2020年09月16日(水曜日) 15:43 地域・まち

【特集】事業検証スタート~新長田の再開発~

阪神淡路大震災から25年、新長田駅南地区の再開発は、ようやく事業の完了の目途がたち有識者による検証が始まっています。

壊滅した町をどのように復興させるのか? 震災の1週間後には 現在の事業に近い計画が検討されていました。

震災から2カ月後、神戸市は都市計画を決定。 中でも新長田駅南地区は 神戸の西の副都心と位置付ける 西日本最大級の再開発事業でした。

神戸市は、11カ所の区画整理と 2カ所の市街地再開発事業を進めてきました。

当時、市と県の都市計画審議会で 反対の意見陳述をした1人、 兵庫県震災復興研究センター 出口俊一(でぐちとしかず)さんです。

「みんな避難所に行っていて仮設にすら入っていない状態で先行きが不透明な時に2カ月で計画を進めることについては少し待った方がいいという趣旨の発言をしたんですけどね」(出口さん)

決定を急いだ背景は、戦後、バラック小屋を建て 居住権を主張する人が出るなど 復興に支障が出た神戸市の苦い経験です。

建築基準法によって建築を制限できるのは最長2カ月。

その後、特別措置法によって2年の猶予が 認められましたが、 神戸市は2カ月での決定に踏み切りました。

神戸市は、地域の住民が主体となった 「まちづくり協議会」を設置し、 市民と妥協点を探りながら 再開発を進めてきました。 震災から25年。

41棟が完成し 残り3棟も建設のめどが経ちました。

今回事業が完全に終了することに伴って収支はどうなったのか?どれくらい税金が投入されたのか?

「これは行政の責任として明らかにしなければいけない。私はことし中に明らかにするとともにやはり総括をしなければいけないと考えています。」(久元神戸市長)

ことし7月、神戸市は326億円の赤字になる 見込みを発表。

一方で、16棟の建設を民間に委ねたことで 事業費を圧縮することができたそうです。

「地価の下落がかなり進んだこともありまして結果的には事業収支が悪化していった。生活再建であるとか、災害に強いまちづくりということに関しては一定の成果があったかなと。事業費のマイナスについては自慢できるものではないはございませんけども、我々としては精一杯やったのではないかなと。」(神戸市都市局 吉田さん)

この再開発を調査し続けてきた出口さんは 赤字額は326億を上回ると指摘。 神戸市が所有する商業床の6割が売れ残っていて、 その6割の181億円分が 今後すべて売却できる想定での 赤字見込みだからです。

「実際問題は500億円は超えていると思う。発表された数字を見てもね。」(出口さん)

【強制収容も可能な第2種市街地再開発事業】

住民や商店主らは、建物や土地を神戸市に売り 町を出ていくか、再開発ビルの区画を 買い戻すかの選択を迫られました。

「ビル化なったというのがちょっとだけしんどいですわ。僕らなったからあかんいうのではないんですわ。このまちも下町だったんですよ長屋がずっと2階建てやって。ケミカルのまちやったんや。ケミカルシューズの。」(商店主)

地下1階から地上2階までを新長田と駒ヶ林駅を 3層で結ぶ構想は人の流れを分散し、 空き店舗が目立ちます。

「共益費のことに関しても商業者は9倍負担、住んでいる人は1割 商業者9対1住民の問題も解決できていない。」(商店主)

エスカレーターやエレベーターの維持費など 下町時代には必要のなかった管理費が 商店主らの負担になっています。

「入ったもの、残ったものだけが高い固定資産税かな。地震前の3倍やね。3倍の税金と、それとこういう失敗のビルに変わってから高い管理費がとられるという。実際のところ、みんなここから出られないという状態になっていますよね。売れないから。市場の価格が10分の1じゃないと不動産の取引がない現状。」(商店主)

一方で、住宅分譲は神戸市と民間ともに完売。 居住人口も震災前の1.4倍に増えました。

「もっとね、人が多くなればいいなと。もっと活発になればいいなと。合同庁舎ができたからね。」(昔からの住人)

「気に入っていますけど。便利やしね。」(新たに移り住んだ人)

「近くにスーパーが結構あって、便利は便利と思うんですけど。閉まっていく店が多いなぁと思います。」(昔からの住人)

「今は本当に。人通りも少ないし昔はもうすごかったもん人が。」(昔からの住人)

神戸市は、先月、有識者会議を立ち上げ 事業の検証をスタートしました。

年内にも検証報告書をまとめ、公表する予定です 座長を務める兵庫県立大学大学院の 加藤恵正(かとうよしまさ)教授は 神戸市が制度をうまく使いこなすことができたかや 様々な問題にどう対処していったか、また、都心の周辺地域であるインナーシティとして どのように再生していったかなどを整理する方針です。

 

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