうだけで結構、換気は進みます。

また、休憩時間中に窓を全開にすると、1分40秒で空気が入れ替えられることも分かりました。

【多目的ホールの対策は?】

規制緩和された劇場やホールの対策は?

こちらは神奈川県の音楽ホールをモデルにしたシミュレーションです。ステージにいる演者の飛まつは?

(坪倉教授)
大きな飛まつはほぼ1mから1m半の間に落ちてしまいますね。観客との距離を2mもとれば安全だろうと。

小さな飛沫は2、3mまで広がり空気中を漂いますが、ホールの換気が行き届いていればリスクはほとんどないということです。客席に関しては?

(坪倉教授)
前の席の方、両側の方も相当なリスクが高い状態。この状態でマスクをするだけでリスクがかなり減らせます。
安全を見るならばまず半分からスタートして、両端がいない。前がいないという状態からのスタートが安全かなという風には思いますね。

エアコンの風が強い3階や4階席は、風によって2列目、3列目まで飛まつが飛びますが、マスクをすれば影響は両端までにとどまります。

(坪倉教授)
(クラシックの場合)マスクをしていけば、両端、前が埋まっていてもかなりリスクが下がると思います。一方、ライブハウスみたいにみんなが歌を歌っている。そういうようなケースになるとマスクをつけてでもエアロゾルは漏れますので、イベントの再開時は両端、前は空ける。
徐々に規制を緩めていって、ここまで許したけどクラスターが発生しなければ次また緩める。

坪倉教授らの研究チームは、今後、タクシーやバス、飛行機、ライブハウス、カラオケ、居酒屋など研究対象を広げていく方針です。

(坪倉教授)
今までの生活スタイルに戻るためには防御策を施しながら外食に行くというケースも増えると思うんですね。逆にそうしないと外食産業はもっと大変なことになってしまう。どういう防御策があるのかというのを検討しているところですね。

2020年10月6日放送「情報スタジアム 4時!キャッチ」より

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